0781:2007/12/10(月) 23:27:40.76 ID:
この平日一週間を使って、第五部での空白の1年間を書こうと思う。
暇潰し程度かつ本編とはほぼ無関係となる部分だから、勘ぐり無しで純粋に楽しんで欲しい所です。
詳しくは雑談スレの方で。


本編より話はさかのぼり、木村くんが入社して1年が経った頃の話だ。
竹中も正社員として起用され、木村くんとまでは行かないまでも、そこそこ仕事が出来るようになっていた。
新たな戦力を加えた俺たちは、今日もプロジェクトに取り組む。


「以上が今回のプロジェクトの説明だ」


こりゃまた上原さんのスケジュールが厳しいな。
藤田さんとほぼ同じ量だが、力の差は大きいぞ。


「質問あるやつ居るか」
「は、は、は」


上原さんが手を出したり引っ込めたりしている。


「ないよーだな」


いや、おい。


「はい、リーダー」
「おう木村か。なんだ」
「僕は誰と仕事するんですか?」
「あ? お前はもう一人で十分だろ」
「うーん、これってVBですよね? まだ経験浅いんで、誰かつけてもらいたいんですけど」


確かにそうだ。
まだ一人でやらせるのは心許ない。俺が付こうか。



「お前は誰か希望いるのか」
「上原さんにしてもらいたいです」



えぇ!?




「あ、あ、あ、わ」






112:2007/12/10(月) 23:51:49.52 ID:
マ男の話を見ると、ブラックのブラックたる所以がよくわかるな・・・・・
ブラックにはおかしな人間が集まってくる仕組みが出来上がりすぎてる









123:2007/12/10(月) 23:59:26.73 ID:
リーダー叫んでも、ここは応接室だぞ。


「おい、マ男。上原呼んでこい」



だが断る。



「いえ、やはり社会人としての常識を教えるのは、先輩として私の」
「お前の話は聞いてない」



なんというジャイアニズムだ。



「上原呼んでこいって」



だがことわ



「呼んでこいって」



れないので呼んでくる。



「は、は、は、い、は」
「おい、上原ぁ! お前、木村に何を教えてるんだ!」



怒鳴り声が凄い。



「し、し、しご、し」
「私語じゃねぇよ、ボケ!!」
「ち、ちが、ち、し、ご、し」
「お前、いい加減にしろよ!」



そりゃあんただ。









134:2007/12/11(火) 00:10:21.40 ID:
「おい、マ男」


なんだ。



「お前何見てんだ」



しまった。



「見せ物じゃねーんだよ。とっととお前は仕事しろ」
「ですが、木村くんの」
「ですがじゃねぇ! 木村の責任は全部上原だろうが!」



それは違う。



「す、すい、すいま、す」


このパターンになるとダメだ。



「おい、木村も呼んでこい」
「木村くんですか?」
「そうだよ。当事者を呼ぶのは当たり前だろうが」



・・・まぁ確かに。
というか、そもそもで上原さんと俺を叱るのがお門違いのような気もするが・・・。
とりあえず何はともあれ、木村くんを呼ぶ俺。てか、これじゃまるでパシリだ。



「おい、木村、上原にお前何を教わったんだ」
「仕事ですが」



そういう意味じゃないよ、木村くん・・・。もう少し言葉の裏を読むんだ。
君なら出来る、上原さんを助けるんだ。








142:2007/12/11(火) 00:22:40.22 ID:
「仕事だけか?」
「うーん、他にも色々教えて貰いましたけど、何で僕を呼んだんですか?」


君は呼ばれた理由が分かってないのか。天然モノだな、こりゃ。



「お前の礼儀がなってないからだよ」
「じゃあなんで上原さんが怒られてるんですか?」



な、なんという度肝。



「上原はお前の教育係だからだろうが!!」
「す、すす、す」
「じゃあ以後、気をつけます」



じゃあ、が余計だ。言葉使いに気をつけてくれ。下手すれば火に油を注ぐことになる。
この子の中には、先輩・後輩という概念が無いように思える。人間誰しも平等が大前提に置かれているのか。




「あぁ? ならお前はもう帰っていいよ」
「それなら上原さんも良いですよね?」
「コイツはダメだよ」
「いえ、仕事について聞きたいんですが」
「藤田に聞けよ」
「その藤田さんが、上原さんに聞いてみてって言ってました」




え? おかしいな。藤田さんが自分の仕事を投げたというのか?



