高松塚「壁画を戻す」 事実上、困難3月28日 4時43分
奈良県明日香村の高松塚古墳の国宝の壁画について、文化庁の検討会は、再びカビなどの被害を受けるのを防ぐため、「当分の間、古墳に戻さないのが適切だ」とする見解をまとめました。
しかし古墳に戻すための技術開発のめどは立っておらず、事実上、戻すのは困難となっています。
飛鳥美人として知られる「女子群像」をはじめとする高松塚古墳の国宝の壁画は、40年余り前に発見されたあと、カビなどの影響で傷みが進み、7年前、古墳から取り出されて修復が行われています。
修復後の扱いについて文化庁の検討会が協議した結果、今の技術では古墳に戻すと再びカビなどによる被害を受けるとして27日、「当分の間、古墳の外の適切な場所で保存管理し、公開するのが適切だ」とする見解をまとめました。
文化庁は、「遺跡は現地で保存する」という原則に基づいて、「将来的にカビなどの影響を受けない環境を確保し、古墳に戻す」という方針を示していましたが、古墳に戻すための技術開発のめどは立っておらず、事実上、戻すのは困難となっています。
壁画の修復はおよそ3年後に終わる見込みで、検討会は今後、古墳がある明日香村で壁画を保存、公開することを視野に、どのような施設が必要か検討することになります。
一方で文化庁は、保存状況を多くの人が確認できるよう公開を進めることや、古墳に戻しても劣化させずに保存できる技術の開発を急ぐよう迫られることになります。
「劣化なく古墳に」見通し立たず
今回の見解は、壁画を元の古墳に戻すのは事実上、困難であることを示しています。
古墳の壁画は描かれた石室の石などと共に遺跡を構成する一部で、本来、それを分解したり切り取ったりするのは「遺跡は現地で保存する」という文化財保護の原則に反すると考えられています。
しかし、野外の自然環境にさらされた遺跡の中で温度や湿度を管理していくのは技術的に難しいのが現状です。
27日の文化庁の検討会では、「現在の科学的・技術的水準では壁画・石室に安全な環境を作って、古墳に戻すことは困難」と表現されました。
一方で、古墳に戻さないことを決めれば、ほかの遺跡の保護についても影響が出るおそれがあり、検討会は「当分の間、戻さない」と表現することになりました。
しかし、劣化させることなく古墳に戻せる技術がいつ開発されるか、見通しは立っていません。
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