とても「信任された」とは言えない結果だ。

 議会の抵抗で行き詰まった大阪都構想を前に進めようと、大阪市長だった橋下徹氏が出直し市長選挙を仕掛け、再選を果たした。主要政党は「市長に独り相撲を取らせる」などとして候補者を立てなかった。論戦は停滞し、投票率は歴史的な低さとなった。

 橋下氏は選挙戦で「都構想に反対する政党に僕を落とすチャンスを与えた」「落ちなければ粛々と手続きを進める」と主張した。選挙で勝ったものこそ民意――以前からの持論である。だが、今回の選挙で浮き彫りになったのは、そうした考え方や手法の限界である。

 4分の3を超える有権者が棄権に回ったのはなぜか。告示後の朝日新聞・朝日放送の共同世論調査から、市民の悩みがうかがえる。都構想への賛否は割れたが、出直し選には55%が反対と答え、賛成の27%を大きく上回った。議会が思うように動かぬからと、話し合いを放棄して「民意」とりつけに走る橋下氏の手法が支持されたとは、とても言い難い。

 方針変更が不可欠である。橋下氏は都構想の設計図をつくる協議会から反対議員を外すことを公約に掲げた。だが、この選挙結果をたてに公約にこだわれば、議会との対立が深まるだけだろう。そもそも、反対派を押しのけるような議論を市民が支持するだろうか。まずはこの公約を撤回し、ノーサイドで話し合いを再開すべきである。

 橋下氏に反対しながら対立候補も立てなかった野党の姿勢にも、市民の厳しい目が向けられていることを忘れてはならない。急速な高齢化が進む巨大都市で、将来の財政破綻(はたん)をどう回避し、発展していくのか。野党側も説得力あるビジョンを示して議論を挑む責任がある。

 都構想実現に向けた政治日程の見直しも避けられないだろう。橋下氏は、夏までに都構想の設計図をつくるという。来春の統一地方選までに構想を実現させる目標を前提に、逆算した日程である。

 だが構想の是非を問う住民投票の実現には、市議会に加えて大阪府議会の承認も必要だ。橋下氏は「住民投票が議会でつぶされたら、統一地方選で過半数を取れるようがんばりたい」というが、いま必要なのは正面衝突でなく幅広い合意形成だ。

 改革を進めるには、結局は市民の理解と納得が欠かせない。日程は白紙に戻し、市長も野党も時間をかけてわかりやすい論戦を繰り広げてほしい。