No. 1067 米国支える日本増税

日本の大手メディアがアメリカの国内問題について詳しく報じたり、またはその現状について触れることはほとんどないように思う。

先月、NGOのオックスファムは、「少数の利益のために:政治権力と経済格差」という報告書を発表した。それによれば先進国と途上国の区別なく、前例のないほど格差が拡大しており、世界人口の1%の最富裕層が世界の富の半分を独占し、最富裕層85人の資産総額が世界人口の所得下位半分の総資産額に匹敵するという。

特にアメリカでは、金融危機後の2009年から12年に下層の90%が経済的に苦しくなった一方で、成長による利益の95%を上位1%の最富裕層が手にしたという。

12年のアメリカの貧困層(3人家族で年収約230万円以下)は4700万人で、絶滅の危機にあるのが中流階級である。過去30年間、世帯収入はほとんど増えていないため、インフレ率を考慮すればどんどん貧困層へと追いやられているからだ。これほど格差が広がったのは、製造業が海外に生産拠点を移したことで安定した収入を提供していた仕事がなくなり、サービス業など、安いパートタイム職しか残っていないためである。

アメリカの生活水準指標は10カ月連続で過去最低となり、NBCの世論調査では7割のアメリカ人がその将来を悲観的に見ているという。独立宣言がうたった、機会の均等、自由な競争、そしてより充実した豊かな生活の追求という「アメリカンドリーム」はもはや過去のものとなった。

この現状に一番幻滅しているのは、「変化」と「希望」を信じて、初めての黒人大統領に投票した人々かもしれない。オバマ大統領の訴えた「変化」は、結局おとぎ話か誇大広告だった。国民の希望の星は、企業に有利な政策をとりつつ、さらに1700兆円強の借金を理由にセーフティーネットなど取り払えとばかりに社会保障を削減し、その結果が今の格差社会アメリカとなった。

安倍政権が推進しているのは、日本をアメリカ型社会に変えていく、同じ政策である。税制改正では、企業の活性化を重視するとして復興特別法人税の廃止を1年前倒しし、また大企業に交際費の50%非課税を適用したが、消費増税の軽減税率は行われず、復興増税も今後25年にわたり所得税額に2・1%が加算され続ける。復興増税は給与だけでなく退職金にもかかる。

軽自動車税も、15年4月以降は自家用乗用車で年7200円から1万800円になることが決まった。消費税に始まり、これから一般国民は増税ラッシュとなる。こうして1億総中流と呼ばれた日本も、アメリカのように中流層の減少が加速していく。

昨年7月、日本政府は米国債を約5兆円も買い増しした。日本国民の税金がアメリカを支えているのである。アメリカを支えるための日本の増税であるということも、日本国民は知っておくべきだろう。