「あぁ? 藤田がか? わかったよ」



またもや孔明の予感がするが・・・。

全然書けてないけど、そろそろ寝ようと思う。
続きはまた明日。








220:2007/12/11(火) 22:33:11.77 ID:
こうして上原さんはリーダーの呪縛から逃れた。
さすがに藤田さんGJと言いたいところだが、どうもしっくり来ない。
藤田さんのやり方とは少し違う気がする。はて、どこが違うのか。


木村くんは、藤田さんから上原さんに聞いてみてくれ、と言われた。と言っていた。
ここがおかしい事に気付く。
藤田さんなら、自分で言いに来るはずだ。木村くんを挟むことはしないはず。



まさか木村くんが仕組んだのか? いや、まさかな。



俺はこの疑問を抱えつつ、開発室に戻った。
そして仕事開始。



「マ男さん」



しばらく経った頃に、木村くんに声をかけられた。



「ん?」
「上原さんって、なんであんなにいじめられてるんですか?」



さぁ・・・そこんとこは俺も分からん・・・。確かに何でだろうな。




「仕事もちゃんとやってるし、不平不満も漏らさないし。良い人だと思うんだけどな」



その理由なら、藤田さんも当てはまると思うが、この子は何故か嫌っている。



「ねぇ、木村くん、さっき藤田さんから上原さんにって言ってたけど」
「あぁww もちろん作り話ですよww あぁでもしないと、上原さんかわいそうでしたから」




この小僧、中々やりよるではないか







231:2007/12/11(火) 22:44:26.22 ID:
しかし、ここは褒める所ではない。
先輩の名を勝手に使った、という事になる。
いやでも、あの状況で上原さんを助ける方法はあれが最善だったような気も・・・。

いやいや、やはり注意しておくべきだ。
この子は利用できるものは全て利用してしまう所があるように見える。


「でも勝手に藤田さんの名前を出したらダメだよ。
 もしかしたら、今度は藤田さんが怒られてしまうかもしれないし」
「じゃあマ男さんは、上原さんを見放すつもりだったんですか?」


そうではないが。



「やり方を考えないとダメだよ」
「分かりました。後で藤田さんに謝っておきます」



いやいや、そうじゃない。
この子は何でもかんでも極端だな。というか、言ってる意味を理解してない所がある。

しかし、木村くんを呼んで応接室に行くまでの間に、あの発言を思いついたと言うのか。
方法は褒められたものではないが、そこそこの切れ者なのかもしれん。
あそこで藤田さん以外の名前を出していたら、余計に荒れていた可能性もある。
何よりも、顔が真顔だった。発言した瞬間は、藤田さんGJ、と思わせる凄みがあった。



どうでもいいけど、こういう後輩は使い辛い・・・。俺の立場がひどく惨めだぞ。







234:2007/12/11(火) 22:53:25.31 ID:
木村くんの機転により、難を逃れた上原さんだったが、毎日がリーダーとのイベントの上原さんだ。
何か知らんが、プリンタがぶっ壊れた時だ。
といっても、ネットワークのエラーか何かのようで、再起動させれば普通に動く類のものだったのだが



「おい、上原ぁ!!」
「は! は、は」



あまりの突然の出来事に、キョドりまくる上原さん。俺たちも何事かと視線を集める。
その視線にさらにキョどり、席を立ってユラユラ揺れる上原さん。落ち着け。



「おまえ、プリンタぶっ壊しただろ!?」
「し、し!」
「動かないんだよ、ボケが!!」



すると井出が



「動かないんだよ、大きな古時計が!」
「おい、井出」
「はい」
「大きなノッポの古時計だろ」
「そうでした」



もういいよ。



「今すぐ直せよ!」



そんな横暴な。俺は席を立ち、プリンタの方に歩いていこうとすると



「再起動させてみれば良いんじゃないの・・・」



木村くんの独り言が聞こえた。



「ちょっと良いですかね」



同時に藤田さんが動いた。









240:2007/12/11(火) 23:01:55.63 ID:
「給紙のランプが点滅してるな」


紙の残りを確認する藤田さん。その後に、電源を入れ直す。



「リーダー、印刷してもらえます?」
「あ?」



プリンタが正常に動き、いつものように印刷していく。



「直ったみたいですね。上原さん、もう大丈夫ですよ」
「あ、あ、あ、り、あ」
「えぇ、こちらこそ。では、仕事に戻りましょう」
「は、は」



うーむ、あの雰囲気であそこまで出来るものか。



「上原さん怒鳴られ損じゃないか。再起動ぐらい試してみりゃいいのに」



聞こえるぞ、木村くん。



「リーダー」
「なんだ井出」
「木村くんの独り言がパラダイスです」



あ、こいつ。







「独り言は井出さんの専門でしょ」



木村くんのこの切り返し!?





「ちょまwwwwww」










249:2007/12/11(火) 23:07:20.18 ID:
こうやって糞リーダーを甘やかすから組織が潰れる。
木村を切り込み隊長にして圧力かけないとまずい。







265:2007/12/11(火) 23:13:46.98 ID:
木村君のイメージがだんだん中学生になってきた








279:2007/12/11(火) 23:24:05.48 ID:
突然の出来事に、あの藤田さんですら目が点になっていた。
そりゃそうだろう。藤田さんは影で助けていた。こんな表立って助けたことなどないのだ。
俺も当然そのクチだったし、表立って助けることなんてしようと思ってすら無かった。
しかもリーダー相手だぞ。度肝を引っこ抜かれたかのような気分だった。



