長崎県壱岐市教育委員会は14日、弥生時代の環濠集落跡「カラカミ遺跡」(壱岐市)で、鉄生産用の地上炉跡が見つかったと発表した。弥生時代の地上炉跡は国内で初めての発見。専門家は、弥生時代には明確に確認されていない精錬炉の可能性があると指摘、市教委は今後も調査を進める。
市教委によると、炉跡は弥生時代後期(紀元1~3世紀ごろ)のもので、少なくとも6基が見つかった。床面に直径約80センチの範囲で焼けた土が広がっており、床面に直接炉を作る「地上式」と確認した。
国内で確認されている炉は地下式で、カラカミ遺跡の炉は韓国の遺跡に見られる精錬炉跡に似ている。周辺からは鉄製品の加工時に発生する鉄片は見つかっていないため、鉄自体を精錬していた可能性があるという。日本では6世紀後半ごろ鉄の精錬が始まったとされている。
九州大の宮本一夫教授(考古学)は、出土状況などから「精錬炉の可能性がある。そうであれば、弥生時代に鉄を生産していた重要な遺跡だ」と述べている。
これまでカラカミ遺跡では、炉に風を送る管や鉄の棒、鉄の「やじり」なども出土。市教委は「大陸から入った鉄を加工したか、ここで精錬したかは、さらに調べたい」としている。
壱岐市には「魏志倭人伝」に記された「一支(いき)国」の王都とされる「原の辻遺跡」もあり、カラカミ遺跡も一支国の集落だったとされる。〔共同〕
カラカミ遺跡、長崎県壱岐市教育委員会、宮本一夫