法人税収が伸び悩む要因となってきた「繰越欠損金」が減少してきた。国税庁が27日まとめた会社標本調査によると、2012年度末の残高は11年度末比3兆円減の73兆円と4年連続で減り、リーマン危機前の70兆円弱に近づいてきた。企業の収益回復に合わせ税収が上がりやすくなっているといえ、法人税改革の追い風にもなりそうだ。
法人課税には企業の税務上の赤字(欠損金)と翌期以降の黒字(課税所得)を相殺できるルールがある。この繰越欠損金が多く残っていると、企業が利益をあげても課税所得が下がり、企業が支払う税金は少なくなる。
例えば300億円の赤字を出した翌期、黒字が100億円だったとする。欠損金を黒字の8割、80億円まで取り崩せる。その年の課税所得は20億円となり、納税額が5分の1になる。翌期以降も欠損金を繰り越せる。
企業全体の繰越欠損金はリーマン危機で赤字決算が相次いだ08年度に90.8兆円まで拡大。12年度にようやく危機前の水準まで減少した。企業収益も改善し、法人税収は09年度の6.4兆円を底に上昇に転じ、12年度は9.8兆円まで増えた。銀行の納税再開や自動車などの大手企業の繰越欠損金の減少が税収底上げにつながった。
日本航空は1兆円規模、東京電力も多額の欠損金を抱えているもよう。だが、企業全体では欠損金の解消が進んでおり、13年度の法人税収は10兆円程度と見込まれる。
繰越欠損金、法人税