- 不動産法律解説
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第38条 定期建物賃貸借 4. 一般定期建物賃貸借の効果
1 建物賃借権の発生とその対抗要件
一般建物賃貸借契約が本条第1項および第2項の定める要件を充足して有効に成立したときは、賃借人は目的建物について、契約で定められた住居・店舗・事 務所・工場・倉庫などその用法に従って、これを賃借使用する権利を有することとなり、賃貸人は約定された賃料支払請求権を有することになる。この一般定期 賃借権も建物賃借権にほかならないから、建物賃借権として登記した場合はもちろん、建物賃借権の登記をしていない場合でも、建物賃借人が賃借建物の引渡し を得ていれば、未登記建物賃借権を第三者に対抗できるとする借地借家法第31条の適用を受けることは、通常の建物賃借権と変わりはない。ただ、建物賃借権 一般の登記と一般定期建物賃借権の登記とで異なる点は、一般定期建物賃借権の登記にあっては、一般定期建物賃借権である旨の特約を登記することができると されていることである(不動産登記法第132条第1項前段)。
ただし、この一般定期建物賃貸借としての特約の登記については、民法第177条の規定が適用されるわけではなく、登記簿上建物賃借権としてのみ登 記され、一般定期建物賃貸借の特約の登記がなされていない場合はもちろん、建物賃借権の登記を具備せず、借地借家法第31条により賃借人が目的建物の引渡 しを受けることによって建物賃借権の対抗要件を具備している場合でも、その有する建物賃借権が一般定期建物賃借権である以上、その建物賃借権の対抗力が認 められることから、一般定期建物賃借権であることを第三者に主張・対抗できるものと解される。
2 一般定期建物賃貸借契約の特別の効果
一般定期建物賃貸借契約に、通常の建物賃貸借契約と比べて異なる特別の効果が認められているのは、第一に賃貸借期間が満了することにより建物賃貸借契約 は当然に終了し、賃貸人に契約を終了させるための正当事由の存在の有無を問わない、第二に通常の建物賃貸借契約と異なり、法定更新や黙示の更新など法上当 然の契約更新が生じないためである。一般定期建物賃貸借契約の最も大きな特質は、約定された賃貸借期間が満了したときは、期間満了によって当該建物賃貸借 契約は終了し、賃貸人側に建物賃貸借契約を終了させることにつき正当な事由があることを要せず、正当事由の存否を問題とするものではない点である。このよ うに正当事由の存否を問わないので、借地借家法第28条が規定する解約につき、賃貸人に正当事由がないことによる法定更新もないことになる。
もっとも、一般定期建物賃貸借契約においても、契約終了の事前予告手続きを要するので(借地借家法第38条第4項)、この予告手続きを怠った場合 には、期間満了をもって建物賃貸借契約の終了を賃借人に対抗できず、建物賃貸人が賃借人に対し法定期間から遅れて建物賃貸借契約終了の通知をしたときは、 その通知が建物賃借人に到達した日から6ヵ月を経過しなければ、建物賃貸借契約の終了の効果を建物賃借人に対抗できないとされている(借地借家法第38条 第4項但書)。
また、一般定期賃貸借契約の特質の第二である法定更新・黙示の更新を含めて更新が認められず前契約と同様の契約を継続する場合でも、借地借家法第 38条第1項および第2項の手続きを要することになり、改めて契約を締結することが現実には必要となる。すなわち、一般定期建物賃貸借では、借地借家法第 28条の適用がなく、同条が規定する法定更新は生じないし、また、借地借家法第26条が定める解約予告手続懈怠による法定更新の規定も適用がない。
さらに、賃貸借契約期間満了後の賃借人の継続使用について、建物賃貸人がこれに異議を申し立てず黙認している状態にある場合も、借地借家法第26 条第2項および民法第619条が規定する黙示の更新に関する規定の適用がないと解されている。この適用がないと解する理由は、一般定期建物賃貸借にあって は、期間満了によって建物賃貸借契約は当然に終了していること、黙示の更新を認めるとすると、前契約である一般定期建物賃貸借としては、借地借家法第38 条第1項・第2項の要件を充足していないので、一般定期建物賃貸借契約としての更新は認められない。さりとて、通常の建物賃貸借としての継続を認めると、 新旧両契約の同一性が失われ更新とは言えないことになる。したがって、一般定期建物賃貸借にあっては、いずれの意味においても法定更新は認められるもので はないことになるのである。
このように、一般定期建物賃貸借契約では、契約の更新は認められないとされるが、前契約と同一内容の建物賃貸借を継続することができないのかとい うと、それは可能である。ただし、前契約と同一の一般定期建物賃貸借契約を継続させるには、まず、借地借家法第38条第1項・第2項が定める公正証書等の 書面によって一般定期賃貸借を約定する。すると、あらかじめ賃貸人が賃借人に対し、契約の更新がなく期間満了によって契約が終了する旨を記載した書面を交 付して説明を要することになり、実際には、再度の一般定期建物賃貸借契約手続きが必要となる。この意味から当事者の合意による契約の更新が認められないわ けではなく、現実には再契約手続きが求められるのである。
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