安倍首相のにこやかな顔と、朴槿恵(パククネ)大統領のこわばった表情が対照的だった。

 オバマ米大統領の仲介による3カ国の首脳会談がオランダ・ハーグで開かれた。

 安倍、朴両氏が協議の席に着くのは初めてのことだ。深まってしまった両国間の溝を埋め、関係改善への歩みを進めていくことが両首脳の責任だ。

 約45分間の短い会談で話し合われたのは、おもに北朝鮮の核・ミサイル開発への対応だ。3人の首脳は、連携を強化していくことで一致した。

 さて、今回の会談をどう見るべきか。

 なにしろ就任から1年以上経ってもテーブルに着けなかった日韓両首脳である。ともあれ会談にこぎつけたことをよしとするのか。それとも、米国の力の入れようとは裏腹に成果は乏しかったとするか。両様の見方はできるだろう。

 肝心なのは、会談後に安倍首相が強調したように「未来志向の日韓関係に発展させていく第一歩」にできるかどうかだ。

 会談の実現に向け、首相は慰安婦問題をめぐる河野談話を「安倍内閣で見直すことは考えていない」と答弁した。

 ところが、「自民党総裁特別補佐」の肩書を持つ萩生田光一衆院議員は、談話の検証で新たな事実が出てくれば「新たな政治談話を出すことはおかしなことではない」と語った。

 首相答弁には一部から強い批判が起きた。萩生田発言は、こうした批判に対し「首相の本心は違う」と釈明したのだと受け取られても仕方がない。

 安倍首相は会談の冒頭、朴大統領に「お会いできてうれしい」と韓国語で呼びかけた。

 気遣いもいいが、「未来志向」というならば、まずは首相自身がその中身を示していかねばならない。

 一方、朴大統領はわざわざ会談の直前にドイツ紙のインタビューに答え、歴史問題での安倍政権の姿勢を非難した。

 外に向かって言うよりも、お互いの目を見て語り合う。これが責任ある首脳の態度ではないだろうか。

 3首脳がハーグで顔を合わせているまさにその時に、北朝鮮は中距離弾道ミサイルを日本海に向けて発射した。日米韓の連携が重要なのは明らかだ。

 この会談をオバマ大統領の顔を立てただけの記念撮影会に終わらせてはならない。

 日米韓の実務的な協議に引き継ぐとともに、日韓2国間の首脳会談の実現に向け、地ならしを急ぐべきだ。