戦時中の強制連行をめぐり中国で起こされた損害賠償請求訴訟に、千人近い元労働者や遺族が参加の意思を示していることが明らかになった。裁判所が原告の追加を認めれば日本にとって大きな政治的圧力になるのは避けられない。鍵を握るのは被告企業の対応だ。

 北京の裁判所が膨大な数に上る元労働者らを被害者と認定し、原告に加えるかが焦点となる。ただ中国の裁判所は共産党の指導下にあり、政治の影響を強く受ける。対日感情が悪化する中、裁判所が訴えを受理した以上、「被害者に不利となる判断をするとは考えにくい」というのが外交筋などの一致した見方だ。

 中国外務省幹部は「日本の政府と企業が政策的、行政的にも誠意を示してこなかったことが今回の提訴につながっている」と指摘。元労働者の訴えについて、「(1972年の日中)共同声明で放棄したのは、戦争行為による直接の被害。強制連行と慰安婦、遺棄兵器の問題は、戦争賠償とは別問題というのが中国政府の立場だ」と強調する。

 原告側代理人の康健弁護士は「ある企業と和解交渉を続けたが、誠意のない事務的な対応に終始した。和解の希望はないと判断したのが提訴の直接の引き金だ」と話している。