J1の第4節。0勝1敗2分けで勝ち点「2」のヴァンフォーレ甲府と、3連勝スタートの横浜Fマリノスが山梨中銀スタジアムで対戦した。ホームの甲府は開幕前の評価はそれほど高くなかったが、2節はアウェーでFC東京に引き分けて、3節はホームで新潟と引き分けた。いずれの試合も内容的には相手を上回っており、出だしは悪くない。一方の横浜FMはACLでは0勝2敗1分けと苦しんでいる。
ホームの甲府は「3-4-2-1」。GK岡。DF青山直、山本英、佐々木。MF新井、マルキーニョス・パラナ、福田、阿部、河本、石原。FWクリスティアーノ。3節の新潟戦(H)で先制ゴールを決めるなど、約10年ぶりとなるフォワードの位置で躍動していた37歳のFW盛田が試合当日になって急遽、出場できなくなったので、FWクリスティアーノが1トップに回って、ベテランのMF石原がスタメンに抜擢された。
一方の横浜FMは「4-2-3-1」。GK榎本哲。DF小林祐、栗原、中澤、下平。MF中町、富澤、兵藤、中村俊、佐藤優。FW伊藤翔。ACLでメルボルンに遠征したこともあって、日本代表のMF齋藤学はベンチスタートとなって、大卒2年目のMF佐藤優がスタメンで起用された。また、MF藤本淳が怪我で欠場となったので、MF兵藤がリーグ戦は初スタメンとなった。2013年は33試合に出場して7ゴールを挙げている。
■ 1対0で甲府が勝利
試合は静かな展開となる。いつものように甲府は「5-4-1」のブロックを作って、横浜FMはMF中村俊を中心としたゆっくりしたテンポで試合を進めたので、ゴール前の攻防の少ない試合となる。3試合連続完封勝利中とリーグ戦では結果が出ている横浜FMだったが、なかなかシュートチャンスを作れなくて、前半はシュートゼロ。カウンターから何度かチャンスを作った甲府ペースでハーフタイムに突入する。
後半になると横浜FMの攻撃のテンポが上がってきて甲府は危うい時間帯に突入したが、後半23分にバイタルエリアでボールを受けたFWクリスティアーノが相手DFを3人ほど引き付けて左サイドのMF阿部にパスを送ると、MF阿部のグラウンダーの折り返しに反応したMF石原が執念でねじ込んでホームの甲府が先制に成功する。35歳になったベテランのMF石原は今シーズン初ゴールとなった。
その後は横浜FMがセットプレーを中心に攻め込むが、古巣対決となる甲府のDF青山直がことごとくハイボールを跳ね返して相手の攻撃を阻止する。結局、甲府も6本のシュートだけだったが、横浜FMはそれよりも少ない4本だけ。90分を通してほぼ思い通りのサッカーができた甲府が1対0で逃げ切って勝ち点「3」を獲得。今シーズン初勝利を飾った。一方の横浜FMは今シーズン初黒星となった。
■ 過密日程と戦う横浜FM
横浜FMは今シーズン初黒星となった。過密日程になっており、5連戦の5試合目だったこともあってメンバーを入れ替えて戦ったが、「5-4-1」でブロックを組む甲府に上手く守られた。ハーフタイム後のコメントで甲府の城福監督は「守備はパーフェクト」という話をしていたが、そのとおりで前半は全く決定機は無くて、後半も決定機と呼べるようなシーンは無かった。
ACLは半分を過ぎた段階で0勝2敗1分けとなったので、GL突破はかなり厳しくなってきた。次の4節の結果いかんでは、5節や6節の試合が消化試合になる可能性も否定できないが、リーグ戦は4試合を終えて3勝1敗。順調な滑り出しを切ったが、ここまでは対戦相手に恵まれたところもある。1節の大宮(H)、3節の徳島(H)、4節の甲府(A)の3チームは降格圏に予想する人が多かったチームで前評判は高くなかった。
なので、勝負はここからである。力のあるチームとの対戦となったゼロックス(=広島戦)やACLの3試合はあまりいいサッカーは出来ておらず、結果も出ていない。次の5節は好調の鹿島(H)と対戦して、6節は昨シーズンの33節でやられたため、苦手意識があるかもしれない新潟(A)と対戦するが、鹿島戦と新潟戦は今シーズンの横浜FMのチーム力を占うには絶好の相手と言える。
■ ベテランの扱いの上手な城福監督
一方の甲府は4試合を終えて1勝1敗2分け。こちらは鹿島(H)、FC東京(A)、新潟(H)、横浜FM(H)と難敵との戦いが続いているので、4試合で勝ち点「5」というのはいい部類である。開幕の鹿島戦(H)こそ、セットプレーで4ゴールを喫して0対4で完敗したが、その後の3試合はいずれも甲府ペースで試合が進んでいる。昨シーズンの終盤の戦い方を継続しており、想像以上に戦えるチームに仕上がっている。
J1の序盤戦は鹿島の状態の良さが目立っているが、甲府の戦いぶりも目立っている。「5-4-1」でしっかりとブロックを組んで戦うサッカーはエキサイティングな展開になりにくいので、守備的な戦い方を批判する人もいると思われるが、甲府くらいの規模のチームがJ1で生き残るためには他のチームと同じことをしていてはダメである。戦力のあるチームが守備的なサッカーをするのと同列に扱ってはいけない。
4試合を終えて3得点なので、攻撃に関しては迫力があるとは言えないが、いい流れを作ったのは、何と言っても、FW盛田である。残念ながらこの試合は欠場となったが、2節のFC東京戦(A)からスタメンで起用されるようになって、3節の新潟戦(H)は先制ゴールを記録した。189センチの高さだけでなく、献身的なプレーでも目立っており、FW盛田の活躍が鹿島に0対4で大敗した悪い流れを払しょくした。
大学ナンバーワンストライカーという称号を得て鳴り物入りで浦和に加入した選手と言っても、CBにコンバートされて10年ほどが経過している。37歳になったFW盛田がフォワードのポジションでスタメンを張るようになるとは誰も予想できなかったと思うが、本当に城福監督はベテランを上手く使っている。年齢の高い選手が多くなっているが、年齢という先入観にとらわれることなくベテランを戦力化している。
この試合で決勝ゴールを決めたのは35歳のMF石原だったが、昨シーズンは39歳のDF土屋がJ1残留に貢献して、ボランチのMFマルキーニョス・パラナも36歳である。同じくらいの実力であるならば、年齢の若い選手を起用するのがセオリーと言えるが、ベテランのモチベーションを落とすことなく上手く操縦している。FC東京のときの城福監督は融通が利かない場面も見られたが、甲府で懐の深い監督になった。
U-16やU-17の日本代表を指揮していたときやFC東京のときは「ムービングフットボール」というフレーズを多用して、攻撃的なサッカーをする監督だったので、「甲府でも同じようなサッカーをしたい。」と考えていたと思うが、甲府の戦力を考えて辛抱強く戦っている。得意なスタイルがある指導者だけでなく、臨機応変に戦える指導者も有能と言えるので、城福監督は甲府でいい経験を積んでいると思う。
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