武雄市図書館 operated by TSUTAYAの現地に行ってきました。本来は、館内撮影禁止なのですが、行政視察ということで市役所から特別に写真撮影許可をいただきました。

<前回ブログは、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/35886243.html

書籍・音楽ソフト・映像ソフトのレンタル・販売店大手チェーン「TSUTAYA」を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下CCC)を当館の指定管理者として運営されています。民間の書店である代官山蔦屋書店を手本にすることが特徴で、蔵書数20万冊(ちなみに、いわき総合図書館の蔵書は47万冊)、Wifi完備で年中無休です。この事例を全国的に「新しい図書館のロールモデル」にする意向を樋渡市長は説明され、実際に、追随しようとする自治体もいくつかあるようです。
 
平台に置かれた雑誌類は、購入可能です。図書館と書店は一体化していますが、貸出図書は黒、販売は白いサインで判別できます。
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特徴1:スターバックスがテナントとして入居し、館内自由にお茶をしながら読書できる
特徴2:Tポイントカード、セルフレジで図書が借りられる。本購入やレンタルビデオも共通のセルフレジで可能。
特徴3:図書館運営は、利用者視点でなされている(図書分類等)

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特徴の第一は、スターバックスが入居していることです。購入したスターバックスラテは、館内どこでも自由に飲むことが許されています(勉強室を除く)。実際、机の下には電源コンセントが設置され、お茶を片手にPCを使いながら調べ物をされている方を見かけました。なお、無料Wifiかつipadの無料貸出サービスもあります。

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このスターバックス店舗は、CCCが運営するテナントという位置づけです。整理すると、
・武雄市は、既存図書館の本体・躯体の改修工事費として、4.5億円支出
・CCCは、テナント部分の改装工事として、3.5億円支出
・武雄市は、市立図書館の運営につき、CCCを指定管理者として委託(武雄市からCCCへの委託料支払:年間1.2億円)
・CCCは、同時に武雄市から図書館の目的外使用の許可※を得て、蔦屋書店を設置(スターバックスやセルの書店、ビデオレンタル店を含む、CCCから武雄市へテナント家賃支払:800万円)。
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改装前の図書館運営費用は、1.2億円。それが365日オープン化による運営費用見積りが、約2.4億円(市が直接運営した場合のコスト積み上げの見積り)。それがCCCを指定管理者として運営委託することにより、委託コストが1.2億円まで下がったそうです。ただこれは副次的にコスト削減となっただけであって、当初の目的はあくまでも、市民サービスの質・量の向上です。少なくとも市民満足度アンケートからは、それが実現できているであろうことが、推定できると思います。
 
※行政財産の目的外使用許可: 行政財産は、原則として施設の設置目的又はその用途以外に使用することができません。しかし、その用途又は目的を妨げない限度において使用を許可することができるとされています。
 
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DVD・CDレンタルコーナーのには、部屋全体360度、見渡す限りのDVD・CDが収蔵され、圧巻です。

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特徴2は、セルフレジです。図書館内の本が、司書ら人間の手を介さずに、自ら機械を使って貸し出し処理ができます。なお返却方法は複数あり、①図書館へ直接返却、②市役所等に備え付けてある返却ポストへ投函、③宅急便(送付料金は自前持ち)で返送等で、あくまで市民が利用しやすい方法を選択することができます。これもTSUTAYAのDVD返却方法から、学んでいることは明らかです。

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もともと持っているT-カードを用いて、私もセルフレジ体験をしてみました。タッチパネルで行い、非常に簡単です。手続きにかかる時間は1分程度。

(図書館利用の場合)
・貸出機手続き開始ボタン
・Tカードを読み取り機に入れる
・借りたい本を、読み取り機の上に置く(複数冊同時OK)
・確認ボタンを押す
・印刷された貸出票が出てくる
・完了(Tポイントが3ポイント加算)

(書籍購入の場合)
・セルフレジ取引開始ボタン
・Tカードを読み取り機に入れる
・買いたい本をバーコードリーダにかざす
・確認ボタンを押す
・クレジットカード決済か現金決済を選択する
・現金の場合、お札・コインを投入口に入れる
・領収書・おつりが出てくる
・完了
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この自動貸出機が非常に使いやすく、秀逸です。司書の方は、本の貸出業務に要する時間を削減でき、その分、本来の業務である、本の探し方相談や調べもの相談に乗ることができます。なお、従前の図書館に所属していた15人の司書等スタッフは、継続してCCCに雇用され、(最低5年間は、同待遇を約束)現在も、図書館等運営業務に携わっているそうです。その他、目的外使用部分で、54人の新規雇用があるそうです。

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図書館の本を借りるのに、既存のTカードさえ持っていれば、新たに武雄市図書館カードを作る必要はありません(これ、びっくりしました)。持っていない方は、新たなTカードを作るか、Tカードでない普通の図書館カードを選択できますが、97%の利用者がT-カードを利用されているそうです。なお、利用促進のため、図書館利用1回(1日1回上限)につき、3ポイントのTポイントが付与され、Tカード提携店でその獲得ポイントは利用可能です(館内のスターバックスもTカード提携店なので、早速利用可能)。

