飲酒検問捏造事件:元警部補の被告に逆転無罪 大阪高裁

毎日新聞 2014年03月26日 13時32分

 飲酒検問でアルコール検出数値を捏造(ねつぞう)したとして、証拠隠滅などの罪に問われた大阪府警泉南署の元警部補、山下清人(きよと)被告(59)=懲戒免職=の控訴審で、大阪高裁は26日、懲役1年6月(求刑・懲役3年)の実刑とした1審・大阪地裁判決を破棄し、無罪を言い渡した。横田信之裁判長は「検出数値を捏造したと認めるには合理的な疑いが残る」と判断した。

 山下被告は2011年9月、大阪府泉南市での飲酒検問で、酒気帯び運転に該当するアルコール濃度が検出されたとする記録紙を事前に準備、原付きバイクに乗った元警察官の男性を交番に連れて行き、呼気を測定せずに交通切符(赤切符)を作成したとして起訴された。山下被告は「適正に飲酒検知した」と無罪を主張していた。

 昨年1月の1審判決は、検問を受けた男性の「飲酒検知器の動作音を聞いていない」との証言を基に、山下被告が実際には男性の呼気を測定しなかったと認定した。これに対し横田裁判長は、検知器の音が鳴らなかったとすれば、飲酒検問に立ち会った経験がある男性が、検挙時に山下被告に申し立てなかったのは不自然と指摘。「男性には、音が鳴った認識がなかったに過ぎない疑いがあり、証言は信用できない。被告が検知器を作動させなかったとした1審判決は不合理と言わざるを得ない」と判断した。

 この事件では、男性が11年10月、「酒量を水増しされた」と泉南署に苦情を申し出た。山下被告は当初から否認していたが、府警は12年3月、証拠隠滅容疑などで逮捕、同年6月に懲戒免職処分にした。

 山下被告は判決後に大阪市内で記者会見し、「主張が認められ大変うれしい」と安堵(あんど)の表情を見せた。府警の取り調べでは、捜査員から「犯罪を犯した汚い手で孫を抱けるのか」などと言われたといい、「決めつけの捜査をされた。今後は丁寧な捜査をしてほしい」と語った。懲戒免職処分を不服として府人事委員会に審査請求中で、国家賠償請求訴訟を起こすことも検討するという。

 府警の平井公雄・監察室長は「判決の内容を承知しておらず、コメントは差し控える」としている。【服部陽】

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