元慰安婦“安倍は私達を嘘つきにするのか” 河野談話継承明言もやまぬ反発、海外メディア報じる
菅義偉官房長官は24日の定例記者会見で、従軍慰安婦問題に関連して、1993年のいわゆる「河野談話」に代わる新たな声明を出すことも、謝罪を撤回することもないと語った。オランダ・ハーグで行われる日米韓の三者首脳会談が迫る中、海外メディアも従軍慰安婦問題などをあらためて検証する報道を展開している。
【河野談話に代わる「新談話」の発表はない】
菅官房長官の発言は、安倍首相の側近でもある萩生田光一総裁特別補佐が示した「新談話発表」の可能性を否定したものだ。萩生田氏は23日に出演したフジテレビの「新報道2001」で、安倍首相が新談話を出すことを「否定していない」と答え、政府による河野談話の検証作業で新たな事実が出れば、「新しい談話を発表すればいい」などと語っていた。
菅官房長官は、記者から萩生田発言に対する政府の見解を求められ、「私は総理がそのようなことを言ったのを聞いたことがない」とし、萩生田氏は個人的見解を述べたに過ぎないという見方を示した。そのうえで、河野談話の変更や、安倍政権として新たな談話を発表することは「あり得ない」と語った。
また菅官房長官は、「検証はするが、それが見直しには結びつくことはない」とした。従軍慰安婦への謝罪を盛り込んだ河野談話は継承するが、根拠となった元慰安婦の証言などの検証作業は行う、という政府の姿勢をあらためて強調した。
【元慰安婦「苦しめた末に嘘つきに仕立て上げるのか」】
ブルームバーグは、25日付で元従軍慰安婦への取材をまとめたルポを掲載している。
記事によると、86歳の元慰安婦イ・セオンさんは、1942年、18歳の時に朝鮮半島南部の蔚山(ウルサン)で拉致されたと主張。今も右足に残る傷跡は、慰安所に連れて行かれた後、脱走を試みた際に日本軍の憲兵に傷めつけられたものだという。彼女は記者にこの傷跡を見せ、「安倍首相はこの傷を見に来るべきだ」と語った。
元慰安婦たちは、「軍の積極的な関与」を根拠に、今も日本政府による公的な賠償を求めて毎週水曜日にソウルの日本大使館前でデモを行っている。記事は、「軍の記録、当時の兵士の日記や、各国の慰安婦・目撃者の証言は、慰安婦の募集、輸送、組織に軍が積極的に関与したことを明確に証明している」とするオーストラリアの日本史研究家の見解を取り上げている。
89歳の元慰安婦パク・セオンさんは、安倍政権が計画している「検証作業」に対して、「長い年月に渡って苦しめた末に、私たちを嘘つきに仕立てあげるのか」と涙ながらに訴えたという。
【「集団的自衛権」をめぐる動きにも関心】
一方、ロイターは24日、安倍政権が目指す集団的自衛権をめぐる憲法の再解釈の問題にスポットを当てた記事を掲載した。
安倍政権は、憲法そのものを改正せずに9条などの「解釈」を変えることで、集団的自衛権の行使を可能にしようとしている。しかし、ここに来て与党内で公明党のみならず、自民党内からも反対論・慎重論が噴出しており、憲法再解釈の動きは「大幅に遅れるか、取下げざる得ない状況になっている」とロイターは論じる。
安倍首相は、これから内閣の合意を取り付け、秋の国会に憲法再解釈に必要な改正法案を提出することを目指しているとされる。ロイターによると、アメリカは、集団的自衛権の行使を盛り込んだ「日米防衛協力のための指針」の年内の更新を求めているが、秋の国会を軸にしたタイムラインが崩れれば、それには間に合わない公算が高い。
先週末の共同通信の世論調査では、憲法の再解釈には58%が反対、34%が賛成だったという。ロイターは、識者や政治家による複数の反対意見を取り上げつつ、集団的自衛権行使の容認は「第二次大戦後一度も発砲したこともない、日本の軍隊のターニングポイントになる」と評する。そして、「ほぼ確実に、既に悪化している中国と韓国との緊張関係を高めることになる」と記している。
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