村上兄がダービー連覇－。愛知県の名古屋競輪場で熱戦を展開してきたＧ１第６７回日本選手権（優勝賞金６０００万円＝副賞含む）は２３日、最終１１Ｒで決勝戦があり、村上義弘が先行した稲垣裕之の番手から捲って優勝した。村上の同タイトル獲得は２０１１年、１３年に続いて３度目。２着には武田豊樹、３着は深谷知広が入り、実力ある単枠の３選手で決着。村上は５日目終了後に「これが最後のダービーになると思う」と発言していたが、進退については「（選手会脱会騒動で受けた）自粛期間に入ってから考えたい」と、明らかにしなかった。６日間の車券売上額は１３６億７２０１万円（目標１４５億円）だった。

　■今後については明言せず

　まさにドラマチックな幕切れだった。決勝戦の共同インタビューで「日本選手権（ダービー）を走るのはこれが最後」と漏らしていた村上義弘が、昨年に続いてＶ。通算５度目のＧ１制覇を成し遂げた。

　「真っ白です。自分だけでなく、みんなの執念が入っていた。（２センターで）博幸が横に張ったのが分かったので、とにかく無我夢中でゴールまでと思って踏んだ。４コーナーを回った時に、勝手に目を閉じたのか、そこからの記憶がありません」

　ゴールした瞬間、横には武田と深谷がいた。自分が何着なのか全く分からなかったが、弟の博幸に「おにいちゃんって言われて…」。そこで、ようやく優勝を確信した。

　今回は、昨年末の選手会脱会騒動の処分（５月から１年間の出場自粛）が決まった直後のＧ１。村上は自らの行動を「軽率だった」と反省し、全身全霊を懸けた走りを披露。決勝レース後は歯を食いしばって、涙を流した。

　「（脱会騒動で処分が決まった全員が）苦しかったと思います。競輪界に混乱を招いてしまったし、ファンの皆様にはレースで返すしかないと思っていた。ただ、こんな僕にもファンの声援は大きかったし、その声援が今回の自分を支えてくれた」

　まさに“魂の走り”で感動を呼んだが、Ｇ１の舞台で走る村上の姿はしばらく見られない。もちろん共同会見では、今後について話が及んだ。

　「４月いっぱいは走れるし、今までずっとファンの皆様に支えてもらったので、まずはそこまで（４月２６～２９日、Ｇ２共同通信社杯）しっかり走る。ただ、１年間も競輪から離れることに、自分が耐えられるかの自信はない。その時にじっくり、今後のことについては家族を含めて考えたい」

　競輪を愛し、競輪とともに歩んできた村上が「長期離脱」を迎えるまでのタイムリミットは約１カ月しかない。だが今節、輪界の若きエース深谷知広や、事実上の引退を発表した山田裕仁らは選手会の対応に不満を爆発させた。今後の業界の動きは“いい方向に向かって”流動的にならざるを得ないだろう。　（森田）

　◆村上義弘（むらかみ・よしひろ）１９７４年７月６日生まれ、京都府京都市出身、３９歳、７３期。１９９４年４月デビュー。通算成績は１５９２走で５１２勝、優勝７８回（うちＧＰ１勝、Ｇ１５勝、Ｇ２５勝）。通算取得賞金は１４億９３４万７７８９円。身長１７０センチ、７６キロ、血液型Ｏ、座右の銘は「完全燃焼」。

　【決勝戦ＶＴＲ】

　深谷－成田、平原－武田－内藤、稲垣－村上義－村上博－稲川で周回。赤板前の３コーナーから稲垣が上昇して、そのままグイグイと先行。ＨＳ５番手から仕掛けた平原は、村上博のブロックで失速しながらさらに捲ると、村上義がＢＳから番手捲りを打ってＶ。平原マークから自力に転じた武田が２着、８番手捲りの深谷が３着に入った。

　■深谷の怒り爆発

　若きモンスターの怒りが爆発した。地元大会でダービー初Ｖを狙った深谷知広は、「力不足でしたが、今まで経験した中で一番素晴らしい大会だった」と、捲れず３着の結果にも、全力を出せたことに満足げ。

　だが頭の中は、レース中から選手会が出した脱会騒動の自粛勧告のことでいっぱい。「（決勝の）着よりも、こんな素晴らしい多くの選手たちと今後どうして走れなくなるのか、という思いが強かった」と告白。さらには「選手会は意地を張っているだけ。何をやっているのか。みんなで力を合わせて（事態が）良くなってくれるように頑張る」と、厳しい口調で語った。

　■戦い終わって

　武田豊（２着）もう少し、我慢して踏めていれば…。近畿勢には、自分か平原君で仕掛けないと勝てませんね。村上君は、若手を育ててきたし（優勝は）そのご褒美だと思う。

　村上博（４着）近畿のすごいメンバーで走れたから、平常心で走れなかった（苦笑）。最後はもう、けん制する力しか残っていなくて…。やっぱり兄（義弘）は、後ろから感じるものが他の人と違っていた。

　稲川翔（５着）いい展開になったけど…。（脇本雄に３着は狙えたでしょう？と言われて）力が足りなかった。

　成田和（６着）力不足としか…。今回は調子が良くなかったので、次こそは頑張りたい。

　内藤秀（７着）いろいろと経験をできたし、今後につなげたい。

　平原康（８着）力不足でしたが、自分はいいレースができたと思います。

　稲垣裕（９着）選手になって、ずっと目標としてきた「ダービーの決勝で村上（義）さんの優勝に貢献する」ことを達成できて、本当に良かったです。

＝2014/03/24付 西日本スポーツ＝