ベクター
はい、コレ。その一言を添えて包みを差し出せば、ベクターはなんだか不思議そうに受け取った。
「……コレは?」
チョコだよ。キミ、すぐにいなくなるから今渡しておく。
そのまま立ち去ろうとして、腕を掴まれた。
「ちょっと待て。俺に任せずにちゃんと本人に渡せ」
え?何言ってるの?
困ったような顔をされて、私も困ったように首を傾げると、ベクターは私の反応を見てしばらく考え込んで、急に真っ赤になった。
「まさか、コレは……俺に、か?」
そうだよ、キミにだよ。他に誰がいるの。
「それなら最初からそう言え。急に渡されたから反応に困った」
ああ、それは悪かったね。じゃあ、もう行くから。
「だから、待て」
今度は襟首を掴まれた。
何なのさ、と振り返ると、ベクターはまた困ったような顔で唸っている。
「…………手作りか?」
そうだよ。毒とか入ってないから、なんなら毒味しようか?
「…………可愛くないことを言うな」
むすっとした顔で、ベクターは私の目の前でチョコを一口食べた。
すぐに顔は逸らされたけど、ちゃんと味わってくれてるのがわかった。
「………礼は言っておく。……ありがとう」
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