ビジネスモデルは
「基本パターン」の組み合わせで考えよ
ジレットとネスレの事例から学ぶ「消耗品モデル」
ビジネスモデルは無数に存在するが、そこには共通するパターンを見出すことができる。今回は、前回紹介したフリーミアムモデル以外のビジネスモデル・パターンを具体事例とともに紹介し、特に応用例の多い「消耗品モデル」について、ビジネスモデル・キャンバスとピクト図解を使って可視化する。連載第3回。
8+1の基本ビジネスモデル・パターン
前回は、ピクト図解の描き方を紹介し、ビジネスモデル・パターンの一例「フリーミアムモデル」をEvernoteの事例で解説しました。今回は、ビジネスモデル・パターンについて詳しくお話します。
ビジネスモデルは無数に考えられますが、業種業界の壁を越えて適用できる「基本の型(パターン)」は9種類あります。これらの基本パターンを組み合わせるだけでも、多様なビジネスモデルをデザインすることができます。まず、どのようなパターンが存在するのか、【表1】をご覧ください。
モデル名 | 内容 | 事例 |
---|---|---|
シンプル物販 モデル |
製品やサービスを開発・製造し、 ユーザーに提供して対価を受け取る シンプルなビジネスモデル |
多くのメーカー |
小売モデル | 商品を作らず、 「仕入れて売る」だけのビジネスモデル |
書店 百貨店 コンビニ 楽天市場 |
広告モデル | 商品そのものの価格を抑えたり 無料にしたりして、商品を媒体として 広告を掲載することで広告料を得るモデル |
雑誌 民法テレビ局 グーグル フリーペーパー |
合計モデル | 消費者を呼び込む目玉商品を用意しておいて “ついで買い”を狙うビジネスモデル |
居酒屋 格安旅行パック 100円ショップ 保険 |
二次利用 モデル |
商品を二度、三度と再利用して 収益を上げる「一粒で二度おいしい」モデル |
マンガ単行本 映画DVD ベストアルバム 復刻版 |
消耗品モデル | 大元となる商品の価格は抑え、消耗品や メンテナンスで利益を上げていくモデル |
ジレット ゼロックス ネスプレッソ |
継続モデル | 製品やサービスを定期的に使い続けてもらい、 売り上げを確実にあげていくモデル |
携帯電話 ファンクラブ 定期購読 |
マッチング モデル |
製品・サービスを提供する側とユーザーとを 仲介するビジネスモデル |
不動産仲介 人材募集サイト ホテル予約サイト |
フリーミアム モデル |
機能制限した「ベーシック版」を無料で 多くの人に使用してもらい、 一部のユーザーが有料プレミアム版に バージョンアップすることを狙うモデル (連載第2回で解説) |
エバーノート ドロップボックス フリッカー |
ここに挙げたビジネスモデル・パターンは、私が新規事業開発支援のコンサルティングで頻繁に使っている「8つの基本ビジネスモデル・パターン」として、拙著『ビジネスモデルを見える化する ピクト図解』(ダイヤモンド社、2010年)に詳述しています。前回ご紹介した「フリーミアムモデル」とあわせて、ここにご紹介いたします。
ビジネスモデルをデザインする技法 「パターン・ランゲージ」
上記で挙げたような「基本パターンを組み合わせてデザインする」方法論の1つとして「パターン・ランゲージ」という手法があります。建築家クリストファー・アレグザンダーが提唱した都市計画や建築のためのデザイン手法で、1977年に『パタン・ランゲージ―環境設計の手引』(鹿島出版会、邦訳1984年)として体系化されました。彼は建物や街の形態に繰り返し現れる法則性を「パターン」と呼び、同書の中で253パターンを挙げています。パターン・ランゲージで記述された各パターンは「共通言語」として共有化され、「レゴ」ブロックのパーツのように、組み合わせて使うことが可能です。
このパターン・ランゲージの考え方は、建築分野以外にも応用可能で、すでにソフトウェア開発の分野では「デザイン・パターン」という名称で応用されています。同様に、ビジネスモデル・デザインの分野でも応用可能で、ビジネスモデル・キャンバス考案者のオスターワルダーらも「パターン・ランゲージの考え方」を取り入れています。著書『ビジネスモデル・ジェネレーション』(翔泳社、2012年)の中で「建築におけるパターンとは、原型として再利用可能なものとして、建築デザインのアイデアを捉える考え方のことである」とアレグザンダーの言葉を引用し、ビジネスモデル・キャンバスを使って「ビジネスモデル・パターン」を解説しています。
本連載では、彼らの考え方をさらに拡張し、「ビジネスモデル・キャンバス」と「ピクト図解」の2つをセットにした記述法を「ビジネスモデルのパターン・ランゲージ」として採用しています。本連載の目的は、ビジネスモデル「分析」ではなく、ビジネスモデル「デザイン」にあります。今回は、複雑なビジネスモデル・パターンは割愛し、シンプルかつ応用範囲の広い、“原型として再利用可能な”ビジネスモデル・パターンとして、「消耗品モデル」を少し深掘りしてご紹介いたします。
- 第3回 ビジネスモデルは 「基本パターン」の組み合わせで考えよジレットとネスレの事例から学ぶ「消耗品モデル」 (2014.03.24)
- 第2回 ビジネスモデルを「見える化」するピクト図解「ビジネス3W1H」を意識してビジネスモデルを読み解け (2014.03.17)
- 第1回 ビジネスモデルをデザインするスキル「ビジネスモデル・キャンバス」と「ピクト図解」を身につけろ (2014.03.10)