再生医療トラブル~体性幹細胞治療の闇~|クローズアップ現代

NHK総合テレビの「クローズアップ現代」で追跡再生医療トラブル~体性幹細胞治療の闇~が放送されました。体性幹細胞(たいせいかんさいぼう)はIPS細胞のように他の細胞に変化する力を持っているため再生医療にいかそうと研究が始まっています。脳卒中、ぜんそく、豊胸など様々な分野で利用できると期待されています。しかし、体性幹細胞を巡って今トラブルが相次いでいます。まだ研究段階で効果がハッキリしていないにも関わらず多くのクリニックで治療が行われ患者が死亡したり失明したりするケースが出ているのです。

埼玉県の長瀞医新クリニックの院長、横山博美さんはこれまでぜんそくや血管障害などで幹細胞による治療を400人に行ってきました。体性幹細胞治療では、まずお腹から脂肪を取り出します。次に脂肪の中から幹細胞を抽出。培養して数を増やします。培養された幹細胞は点滴や注射器を使って患者の身体に戻されます。横山医師が考えるメカニズムは投与された幹細胞は幹部に到達すると傷ついた組織を再生し血管障害や腎臓病などに効果を発揮。また炎症やアレルギーを抑える物質を出すことでぜんそくやアトピーなどの病気を改善すると考えています。幹細胞治療はまだ研究段階で効果や副作用はハッキリと分かっていません。それでも患者が求めるなら期待にこたえたいと治療を続けています。

今、体性幹細胞治療を行っているクリニックは全国で少なくとも100を超えます。病気への効果を感じる患者がいる一方でまだ研究段階のため思わぬ副作用に見舞われた人もいます。30代の女性は体性幹細胞治療によって豊胸手術を受けました。注射で入れた幹細胞が脂肪や血管に変化し胸が大きくなる最新の方法です。しかし、実際は胸はほとんど大きくならず一部にシコリが出来てしまいました。シコリができた原因は胸に入れた幹細胞の量が少なかったことだと見られています。幹細胞を使った豊胸手術はまだ研究段階のため、どの程度細胞を入れれば良いのか詳しいことが分かっていないのです。

なぜ研究段階の治療を行うことが出来るのでしょう。一般的な医療では何度も臨床試験を繰り返し効果や安全性を審査された治療しか実施できません。しかし、患者が費用の全額を負担する自由診療では医師の裁量が幅広く認められ研究途上の治療でも行うことが出来るのです。医師が自由に幹細胞治療を行える現状。その中で安易に治療を始める医師が増え思わぬトラブルが起きているのです。

今、体性幹細胞治療を求めて海外から日本にやってくる人が急増しています。韓国のとあるバイオ企業は幹細胞治療を紹介し8000人以上を日本に送り込んでいます。欧米や韓国では幹細胞治療は一部の症例を除いて法令で規制されているため、医師の裁量で治療が行える日本に目をつけたのです。この状況を狙って新たなビジネスを始めようとするロシアのバイオ企業もあります。

幹細胞治療に規制がない日本の現状には国際的な批判も高まっています。こうした事態を問題視した厚生労働省は去年、法律による規制を検討し始めました。しかし、この事態に対し患者から不安の声が上がりました。

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