産院で60年前、出生直後に取り違えられ、実の両親とは異なる夫婦に育てられたとして、東京都内の男性(60)らが産院側に約2億5千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は26日、産院の過失を認め、慰謝料など3800万円の支払いを命じた。宮坂昌利裁判長は「取り違えによって、男性は経済的に困窮した家庭で養育され、高等教育を受けられなかった」と判断した。
判決によると、男性は1953年、東京都墨田区の産院で生まれた。実の弟らが、取り違えられて「兄」として一緒に育てられた人物と容姿や性格が似ていないことを不審に思い、2009年、DNA鑑定で血縁関係がないことを確認。産院の記録から「兄」と同じ日に生まれた男性を捜し出した。今年1月に別の訴訟で、男性と実の両親との親子関係が確定した。
判決理由で宮坂裁判長は、男性が2歳の時に育ての父が亡くなり、中学卒業後に就職を余儀なくされた一方で、実の両親の家庭では弟らが大学や大学院に進学しており、「取り違えによって重大な不利益が生じたことは明らか」と指摘。実の両親は既に亡くなっており「交流を永遠にたたれた無念の心情は察して余りがある」と述べた。
東京地裁