過去の核実験との相違点

福島第一原子力発電所事故と過去の核実験との違いについての質問も多く寄せられています。

以下に、両者の相違点に関するご質問と回答の一例を紹介させていただきます。

(http://radi-info.com/q-734/)

 

【ご質問】

原発から放射能が漏出していますが、これは過去の核実験による放射能放出と比べて

1)露出する放射能の種類

2)放射能量

3)遠近の環境への短期/長期影響

相違点を教えてください。

 

【回答】

1)核爆発や運転を続けた原子炉が持っている放射性核種は基本的に同じですが、大気中への放出の違いがあります。すなわち、核爆発では爆発による一瞬の大量放出に対して、今回は水素爆発による揮発性の高い核種の漏出と考えられます。従って、核爆発では、ウラン、超ウラン元素(プルトニウム、アメリシウムなど)核分裂生成物で質量数が90付近の元素(クリプトン、ストロンチウム、イットリウムなど)と質量数が130付近の元素(テルル、ヨウ素、ゼノン、セシウムなど)が放出されますが、今回は希ガスのクリプトン(Kr-85)とゼノン(Xe-133)、テルル(Te-132)、ヨウ素(I-131、I-132)、セシウム(Cs-134、Cs-136、Cs-137)が主な漏出元素で、ストロンチウムはセシウムの千分の1程度とされています。

2)福島原発から漏出した放射能の量は、およそ60京ベクレルとされていますので、その内セシウムが十分の1程度としますと、これは1945年から1963年までの核実験で放出されたセシウムの総量の十分の1程度と見られます。

3)汚染区域は単純に原子力発電所からの距離によって減少するのではなく、爆発があった当時の風向きによって、かなりの違いがあることがお分かりのことと思います。また、半減期の長いセシウム-137(物理的半減期:30年)などは風化作用による減少効果はあるものの、かなりの部分は長くその地に留まり影響を与えることになります。

 

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