女性のための「5つのビジネス戦略」は、男性にとっても重要な基本
職場で同僚と張り合うのも、競争相手を蹴落とすのも、ずるい手段を使うのも、男性にとっては当たり前。なぜなら男性は、会社で「ビジネス」という名のゲームを楽しんでいるから。一方、女性は「みんなで仲よく働きたい」と思っている。だから、女性の文化のなかでは問題のない行動も、男性の目には競争心に欠けているように映る。
『女性が知っておくべきビジネスのオキテ』(スーザン・K・ゴラント、パット・ハイム著、坂東智子訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者が「はじめに」に記している主張には、「なるほど」と思わざるをえない説得力があります。つまり「好むと好まざるとにかかわらず」、男性がつくったビジネスのオキテを理解することが女性には要求されるということ。
そこで、働く女性が知っておくべきポイントを網羅したのが本書だというわけです。きょうは「女性が知っておくべきビジネスのオキテ その7 ゴールをめざす」から、5つの「戦略」を抜き出してみます。
1.顔を売る
どの会社にも、社員のキャリアに影響力を持つ人がいるもの。大切なのは、自分のキャリアを知ってもらうことだといいます。人に知られていないなら、どんなに一生懸命仕事をしても、望みのポストに就くのは困難。チャンスをもらえるかどうかの80%は、顔が売れているかどうかで決まるからこそ、顔を売ることが大切だというのが著者の主張です。(240ページより)
2.人脈をつくる
いろいろな人とつながりを持っていれば、能力を知ってもらえるだけでなく、社内情報を入手するチャンスも広がるもの。ただし女性に気をつけてほしいのは、女性との人脈づくりだけで終わらせないことだとか。人脈は、広く深いに越したことはなく、そのなかに人脈づくりに熱心な人を入れておくのも得策だそうです。また、苦手な人も人脈に含めるべきだといいます。(241ページより)
3.自分の仕事をPRする
男性は自分の実積を堂々と吹聴し、自分がうまくやったことをまわりに知ってもらい、出世の足固めをするもの。ところが女性が同じことをすると、「女のルール」で判断されるため反感を招くことがあるとか。そこで著者は、間接的な言い方をするために次のような方法を勧めています。
- 毎週、上司に仕事の報告をする(本当の目的は、自分の仕事ぶりを上司に吹聴すること)
- 同僚に、関わるプロジェクトについての意見を求める(これも本当の目的は、自分の仕事ぶりを吹聴すること)
- 社内報に、関わっているプロジェクトのことを載せてもらう
- 影の実力者を、自身の関わるプロジェクトや委員会に誘う(それが無理なら、プロジェクトについての最新情報を伝えておく)
- 広報部門の社員と友だちになっておく
- 他の部署やプロジェクトチームに、「ミーティングのときに呼んでいただければ、私の担当分野についてお話しします」と申し出ておく
- 業界誌の編集者と親しくなり、自身の会社やプロジェクトを取り上げてもらうチャンスをうかがう(編集者とつきあいがあることを、上司には必ず知らせておく)
いくつかは日本の土壌にはそぐわない気がしなくもありませんが、参考にはなりそうです。(243ページより)
4.人が自分をどう見ているかを知る
陰での会話で、他人の自分に対する印象が決まることもあるので、自分についてどんな会話がなされているのか知っておく必要があるといいます。事実、著者の友人は、それを定期的に周囲の人にたずねているのだとか(現実的には、非常にデリケートな手段であるという気はしますが...)。(245ページより)
5.上司に花をもたせる
たとえ上司を気に入らなかったとしても、上司の言うことに同意できなかったとしても、「上司に花をもたせる」ことは重要。上司に花をもたせるというのは、上司のアイデアの実現に協力すること。つまり、ビジネス・ゲームに勝つための賢い戦略だというわけです。(246ページより)
「自分の仕事をPRする」の部分がそうであるように、部分的に見え隠れするアメリカ人的な感覚は、そのままのかたちで日本の職場にフィットするものではないかもしれません。しかし細かい部分はともかくとしても、書かれていることの多くは、男性主導の職場で女性が生き抜くために必要なことではあるはず。また上記を見ていただければおわかりのとおり、これらは男性にとっても「忘れるべきではない基本」だと言えるのではないでしょうか。
(印南敦史)
- 女性が知っておくべきビジネスのオキテ
- バット・ハイム,スーザン・K・ゴラント|ディスカヴァー・トゥエンティワン