今になって新茶のほとんどからセシウムが検出されていることを知りました。
売っているものとはいえ、全てを検査しているわけではないだろうし、暫定基準値を超えている可能性もあるのではと思います。
今11ヶ月になる娘がいますが、完母で育ててきました。
きっとわたしの母乳にはセシウムがでているのではと毎日不安でいっぱいです。
今からでも、母乳検査をするべきなのでしょうか。
どれくらいの数値のものを口に入れると母乳に移行するのかいまいちわからず気持ちばかりが落ち込んでしまっています。
娘はどれくらい被曝している可能性があるでしょうか。
また、セシウムは半減期が長いですが、今母乳からでていた場合、次の子どもを出産した時にも母乳にはセシウムが残っているのでしょうか。
放射性物質の母乳への移行については、ICRP Pub.95(Doses to infants from ingestion of radionuclides in mothers’ milk) に記述があります。それによると、放射性セシウム(Cs-137)の母乳への移行係数は18%となっております。
お子様の被ばく量については、詳細な状況が分かりませんので推定することは困難です。お知らせ頂いた情報から、新茶中のCs-137の濃度が500 Bq/kg(暫定基準値)で一日に新茶を1 kg飲用したと仮定した場合の被ばく線量の計算を行いました。
消費者庁のHP(http://www.caa.go.jp/jisin/pdf/110603tea.pdf)によると、お茶を飲用する場合、お湯で抽出するため、放射性物質の濃度は35分の1程度になるとのことですので、一日あたり14.3 Bq/kg(≒ 500 Bq/kg × 1/35)の放射性物質を摂取したことになります。
また、前述したとおり、Cs-137の母乳への移行は約18%となっておりますので、母乳中の放射性物質の濃度は2.5 Bq/kg(≒ 14.3 Bq/kg × 18%)となります。お子様が摂取した母乳の量を1 kg/日とした場合、一日に取込んだ放射性物質の濃度は2.5 Bqとなります。
放射性物質の濃度から実効線量(Sv)への換算には、実効線量係数を用いて行います。乳児の単位経口摂取あたりのCs-137の実効線量係数は、2.10 × 10-5 mSv/Bq (= 0.000021 mSv/Bq)となっておりますので、お子様の線量は、2.5 Bq × 0.000021 mSv/Bq ≒ 0.0000525 mSv ≒ 0.05 μSvと推計されます。
この線量は、お子様の健康に悪影響を及ぼす放射線量よりも遥かに低く、また、実際に被ばくした線量は、この推計線量より低いと思われますので、心配される必要はまったくないと思われます。
また、体内に取込まれたCs-137の動態についてですが、Cs-137の物理学的半減期は約30年と長くなっていますが、体内に取込まれたCs-137は排泄機構により約110日でその量が半分になる(この時間を有効半減期といいます)ということが分かっています。よって、もしも1年後に次のお子様をご出産された場合、その時の質問者様の体内には、現在の10%程度の放射性物質が残っていることになりますが、前述したとおり、非常に低い量となっておりますので、特に問題は考えられません。
母乳中の放射性物質の濃度については、国立保健医療科学院、日本産科婦人科学会などが情報を公表しておりますので、ご参考頂ければ幸いです。
食材中の放射性セシウムについて心配しておられる妊娠・授乳中女性へのご案内(日本産科婦人科学会)
http://www.jsog.or.jp/news/pdf/announce_20110721.pdf
母乳中の放射性物質濃度等に関する調査について(国立保健医療科学院)
http://www.niph.go.jp/soshiki/seikatsu/bonyuu_results.pdf
母乳中放射性物質濃度等に関する調査についてのQ&A(日本医学放射線学会、他)
http://www.jsog.or.jp/news/pdf/Q&A_20110608.pdf