エージェント
「え、俺に?」

 そう言ってエージェントは、私が渡した包みと私の顔を交互に見た。

「開けてもいいか?」

 どうぞ、と言うと、丁寧に包みをはがす。ぱりぱりと紙のこすれる音が響いた。

「あ、チョコレート」

 中身を見てそう言うと、そのまま動きが止まった。……大丈夫だろうか。
 顔を覗き込むと我に返ったのか、また包みと私の顔を交互に見て言う。

「こ、これ、俺に?」

 急に動き出したと思ったら、さっきと同じ繰り返しだ。

 そうだよ、君にだよ。そう言ってあげると、嬉しそうに微笑んだ。

「ありがとう。……食べてもいいか?」

 どうぞ、味に保障はできないけれど。

 それを聞いてまた微笑み、エージェントは私の前でチョコレートをもぐもぐと食べた。

 ……普通、くれた人の前で食べるかなあ。

 口の中で味わってるらしく、頬を動かすエージェントを見ながら、思う。

 最後においしそうにごくんと喉を鳴らして、エージェントは笑った。

 ああ、このためにわざわざ目の前で食べたんだな。

「おいしかった。……ありがとう」
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