【コラム】韓国経済がまだ切っていないカード

 韓国経済の悩みは、苦しい状況で切ることができるカードがないことだ。1000兆ウォン(約96兆円)を超える家計債務で民間には消費余力がなく、危機のために公共部門が動員されるため、政府や公共部門の負債も1000兆ウォンに迫っている。現在韓国で唯一余力がある経済主体は大企業だが、国内投資を行わず、資金を銀行に入れっぱなしにしている。このため、投資をしないまま積み上げた内部留保に課税を行うべきだという過激な主張も出ているのが実情だ。

 韓国経済は手足を縛られ、何もできないように思えるが、実はまだ使っていないカードがある。それは配当だ。株式市場に韓国の個人投資家が占める割合は世界最高水準だ。しかし、配当利回りは1.1%で、主要20カ国(G20)のうち、ワースト2位にとどまっている。オーストラリア(4.4%)、英国(3.6%)、ドイツ(2.7%)、米国(1.9%)だけでなく、ゼロ金利に近い日本(1.6%)よりも低い。

 ウリィ投資証券の分析によると、韓国の配当利回りを1ポイント高めただけで、8兆ウォン(約7700億円)が国内の株式投資家に配分され、余裕ができた個人投資家がそれを消費に回せば、経済成長率が0.6ポイント押し上げられると推定される。そのシナリオ通りならば、韓国の今年の経済成長見通しは4%台半ばに跳ね上がる。配当を通じた8兆ウォンの超大型景気浮揚策は、企業が利益を上げる限り、今年だけでなく来年も再来年も続けられるもので、とめどなくあふれる泉のような存在だ。

 魔法のランプのようなこの手がいまだに使われていないのは、錯覚、誤解、迷信が背景にある。過去の高度成長期には利益を内部留保すれば、投資が誘発され、企業価値が高まるというプラスの循環が起きた。しかし、経済成長率が低下したことで、企業は過去最高の内部留保を積み上げても、資金の使い道がない。専門家は企業が配当を増やし、株主に還元すれば、株価が上昇する新たなプラスの循環が起きるとみている。

 一部には配当を増やせば、大企業のオーナーばかりがもうかるという指摘もある。しかし、韓国の主な大企業でオーナーの持ち株は2%にすぎない。配当を増やしたところで、オーナーの懐に入る部分は少ない。だからこそ、企業は配当ではなく、利益を社内に留保し、関連会社をつくり、系列会社に発注を集中させたりするのだ。保有株主で見た場合、株式市場全体で個人が占める割合は47%に達し、国民年金など機関投資家も41%を占める。配当を増やせば、大半は最終的に個人の利益になる。

 配当に関する最大の誤解は、外国人投資家に関する部分だ。外国人投資家は保有株式数では0,3%を占めるにすぎないが、値がさ株を多く保有しているため、時価総額ベースでは34%を占める。このため、投資家を増やせば、外国人の利益にばかりなりかねないとの見方もある。しかし、配当を増やした場合、外国人投資家に回る分より国内投資家に回る分が2倍も多い。また、外国人に配当を払ったとしても、外国人が韓国に事業所をつくり、雇用を創出し、税金を支払えば、韓国経済にはプラスになる。

 韓国経済は今こそ配当というカードを切るべきだ。国民年金など機関投資家が積極的に働き掛け、企業の配当性向を高めることが求められている。

朴宗世(パク・チョンセ)経済部長
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