チェリー
「なあスペクター、お前これで蝶々結び出来るか?」 「これで、か?」

 尋ね返すと、ベルトウェイは力強く頷いた 。目先には、何処から手に入れたのか大量のチェリーがある。

「簡単だろ」

 取り敢えずチェリーを一つ取り、実と茎を引き離して、手で蝶々結びをしようとした。

「違う、舌でやるんだ、舌で」
「舌で、か……?」
「おう!」

 そんな器用な事が出来るのか?スペクターはそう思った。

「お前は出来るのか?」
「俺か?俺は無理だったな」
「……そうか」

 こいつに出来なかったのに、俺に出来るのか?

 スペクターは目の前で物凄く期待した目で此方を見てくるベルトウェイに、今更無理とは云えなかった。

「……解った、やってみるが………期待するなよ」

 スペクターはそう云って、チェリーの茎を口の中に入れた。

「……………ん、出来たぞ」
「げっ!?マジか!!」

 スペクターが口の中から茎を取り出す。確かにそれは、蝶々結びだ。

「スゲェなお前!!見直したぜ!!」
「………そうか」

 確かに、凄いかも知れない……が、しかし………。

「これには、何か意味があるのか?」
「ん?お前知らないのか?」
「ああ」

 すると、ベルトウェイは得意気な様子で言った。

「これが出来る奴は、キスが巧いんだとよ 」
「そうなのか」
「しかもお前、凄い早さで出来ただろ」

 ベルトウェイはそう云うと、チェリーを一つ口に入れた。甘酸っぱくて美味しい。

「お前も食うか?」
「ああ」

 暫く二人は美味しいチェリーを沢山味わった 。

「………蝶々結び、か」
「あ?どうした?」
「キスが上手、という事なんだろう?」
「ああ、そうだって」
「なら、試してみるか?」
「……………はぁ!?」

 スペクターの言葉に、ベルトウェイは狼狽えて顔を真っ赤にした。そんなベルトウェイを見て、スペクターはニヤリと笑った。それはもう、意地悪そうに。

 その後、スペクターの言葉が有言実行されたかどうかは、二人だけが知っている。
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