曲学阿世 中野剛志その3 「リカード理論を、理解せずに否定する」

<比較優位説は、完全雇用が前提?>

 とにかく、保護貿易推進派は、自由貿易論者が理論とする、リカードの比較優位を攻撃します。「こんなもの、そもそも前提がおかしい。だから、前提外すと成り立たない」って。

 もうこの時点から、経済学を何も知らないで、経済を語っていることがわかります。

 リカードの比較優位は、数ある経済学の理論で、「前提(仮定)無しに成立する」唯一の理論です。

 サミュエルソンが、物理学者から、「そもそも、経済学で、仮定無しに存立する理論はあるのか?(ないのでは?)」と言われ、考えに考えて、たった一つあると回答した、物理学という厳密な(客観的な)科学に匹敵する理論です。

 経済学は、前提を置く(そうじゃないと、モデルとして現実を説明できない)のが前提で(笑)、そんなもの、科学じゃないと批判されるんですね。まあ、社会科学だから、科学ではないです。

 はっきり言いますが、 「リカード」理論を否定する人がいたら、その人は、「経済学」を理解していない(できない)人ということになります。そんな人の話など、聞くだけ無駄です。

 で、中野剛志某ですが、彼もそんな「経済学を理解できないのに、経済を語る」一人です。騙されてはいけません。

 批判する人には、こう聞いて下さい。「あなたが、自給自足していないのは、なぜですか?あなたが一つの仕事に特化しているのは、なぜですか?」と。

反・自由貿易論 (新潮新書)反・自由貿易論 (新潮新書)
(2013/06/15)
中野 剛志

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 P25

この前提(筆者注:リカード理論として、ヘクシャー・オリーン定理を紹介しています、別に、どっちでもいいです)条件は、次のように現実とは程遠い非常に特殊なものでした。

③生産要素は完全雇用されている

④生産要素は国内の産業間を自由に移動でき、そのための調整費用もかからないが、国と国との間の国際的な移動はしない。

 特に注意しなければならないのは、③の完全雇用と言う条件です。2008年のリーマン・ショック以降、世界は深刻な不況に突入しており、どの国も完全雇用どころか高い失業率に悩んでいます。ところが…貿易を行う国の双方が完全雇用を達成していなければ、自由貿易は両国にメリットをもたらすとは言えないという定理です。逆に言えば、各国で失業者があふれている現在、この理論は、自由貿易を行うべき理論的根拠にはならないということです。

 ④も…受け入れがたい…。…日本が農業関税を全廃しても、それによって失業した農家がすぐに自動車産業や、IT産業など他の産業で職を見つけることができるということを意味します。常識で考えて、そんなことはありえません。

…にもかかわらず自由貿易論者は、いまだにこの比較優位論を根拠にして、TPPによる貿易自由化を正当化している。…経済学の自由貿易論は、数多くの非現実的で、非常識な条件の上に成り立っている虚構に過ぎないのです。





表紙裏書

自由貿易は常に強国にのみ有利に働き、残りの国は利益も雇用もうばわれるだけなのに



典型的な「反経済学」思考です。事実は、正反対です。


 自分は、ある職業に特化して、比較優位論を実践しているのに、「非現実的で、非常識な条件の上に成り立っている虚構」とは、じゃあ、「あなた自身が虚構」ということになります。虚構なのに、現実に存在する中野剛志某は、存在しないフィクションか?

<完全雇用など必要ない>

 では、検証しましょう。

得意分野の生産に,すべての労働力を投入し、特化します。 


リカード表4

リカード表10 11.jpg

リカード図2425.jpg


この三角形で示された①②部分は,両国の生産可能領域(生産フロンティア)を示し,これが両国の最大生産量(斜辺部分)です。

 ここで重要なことは,まだ両国で貿易をしていないので,この生産量は,同時に両国の消費量ということです。つまり,自給自足の場合生産量≧消費量,これが両国にとって越えられない壁です。生産量以上に,消費はできないのです。三角形①が,ポルトガルの消費量域であり,三角形②が,イギリスの消費量域なのです。

 では,次に両国が貿易をした場合を検証してみましょう。

リカード図2829.jpg


 両国は,貿易により,線AB上のあらゆる点を,選ぶことができます。三角形が大きくなっていることは,一目瞭然です。

 しかも,生産量はそれぞれ三角形①・②で示した部分です。貿易前は,生産量≧消費量で,三角形①・②が両国の,最大の消費量でした。

 ところが,貿易すると,三角形③・④の部分も消費できるのです。この三角形③・④部分は,貿易をする前は,両国の国民が,絶対に手に入れることができない部分でした。

 それが,貿易をすることにより,こんなに大きな三角形部分まで,消費可能となるのです。自分の国の生産量を大幅に上回る消費量を手にすることができるのです。

 では、失業者を作ってみましょう。リーマンショックです(笑)。

リカード表4
 ↓
リカード 失業.jpg

この失業者がいる状態で、特化してみましょう。

リカード 失業 特化.jpg


貿易前は、赤い三角形部分です。特化し、交換後は、青い三角形です。

リカード 失業 表
リカード 失業 特化 表

 失業があっても(両国が、不況で、生産能力をフルに発揮できない状況)、生産量<消費量、つまり、貿易の利益は確実に生じます。

 完全雇用じゃないと、リカード理論が成り立たないわけではないのです。だから、リーマンショック後(不況で、GDP減=失業者増大)も、アメリカも日本も貿易して、利益得ているのです。