Tカード利用に関しては、情報漏洩の流出リスクがあるといわれていますが、Tカード側に渡される情報は、顧客名、利用冊数等4項目に限定され(著作名は非開示)、また現在のところ流出は1件もないとのこと。

Tカードの顧客数は4,500万人だそうで、これは発行枚数でカウントしている訳ではないそうです(発行枚数は10年間で1億3,000万枚に達した)。2枚持っている人は一人に名寄せをしたうえで、アクティブなお客さまだけを集計したところ、アクティブユニークな顧客が4,500万人とのこと。沖縄県ではすでに人口の5割を超え、東京や神奈川でも5割近くにまで上がっているそうです。

来場者数も以前は1日800人前後でしたが、なんと4,600人にまで増えたそうです。人口5万人の市で、1日4,600人です、尋常な割合ではありません。おそらく犬や猫までカウントしているはずです(冗談)。実際には、総利用者のうち市内利用者が4割(約2,000人)、市外利用者が3割、県外利用者が1割とのこと。利用者増に連れ、武雄市でTカードを持っている人の割合が41%から49%へ上がったそうです。

一般のTカードでOKなのですが、あえて!武雄図書館オリジナルデザインのカードも作れます。このデザインは、愛知万博のプロモーションを担当したグラフィックデザイナーの原研哉氏によるものです。

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特徴3は、図書館運営が、利用者視点でなされていることです。例えば、図書分類コードは図書館法に定められている50種類以上もの分類は用いず、代官山 蔦屋書店でもやっている身近な分類、生活分類を使っています。すなわち、一般の書店で持ちいられているような「旅行コーナー」「料理コーナー」「小説コーナー」等で、分けられています。下の写真は、料理部屋。料理に関する本がまとめて小部屋に集められています。

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店内には検索機がいくつか設置されており、図書館の本だけでなく、書店(販売用)の書籍やレンタルDVD・CDを検索することができます。ランキング機能もついており、今、図書館のどの分野で、どんな本が借りられているかがわかって、おもしろい。これまでの図書館にはない発想、消費者目線の使い方です。また図書館と書店、レンタル店の共通システムにより、複合店のメリットがここに出ています。
 
なお、一体化しているように見える図書館と書店の書籍の区分ですが、ディバイダーの色(白と黒)で図書館(レンタル)と、書店(セル)が分るようになっています。 
 
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館内の一番奥にある2Fの学習室は、ガラス戸で仕切られ、会話禁止・飲食持ち込み禁止です。資格試験勉強をされている方を見かけました。平日午前中に訪問したにもかかわらず、それなりの利用者がおり、週末に席数が不足するというのも納得感があります。

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私も、スターバックスラテショートサイズ340円を購入し、窓際席でいただきました。このスペースは会話自由とのことですが、やはり声のトーンを落として話されている方がほとんどでした。屋外テラスも利用可能です(屋外用ガスストーブが設置されていました)。

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利用者目線では、非常にうまくいっているように見える運営も、見方によっては以下のような反論・異論・懸念もあるようです。

・指定管理者制度導入の理由(反論:TSUTAYAのような会社は、指定管理者制度になじまない)
・指定管理者制度導入の手続きに不備(反論:根廻し不足だ。オレは聞いていない等)
・図書館サービスとその付属事業・目的外使用について(反論:公共施設に営利を持ち込むことは、けしからん)
・開館日増加・開館時間の延長と経費節減による図書館員の労働環境(反論:既存の司書15人の安定雇用は確保できるのか、賃金は保証されるのか)
・Tカード・Tポイント導入による図書館利用に関する個人情報の取扱い(反論:民間にビッグデータを渡して良いのか)
・Tポイントを付与することの行政サービスとしてのあり方(反論:特定企業への利益供与にあたるのではないか)
 
これに対し、ひとつひとつ樋渡市長が反論、もしくは建設的な提案を受け付けています。これまでの枠組みを変えていくというのは、非常に骨が折れるということを改めて感じました。利用者目線・市民目線を第一に掲げる樋渡市長を応援したいと思います。

感じたことをひとつ、いいたい。成功した事例を取り上げて、「この施設は素晴らしい」「勉強になる。参考になる」「さすが、行動力のある市長はスゴイ。ウチも見習いたい」というのは容易だし、口当たりも良い。私はそれに留まらず、当時、(一般の方が想像できない)施設のあるべき姿を、既存の常識にとらわれずに自ら考え、(一般の方がいいがちな)議論のための議論をあえてスルーし、当たり前のリスクを自らリスクテイクした市長のその姿勢から、どう学ぶかが肝心なんだと感じています。

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上は「キャットウォーク」と呼ばれる2階のせり出し廊下で、館内全景が見渡せます。なだらかに湾曲して、照明の上手さも相まって非常に美しい。実は書棚の本のすべてがホンモノではなく、美しく見せるための一部ディスプレイ用とのこと。このダミーの本が、将来的な蔵書増加に対応することになっていきます。

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