体内にあるセロトニンの約90%は腸などの消化管にあり、消化管の運動を調節しています。
脳内で神経伝達物資として働いているセロトニンは、セロトニン全体の約2%ほどしかありません。
脳幹にある縫線核からセロトニン神経系が伸びており、作用する場所により興奮性に働く場合と、抑制性に働く場合があります。
簡単にいえば、セロトニンはノルアドレナリンやドーパミンの活動を調整し、不安感をなくし、精神を安定させ落ち着かせる作用があるのです。
セロトニンが不足すると、不安障害やうつ病になったり、イライラして落ち着きがなくなり、衝動的、攻撃的になると考えられています。
そのため、うつ病など精神疾患に対する薬物治療では、セロトニンに作用するものが多く使用されています。そのほか、セロトニンは睡眠や覚醒、食欲や摂食障害、性欲にも関与していると推測されています。
一般的にセロトニンが不足すると睡眠障害になる一方、食欲や性欲が増します。
朝になると自然に目が覚め、夜になると眠るという生体リズムのことをサーカディアンリズムといいます。こんなことができるのは、ヒトや動物が体内時計を持っているからです。
朝、目から光の刺激を受けることで体内時計のスイッチがリセットされるようになっています。
本来、ヒトの体内時計の周期は約25時間に設定されているため、このズレを朝日を浴びることでリセットし、24時間周期に修正しているのです。
このため、朝日を十分に浴びなかったり、密閉された部屋だけで過ごしていると、一日の生活リズムがどんどんズレていき、夜型の生活になったりします。
この睡眠と覚醒のリズムに関係しているのがセロトニンです。そしてセロトニンからは睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンがつくられます。
朝日を浴びると、睡眠中はほとんど休止状態にあったセロトニン神経系が活動を始め、セロトニンを分泌するようになります。同時にノルアドレナリンなども分泌され、脳が覚醒し活動を開始するというわけです。
朝すっきり気持ちよく起きられるのは、セロトニンがしっかり働いているからです。逆にセロトニンの働きが悪いとなかなか脳が活動してくれないため、朝起きるのも辛くなり、ずっと眠っていたくなるのです。
日中セロトニンは分泌を続け、ノルアドレナリンやドーパミンの働きをコントロールしながら、精神を安定した状態に保ち、脳を落ち着いたクリアな状態にしてくれます。
夜が近づくにつれ、セロトニンの分泌は少なくなっていき、逆に暗くなるにつれて、松果体からメラトニンが放出されます。
メラトニンは脳の興奮を鎮めてリラックスさせ、体温を下げることで眠りを誘う作用があります。
メラトニンの量が少ないと、なかなか眠れなかったり、熟睡できないといった睡眠障害の原因になります。セロトニン濃度が低下してなるうつ病で睡眠障害が起きやすいのはこのためです。
セロトニンが活発に働くようにするためには、まずセロトニンが体内で生成されなければなりません。
セロトニンは必須アミノ酸のトリプトファンからつくられます。トリプトファン自体は体内でつくることができないので、食物から摂取する必要があります。
特に多く含まれている食品は、乳製品、肉類、アーモンド、納豆などです。
同時にセロトニンを効率的に生成するには、ビタミンB6などのビタミン類もバランスよく摂取したほうがよいとされています。
セロトニン神経系を活性化するには、まず朝起きたら朝日をしっかり浴びることです。日の光を受けることでセロトニンの分泌が開始されるからです。加えて、リズムのある運動や歩行などをすることでセロトニン神経系が活性化することがわかっています。
このようなことから、うつ病の予防や改善にウォーキングやジョギングなどの軽い運動が効果的であることも明らかになってきました。朝のウォーキングやジョギングは、セロトニン神経系活性化させるまさにうってつけの方法だといえます。
また、朝食をとることも重要です。朝食をとり胃腸が活動することでも体内時計がリセットされやすくなるからです。
そして朝食をとるときに、よく噛んで食べることもリズム運動につながり、セロトニン神経系を活性化させます。このことからガムを噛むこともおすすめです。
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