春の夢がかなった――。第84回選抜高校野球大会(3月21日開幕、阪神甲子園球場)の出場校に、長野県佐久市の通信制高校・地球環境が初めて選ばれ、校舎やグラウンドに喜びの声が響いた。同校は春夏を通じて初の甲子園出場を果たすと同時に、通信制としては全国初となり、注目を集めそうだ。県勢の選抜大会出場は2008年の長野日大、丸子修学館以来。
吉報が届いたのは午後3時半。日本高野連から電話を受けた吉沢正直校長(77)が「ありがたくお受けいたします」と答え、受話器を置いたあと「バンザイ」と叫んだ。直後、校舎近くの人工芝グラウンドで野球部に報告があり、選手たちが喜びを爆発させた。
坂本大地主将は「とてもうれしい。甲子園までの一日一日を大切にして、1試合でも多く戦いたい。どんな相手でも、自分たちの堅い守りを発揮したい」と抱負を語った。羽鳥均監督(48)は「心待ちにしてました。やるからには勝ちたい。甲子園では投手陣のレベルを上げ、(打撃は)振り負けないようにしたい」と健闘を誓った。
地球環境は、エース漆戸駿投手の安定した制球と、しっかりした守備が持ち味。昨年秋の北信越地区大会決勝では、敦賀気比(福井)に延長13回、0―1で敗れたが、強豪と互角の投手戦を演じ、「堅守」を印象づけた。
漆戸投手は「甲子園では3失点以内が目標。みんなでアウトを取っていきたい。全国の注目されている投手も見てみたいし、対戦するのが楽しみ」と張り切っていた。(渡部耕平)
■授業日以外も登校
地球環境は、消毒や環境保全関連の企業グループ「JNS」(本社・佐久市)が母体の学校法人「吉沢学園」が、2002年4月に開校した通信制高校。佐久市に本校があり、長野市、松本市、飯田市、軽井沢町に学習室がある。今年度の生徒数は193人。
生徒は週1日の登校日に授業を受け、その他の日はリポートの作成・提出をする。教科は通常の科目のほか、独自の「環境倫理」がある。
部活動では野球部、サッカー部、テニス部があり、野球とサッカーの両部員は本校近くの寮で生活。月曜に登校して授業を受け、火〜金曜は午前中の講座やリポート作成で登校している。野球部の練習は、平日は午後1時半から日没まで(月曜は休み)。
通信制だが、日本高野連の加盟規定にある「野球部長、監督の責任の下に活動している」「全員が集まって週2回以上活動」などに沿っており、05年に県高野連に加盟が認められた。
羽鳥監督は、入部を希望する生徒の保護者には勉強との両立が欠かせないと説明する。「勉強と野球の両立が、生徒のあるべき姿。今回は通信制でもやればできる、という可能性が認められたことが大きい」と話している。