これは21世紀の新しい冷戦なのだろうか。

 これまでG8と呼ばれてきた主要8カ国の枠組みから、ロシアが外される。米欧日など7カ国がウクライナ情勢を理由に、ロシアの参加停止を決めた。

 ロシアは「(G8に)しがみつきはしない」と対抗心をむき出しにしている。さながら東西分断の時代に時計の針が戻ってしまったかのようだ。

 米欧の経済制裁にもロシアは動じる気配はない。クリミア半島の併合はほぼ完了した。

 情勢は依然、緊迫している。主要7カ国は、いっそう結束を固めてロシアへの圧力をかけ続け、再考を促すほかない。

 ロシアがG8に正式に参加したのは1997年だった。政治と経済の両面でロシアを民主主義と市場経済のブロックに組み込み、冷戦構造への後戻りを防ぐねらいがあった。

 だが実際は、経済が力をつけるにつれ、プーチン氏は強権姿勢を強めてきた。米欧型の人権や自由の価値観を認めない点では中国も同じであり、今の世界は一見、米欧と中ロの陣営に分極化しているようにもみえる。

 だが前世紀の冷戦時代と違うのは、どの国も地域も、切っても切れない相互依存の関係にあることだ。貿易、投資、エネルギー、そして文化。あらゆるものが国境を超えて行き交う。

 もはやイデオロギーで世界が分断される時代でもない。それどころか、テロや核問題、環境問題など、国々が共通した利害をもつ課題が山積している。

 そんなグローバル化世界の難題として浮上したのは、新たな安定役の模索であろう。「世界の警察官」を任じてきた米国の力が後退し、「Gゼロ」すら叫ばれるいま、どうやって世界の秩序を守ればいいのか。

 中ロを含む大国が拒否権をもつ国連安保理は機能不全がいわれて久しい。先進国と新興国でつくるG20は主に経済を論じる枠組みであり、政治や安保を語る場としては機能しにくい。

 だからこそG7にとって本当の正念場ではないか。近年形骸化が指摘されてきたものの、価値観を共有する首脳が一堂に会し、自由と民主主義という普遍の原則を再確認し、アピールできる数少ない枠組みである。

 力や脅しで国境を変えようとする行為を既成事実化させてはならない。それは尖閣問題を含むアジアなど各地に波及しかねない世界秩序への挑戦である。

 「法の支配」を強めるためにG7がどんな役割を果たせるか。欧米と日本は今こそ知恵をしぼるときである。