The Economist

英国のロシアマネーが制裁の足かせに

2014.03.26(水)  The Economist

(英エコノミスト誌 2014年3月22日号)

ロシアのオリガルヒ(新興財閥)を遠ざけることにかけては、ロンドンは大半の都市よりも失うものが大きい。

英国のロンドン南部にあるダリッジ・カレッジは、1学期の学費が5500ポンド(9100ドル)という私立学校だ。その校友会、フレンズ・オブ・ダリッジ・カレッジが主催する5月のチャリティーパーティーは、豪華なものになるはずだった。テーマはロシアで、組織委員会にはロシア人の父兄が名を連ねていた。アエロフロート・ロシア航空も協賛を予定していた。

 ところが、ウクライナの危機が起きた後、計画はひそかに中止された。裕福で教養のある人々がコサックに扮したり、バブーシュカを被ったりしてはしゃぐには時期が悪いと判断したのだろう。

「ロンドングラード」に象徴されるロシアマネーの浸透

 英国はどの欧米諸国より、ロシアの富が社会の上流に浸透している。ソビエト連邦の崩壊後に台頭したオリガルヒ(新興財閥)が「ロンドングラード」に注ぎ込んできた金額を考えると、デビッド・キャメロン首相率いる英政権は、ロシアの非道にどれほど怒りを覚えようとも、オリガルヒを弾圧できないだろうという批判がある。

 ロンドンの金融街シティはロシア人を締め出すべきではないというメモが流出したことも、そうした批判の正当性を裏付けているように見える。

 英国は、英国債に100万ポンド以上を投資している外国人に、3年間の「投資家」ビザを発給している。2年後にその国債を保有し続けていれば、1000万ポンドで居住権を手に入れることもできる。

 2008年第3四半期から2013年第3四半期までの間に、ロシア人には、この種のビザが433件発給されている。これはどの国より多く、近い数字は中国人の419件のみだ。

 英国には、オリガルヒの子弟向けに枠を用意した学校は、ダリッジ・カレッジ以外にも何十校もある。

 独立学校協会(ISC)によれば、2013年に私立学校に在籍する非英国人の生徒のうち、8.3%がロシア人だったという。年間の学費にすると最大で6000万ポンドをロシア人が支払っている。ロシア人の生徒数は、2009年以降倍増した。

 オリガルヒは、ロンドンのマンションやペントハウスを買いあさっている。不動産会社のサビルズによると、チェルシーやウェストミンスターといった「一等地」の購入者の4%がロシア人で、平均630万ポンドを投じているという。

 興味深いことに、別の不動産業者によれば、最近、ある…
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