新型万能細胞「STAP細胞」は端からなかったのかもしれない。論文を発表した理化学研究所(神戸)の小保方晴子・研究ユニットリーダー(30)に、共著者の若山照彦・山梨大教授(46)が過去、「STAP幹細胞」の作製を頼んだところ、依頼したものとは違うマウスから作った細胞を渡されていたことが判明した。ここまでデタラメだと何を目的にした論文だったのかわからなくなる。真相を知る小保方氏は、米国逃亡説も流れるなど雲隠れ中だ。
理研によると、若山氏は論文の発表前、マウスの系統に関係なくSTAP細胞を作れるかを調べるため「129」と呼ばれる系統のマウスを小保方氏に提供し、STAP幹細胞の作製を依頼した。小保方氏は後日、2つの細胞の塊を若山氏に渡した。
若山氏はこの細胞塊を冷凍保存していたが、論文の不正疑惑などの問題を受け、改めて遺伝子を調べたところ、「B6」「F1」という別系統のマウスの細胞だと分かった。129とB6は万能性を持つ胚性幹細胞(ES細胞)を作製するのによく使われる系統。STAP細胞は、実のところ、ES細胞だった可能性もある。
若山氏は「この細胞は論文には含まれていない」としながらも、論文に掲載した細胞についても不信感を強めているという。
STAP細胞がそもそも別の万能細胞だった場合、あの発表は何が目的だったのか。医療関係者は「小保方氏の向上心の強さの表れなのだろうが、研究成果を発表する際は、研究費の増額を期待していることがある。問題の発表は1月末だったことから、新年度を踏まえ、予算獲得のねらいもあったのではないか」。