理化学研究所の小保方(おぼかた)晴子・研究ユニットリーダーらが発表した新型の万能細胞「STAP(スタップ)細胞」の疑惑は論文の誤りだけでなく、細胞の存在自体が疑問視される事態に発展した。理研や共著者が公表した作製方法も論文と異なるなど混乱が続いており、検証作業は難航しそうだ。
STAP細胞への疑問点はこれまで、画像流用など論文内容が中心だったが、25日に判明した「別マウス問題」で細胞の存在に対する疑念が一段と強まった。
理研によると、論文共著者の若山照彦山梨大教授は129系統という種類のマウスを小保方氏に渡し、STAP細胞の作製を依頼。ところが小保方氏から受け取った細胞は、この実験では使わなかったはずの別の種類のマウス細胞だったことが明らかになった。
原因は小保方氏が何らかの理由で別種のマウスを使ったか、あるいは別の細胞との取り違えなどが考えられる。しかし、実験の重要な証拠試料である細胞の扱いがずさんだった可能性は否定できず、研究の信頼性は大きく揺らいだ。
基礎生物学研究所(愛知県岡崎市)の上野直人教授(発生生物学)は「重要な実験なので単純な間違いは考えられない。断定はできないが、捏造(ねつぞう)と考えてもいいレベルだ」と指摘する。
理研は「小保方氏がこの問題についてコメントすることはない」としている。
若山教授は一連の疑惑を受け今月上旬、この細胞の分析を公的な研究機関に依頼していた。遺伝子を解析することで、本当にSTAP細胞かどうかを確かめるのが目的だ。しかし、本来の手順で作られたものではなかったため、細胞自体の信用性に疑問符が付くことになり、真相解明はさらに遠のいたとの見方もある。
copyright (c) 2014 Sankei Digital All rights reserved.