Jリーグ史上初となった無観客試合。23日の埼玉スタジアム(さいたま市緑区)は、普段の地鳴りのような歓声が消え、ボールを蹴る音が響いた。差別根絶を宣言した選手。過熱しがちな応援を省みるサポーター。スポーツは差別とどう向き合うか、それぞれが考える日となった。

 ■選手「サッカーなら差別撲滅できる」

 22年目のJリーグで最も重い処分に、選手らは差別の重みを改めてかみしめた。

 開始2時間前、浦和の選手たちが観客のいないメーンスタンドに向かって並んだ。阿部勇樹主将が「人種、肌の色、性別、言語、宗教、出自などに関する差別的、侮辱的な発言や行為を認めないことを宣言します。サッカーはスポーツや社会から差別を撲滅する力を持っています」とクラブの宣言を読み上げた。試合では、過去にも浦和サポーターが差別行為をしたことも踏まえ、「今回の事実を受け入れ、チームとして新たな気持ちを示すつもりで戦った」という。

 試合は、選手の家族の観戦も認められなかった。入場曲など演出は一切なく、広告看板も撤去された。代わりに電光掲示板に表示されたのは、「SPORTS FOR PEACE!」(スポーツで平和を)というロゴ。人種差別撲滅もうたう浦和のプロジェクトだ。

 試合後、日本代表のGK西川周作は「サッカーはボール一つで誰とでも楽しめるスポーツ。選手は影響力がある立場なので、(反差別を)発信していきたい」と話した。

 Jリーグの村井満チェアマンはサポーターと同じ立場になろうと、テレビ観戦した。「これで悲しい事件が終わりになるわけでは決してない。試合の意味を、Jリーグに関わる全ての皆様とともに考えていきたい」とコメントを出した。

 浦和の淵田敬三社長は記者会見で「感性が低かった。二度とこのようなことが起きないようにしたい」と改めて反省の言葉を述べた。