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【社会】

袴田事件の再審開始を決定 静岡地裁

 静岡県清水市(現静岡市清水区)で1966年にみそ製造会社の専務一家4人が殺害された袴田事件の第2次再審請求で、静岡地裁は27日、強盗殺人罪などで死刑判決が確定した元プロボクサー袴田巌元被告(78)の再審開始と刑の執行、拘置の停止を決定した。村山浩昭裁判長は、確定判決で犯行時の着衣と認定された「5点の衣類」について「後日捏造(ねつぞう)された疑いがある」と結論付けた。事件発生から約48年、死刑確定から約34年で裁判がやり直され、死刑判決が取り消される可能性がある。

 死刑囚の再審開始決定は財田川、免田、松山、島田と、後に決定が取り消された名張毒ぶどう酒事件に続き戦後6例目で9年ぶり。名張以外の4人は再審無罪となった。静岡地検が即時抗告すれば、再審を認めるか否かの判断は東京高裁に委ねられる。弁護団は即時抗告しないよう地検に申し入れた。

 第2次請求審の最大の争点は、5点の衣類が袴田元被告のものかどうかだった。検察、弁護側双方の推薦した専門家2人がDNA鑑定を実施。ともに、衣類のうち白半袖シャツの右肩の血痕が袴田元被告のDNAと完全には一致しないとの見解を示した。弁護団が「5点の衣類は何者かが捏造した証拠」と再審を求める根拠とした一方、検察側は「試料が古く、信用性が低い」として「再審を始める『新規かつ明白な証拠』と言えない」と主張してきた。

 決定は、DNA鑑定から「5点の衣類の血痕は、袴田元被告のものでも犯行着衣でもない可能性が相当程度認められる」と指摘。鑑定結果は「無罪を言い渡すべき明らかな証拠に当たる」と判断した。

 5点の衣類は事件から1年2カ月後、同社のみそタンク内から見つかった。第2次請求審で弁護側は、捏造を裏付けるため、実際に血液を付けた衣類をみそに漬け込む実験もした。開示された衣類のカラー写真と変色の度合いを比較し「みそタンクに長時間入っていたとする確定判決の認定は誤りだ」と主張。決定は「実験結果からみても、衣類の染まり具合はみその色に比べて薄く、血痕の赤みも強すぎる。長時間みその中に隠されていたにしては不自然」と指摘した。

 弁護側は、衣類のうちズボンはサイズが合わず、袴田元被告のものでもないと主張。決定は確定判決の認定を否定し「細身用のサイズで袴田元被告のウエストサイズと適合していなかった可能性があり、ズボンが袴田元被告のものではなかったとの疑いに整合する」と認定した。

 再審開始決定を受け、袴田元被告の姉の秀子さん(81)は27日午後、東京拘置所へ面会に向かった。

(中日新聞)

◆決定理由骨子

 一、再審を開始する

 一、死刑の執行と拘置を停止する。無罪である可能性が相当程度明らかになった現在、これ以上拘置を続けることは正義に反する

 一、犯人が着ていたとされる衣類の血痕のDNA鑑定結果は無罪を言い渡すべき明らかな証拠に当たる

 一、衣類は、捜査機関によって後日、捏造(ねつぞう)された疑いがある

 一、自白調書を含む新旧証拠を総合的に判断しても、元被告を犯人と認定できるものはない

 

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