汚染水:凍らせ氷柱…セシウム濃度が25分の1に 富山大
毎日新聞 2014年03月27日 15時00分(最終更新 03月27日 15時31分)
放射性セシウム入り汚染水を凍らせて氷柱を作ったところ、氷の中のセシウム濃度が25分の1と大幅に減ることが、富山大の実験で分かった。泥の中でもきれいに凍る霜柱がヒントになった。実験を繰り返すと濃度がさらに減り続けたといい、「東京電力福島第1原発の汚染水処理の一助に」と期待する。27日に日本原子力学会で報告する。
同大水素同位体科学研究センターの松山政夫教授と、雪氷学の国内第一人者で同大の対馬勝年名誉教授らが研究した。
実験では、1リットル当たり1500ベクレルのセシウムを含む模擬汚染水10リットルを専用の凍結容器に入れ、氷点下4度まで冷やして重さ5.4キロの氷柱を作製。氷のセシウム濃度を測定した結果、1キロ当たり61ベクレルに減った。特に氷の外周部では最大270分の1になった。一方、凍らずに残った汚染水4.5キロにはセシウムの98%がたまり、約2倍に濃縮されていた。
霜柱ができるように水をゆっくりと凍らせ、結晶の方向がそろう「単結晶」の氷を作ると、不純物を含まない氷になる。この性質を使って凍結処理を繰り返せば、汚染水の量を減らせる。
福島第1原発の敷地内には3月時点で約53万トン(ドラム缶換算で266万本)の汚染水があり、放射性物質の除去装置「ALPS(アルプス)」も本格運転のめどが立たずにタンク増設でしのいでいる。凍結装置の大型化など課題もあるが、松山教授は「霜柱を思い出し、半信半疑で実験したら効果があった。アルプスの役割を補完できるのではないか」と話す。【中西拓司】