民間資金を活用した社会資本整備、いわゆるPFIを増やそうと、政府が躍起だ。今後10年間の目標として、過去十数年の実績の約3倍にあたる10兆~12兆円の事業実施を掲げた。

 高度成長期に造られたインフラの老朽化対策は待ったなしだが、国も地方も財政は苦しい。一方、民間には資金が余っており、投資の拡大は経済成長のためにも欠かせない。

 ならば、インフラ整備に民間資金を呼び込み、民の知恵を生かしながら、官の非効率を改めよう――。そんな一石二鳥、三鳥を狙っている。

 ただ注意すべきことがある。

 まず、民間資金の活用で目先の公費負担が抑えられるからといって、必要性が低い施設を増やすようでは逆効果だ。

 これまで実施された400件余、総額4兆円強のPFIを政府が分析したところ、4分の3は単なる延べ払いだった。建設費や一定期間の管理費を民間が立て替え、国や自治体が分割返済していく手法だ。「施設の安易な新設につながった」との批判が絶えない。

 政府は今後目指すべき手法として、施設の所有権は官が持ちつつ、更新を含む運営を民に任せる「運営権制度」の活用や、公共施設への民間店舗の併設などを挙げた。前者は空港や上下水道など、後者は庁舎への飲食・物販店舗の導入が想定されている。

 PFIでも、既存施設の維持・更新や集約化を中心にすえるべきだ。民間の事業者がある程度利益を得つつ、公的サービスの質を保ちながら公費支出や利用者負担をどう抑えるか。官民で知恵を絞ってほしい。

 PFIの主役は民間であることも、忘れてはならない。

 政府は昨年秋、官民共同出資でPFI推進機構(官民インフラファンド)を立ち上げた。

 機構は、民間企業や金融機関による投融資を補完し、事業に必要なノウハウや情報を提供することを自らの役割に掲げる。ただ、政府保証付きで資金の調達ができるだけに、前面に出すぎれば事業自体が公共事業と同じになりかねない。

 機構は、人材や経験に乏しい自治体を支援し、インフラに投資する民間ファンドへの出資にとどめるなど、黒衣に徹する姿勢が欠かせない。

 複数の官庁にまたがる事業の窓口を一本化したり、国・自治体が持つ施設の資産評価や情報公開を進めたりと、実務上の課題も山積みだ。

 PFIはこうした官の問題点を改める機会ともとらえたい。