この説明で納得できる人はいないだろう。

 みんなの党の渡辺喜美代表がきのう、自らの8億円の借金について記者団に説明した。

 だが、その内容はまるで説得力のないものだった。

 カネを貸した化粧品会社ディーエイチシーの吉田嘉明会長は、渡辺氏から「参院選が近づいてきた。資金を借りたい」との申し出を受けたと朝日新聞の取材に答えている。

 選挙運動や政治活動に使ったのならば、それぞれの収支報告書に記載がない場合は公職選挙法や政治資金規正法に違反する可能性がある。

 だが、渡辺氏は「選挙資金として借りたわけではない」と断言。「選挙資金」という吉田氏の認識については、「ウソとは申しませんが、誤解がある」と語った。

 では巨額のカネは何に使ったのか。渡辺氏は「会議費や交際費、旅費など政治資金を使うにはふさわしくない支出」だといい、「とりの市で大きい熊手を買うこともある」と述べた。

 渡辺氏が3億円を借りたのが2010年6月、5億円を借りたのは12年11月だ。その翌月には参院選、衆院選がそれぞれあった。吉田会長の発言も踏まえれば、選挙に無関係とみるほうがむしろ不自然だ。

 党首ともなればなにかとカネがかかるのは事実だとしても、短期間にこれだけ使うとは驚くべき浪費家だ。

 渡辺氏は、みんなの党の倫理委員長で弁護士資格を持つ議員に個人口座の通帳を預け、法に触れるような出入金がないか調べさせるという。

 だが、身内がいくら通帳をチェックしてみたところで、有権者が納得する「調査結果」が出ることは期待できまい。

 この件は、医療法人徳洲会側から5千万円を受け取って辞職した猪瀬直樹前東京都知事の事件と構図がそっくりだ。

 猪瀬氏も当初は「個人の借入金」との説明を繰り返していた。だが、東京地検の事情聴取には都知事選の資金だった趣旨を認め、収支報告書にウソを書いた公選法違反の罪で略式起訴される見通しだ。

 猪瀬氏のケースとどこが違うのか。渡辺氏は「銀行口座を通してやりとりしていて、裏金ではない。副知事や知事が持っているような職務権限もない」と強調する。

 ならば違法性がないことを客観的に証明するしかない。

 それが年20億円あまりの政党交付金を受ける公党の代表としての当然の責任である。