アメリカ 輸出入額.jpg

日本 輸出入



<労働力が、完全に移動しなくても、成立>

 ④も…受け入れがたい…。…日本が農業関税を全廃しても、それによって失業した農家がすぐに自動車産業や、IT産業など他の産業で職を見つけることができるということを意味します。常識で考えて、そんなことはありえません。



 全員、労働移動しない=部分特化と言います。

部分特化させてみます。

リカード表4
 ↓
リカード 部分特化.jpg

 部分特化でも、世界全体の「生産量=消費量」は増えています。イギリスの場合、特化すればするほど、ウール生産量は増えるので、上記は量増加の最小値です。

 つまり、農業者が、全員移動しなくても、貿易利益は生じるのです。

だいたい、今の農業従事者(農水省が、農業人口をかさ上げするために、出荷すらしていない大規模家庭菜園まで、農業人としてカウント)の平均年齢は、65歳以上です。TPPが完成する(関税がなくなると仮定して)15年後には、その方たちは80歳になっています。転職・・・どうしましょう。

 P25

この前提(筆者注:リカード理論として、ヘクシャー・オリーン定理を紹介しています、別に、どっちでもいいです)条件は、次のように現実とは程遠い非常に特殊なものでした。

③生産要素は完全雇用されている

④生産要素は国内の産業間を自由に移動でき、そのための調整費用もかからないが、国と国との間の国際的な移動はしない。

 特に注意しなければならないのは、③の完全雇用と言う条件です。2008年のリーマン・ショック以降、世界は深刻な不況に突入しており、どの国も完全雇用どころか高い失業率に悩んでいます。ところが…貿易を行う国の双方が完全雇用を達成していなければ、自由貿易は両国にメリットをもたらすとは言えないという定理です。逆に言えば、各国で失業者があふれている現在、この理論は、自由貿易を行うべき理論的根拠にはならないということです。

 ④も…受け入れがたい…。…日本が農業関税を全廃しても、それによって失業した農家がすぐに自動車産業や、IT産業など他の産業で職を見つけることができるということを意味します。常識で考えて、そんなことはありえません。

…にもかかわらず自由貿易論者は、いまだにこの比較優位論を根拠にして、TPPによる貿易自由化を正当化している。…経済学の自由貿易論は、数多くの非現実的で、非常識な条件の上に成り立っている虚構に過ぎないのです。



 こんな話、実際に考えたのではなく、ただ、どっかから持って来た、知識の受け売りを振り回しているだけなのです。

 リカード比較優位論は、「生産性」のことです。ワインをつくるのに1時間かけている人が、その1時間をウール作るのに向けたら、どれだけ生産性がアップするのかしないのか。

三角形は、その人の「生産性」のことを示します。自分は、どっちが得意か?です。

だから、職場、家庭でも何でも、2人以上集まったら、「どっちがどっちの仕事をやったら生産性が高いか」を常に考えます。すぐにやるでしょう?「俺こっちやるから、そっちはこれやって」って。

 あるいは、1人が、先に別な仕事を片付けてから(その間、別な1人は他の仕事をやっていて)、2人で、残りの仕事をやっつけるとか。

夫婦2人でもそうだし、会社の10人プロジェクトでもそうだし、1000人単位でもそうだし・・・少年野球だってそうでしょう?

 絶対優位「大国 小国」、「大人と子供」「健常者と身障者」は、労働力投入のことです。

GDPの成長は、3要素、①労働力×②資本(投資)×③生産性TFPです。

絶対優位①の多い、巨大な国は、必然的にGDPはでかいです。

でも、大切なのは、③生産性です。TFPがアップすれば、日本のように①がGDPの足を引っ張っても(事実そうなっています)、GDPはトータルで成長するのです。

比較優位は「生産性」のことをのべた理論です。だから、普遍なのです。絶対に否定できない理論なのです。

比較優位は成り立たない、アホか?です。


 「知ること」と、「わかること」、そして、「使えること」の間には、巨大な差があるのです。

 

http://mediamarker.net/media/0/?asin=4309246281

高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学

it80 it80 星3つ  各種メディアで取り上げられる、経済学音痴による貿易赤字、経常赤字を煽り立てて危機感を抱かせる間違った記事があちこちに見受けられる。経常赤字それ自体の是非はともかく、現在の日本の実状を観察すればそれらは杞憂でしかないことがわかる。  経済事象を、基礎の基礎をおろそかにせずに説明している良書である。

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