ワインのカビ毒オクラトキシンA

ワインに関して健康に関係すると思われる物質があります。オクラトキシンA(ochratoxine-A, OTA)と言います。
日本ではほとんど問題にされていないようですのでここにフランスの文献を基に報告します。
オクラトキシンAは天然のカビ毒であり1965年に初めてシリアル中に発見されました。その後乾燥果物、コーヒー、カカオ、
スパイス、ビールなどでも検出されました。ワインについてはテーブルワインのサンプルから1996年に発見されました。

毒性および健康への影響
他のカビ毒と同様大量に摂取すると人体に害があります。興味深いことにシリアルをベースにした食べ物が非常に多いバルカン地域で腎臓がんの発症率が異常に高いことが報告されています。オクラトキシンAの影響とされています。オクラトキシンAは腎臓機能に影響を及ぼすネフローゼ毒性、発がん性、胎児の発育に影響を及ぼす奇形発生因子性、免疫毒性、リンパ毒性などの性質があると考えられています。

研究の推移
2000年以来各種の研究がされており問題となっているカビの本性も確定され、カビの生息条件や生育に影響する因子が判っています。従って逆に有効な抗真菌剤もできています。また、ワインに関してはOTAが誘発する危機的な状況を制限するような実際的な耕作法も確立されています。また、毎日これだけ摂取しても人体のがん細胞に影響を及ぼさないだろうと言う基準量が定義されています。平均的な人で一日0.37μgです。

ワインでの発生
収穫時ブドウの果実には十種類ものカビが付着している事が習慣的に分かっています。それらのうちのただ一種類の株がOTAに関連しています。Aspergillus Carbonariusアスペルギルス・カルボナリウスと呼ばれるものです。このカビはブドウの房についた虫が果皮を傷つけた場合などに発生する。ブドウの実が大きくなる最後の頃からこの現象は見られ、この段階の搾汁の中にもOTAが検出されています。

ブドウの中や株にカビ菌によって発生したOTAは、収穫時、搬送時、含浸時にブドウ果実液と果実が接触すると簡単にブドウ搾汁に入り込みます。逆に、シリアルのように貯蔵段階で汚染が広がるようなものとは異なり、OTAはワインの熟成中には発生しないという事があらゆる研究で分かっています。従って、ワインにおけるOTAの発生はカビ菌によってブドウが汚染された場合にのみ発生することとなります。

ボツリティス菌による汚染されたブドウの場合、二つの菌が競合するため一般的にOTAは極めて微量にしか発生しません。

ワインの中でOTAはかなり安定した状態にあり酵母によっても減少しません。ワインが熟成していく段階でわずかに減少していく傾向が見られます。しかし、この点についてはこの現象を正確に計測した資料はありません。

ワインにおける地理的状況
2000年の終り以来この問題に関連した大部分のワインは地中海周辺地域で発生している事が分かりました。すなわち、この現象は明らかに暑くて乾燥した気候の畑で生じていると思われます。従って、新世界のいくつかの地域のワインも同様の状況でしょう。

或る研究所ではラングドックのすべての地域の高品質なワインについて3年間100種以上調査しています。この結果、年によって変化がありますが大部分のワイン(1/2-2/3)のOTA含有率はわずか(0-0.5μg/l)でした。これに対して汚染ワイン(2μg/l以上)は5%以下でした。

法律の取扱い
2005年の終りからOIVが勧告して(CST 1/2002)、欧州委員会もワイン、ワインをベースとした他の飲み物、ブドウ搾汁におけるOTAは2μg/kg以下であることとしています。また、ブドウ・ジュース、その他の飲み物でブドウ・ジュースをベースにした含有物についても同様です。

以上