「お前自分が何言ったかわかってんのか?」
「いや、ていうか、上原さんってそんな悪いことしてますか?」
「俺の質問に答えろ、下っ端!!」



怒声が響き渡る。戦慄。戦慄が走りまくる。
若い。こんな事、世間を知らない年齢でなければ出来るはずもない。



「笑うのに許可が居るって、それこそ笑っちゃうんですけど」



フン、という言い方+素振りをする木村くん。おぉ、そなたが勇者か。



「ぶwwwwwwwwwwwwww」



井出が吹き出した。
見る見る内に顔が赤くなっていくリーダー。



「木村くん、君はいい加減にしなさい」



藤田さんが立ち上がった。
道徳的には木村くんに分があるが、状況を見れば藤田さんの判断が正しい。




「藤田さんも上原さんがかわいそうだって思わないんですか? 
 会社で笑うこともできないって奴隷じゃないんだから、
 何か言うのが普通だと思うんですけど」





違う、そういう意味で藤田さんは言ったんじゃない。
君の安否を心配してるんだぞ。




「まぁとりあえず落ち着きたまえ、君たち。竹中くんのパソコンを見てみろよ」



ただのザクだろ・・・。



「木村、お前誰に物言ってんのか分かってんのか!」
「リーダー、後で私の方から話をしておきます」
「リーダー、俺のおにぎりせんべいあげます。食べかけだけど」











294:2007/12/11(火) 23:32:19.03 ID:
二十歳くらいなら、そういった素直な心ってのは大事じゃない?
さすがに三十路いってもそのままだと、まずいけど
シャアいわく、これが若さか・・・って言ってたし






301:2007/12/11(火) 23:36:57.82 ID:
「おい、藤田。なんでお前が話す必要があるんだ、俺が直々に説教してやる」
「今の木村くんと話をしても、拉致があかないと思います。第三者の立場から、私が話をします」



うーむ、上手い。そしておにぎりせんべいを食べるリーダー。



「せんべい美味いっすか、リーダーww」
「これ全部もらっていいか?」
「いいっすよwwww」



井出&藤田さんのフォローで何とか場は収まったが、木村くんは納得の行かない顔だ。
渦中の上原さんに至っては、うつむいて身体を震わせている。怯えているのか。
しかし、木村くんは一体何を考えているのか。
上原さんを見下していたかのように見えたが、今は守っているように見える。
というか、自分が悪だと思ったものに勇敢に立ち向かいすぎだ。
正義感が強すぎるのか、類まれなる自己中なのか。
どうでもいいけど、木村くんのキャラが強すぎて竹中が全く目立たん。
彼も相当なアレだったが、このメンツの中では影のうす~いキャラになってしまうのだ・・・。



そして昼休憩、木村くんは藤田さんと飯を食いに行ってしまった。
俺は普通にコンビニ弁当食べながら仕事。








316:2007/12/11(火) 23:49:16.00 ID:
さっきの事が気になって、中々仕事に集中できん。
藤田さんが二人で話すということは、相当なもんだったのだろう。
木村くんも木村くんで、よく了承したもんだ。

そんなことを考えていると、二人が帰ってきた。
木村くんは無表情、藤田さんはやれやれ、といった感じだ。
気になるが、俺は無関係なので関わらないことにする。

俺の予想では、木村くんは藤田さんを論破するつもりだったのだろう。
完勝、というわけではないが、6:4辺りでやり込めたのではないかと思う。
もちろん屁理屈などを使ってだが。


しかし、藤田さんと木村くんでは相性が悪いと見える。
藤田さんは大人な分だけ、引き際は心得ているが、逆にそれでは木村くんを調子付かす事になるのではないか。
まだ片鱗しか見せてないが、木村くんも中々の孔明ぶりだ。
いや、孔明は藤田さんなので、周瑜ということにする。

切れ者同士、お互いが相容れることはないのか。
藤田さんはどちらでも良さそうで、木村くんが断固拒否という形だが・・・。

しかし未だに見えてこない謎がある。


何故、木村くんは上原さんを庇うのだろうか・・・。








339:2007/12/12(水) 00:09:34.36 ID:
これ以降も、やはり上原さんは当然のようにいじめられた。
木村くんは藤田さんに何を言われたのかは分からないが、派手な行動を控えるようになっていた。
まぁそれでも、井出や藤田さん、はては俺を使って阻止に出ていたが。
しかし、何故こうも上原防衛に固執するのか。何か理由があるのかもしれない。聞いてみるか。



「木村くん、なんで上原さんをあんなに庇うの?」
「大した理由じゃないですよ」



む。



「でも、あんな行動は中々起こせないよ」
「マ男さんも藤田さんも、自分の事ばかり考えすぎなんじゃないですか?」



まぁそうかもしれないが。




「正義感だけで動いてるってこと?」
「いや、そういうわけでもないですけど」



うーむ。言いたくないのかな。それならば、俺も深くは追求すまい。




「僕にも色々あるんですよ」



ここから、木村くんが上原さんを庇う理由を話し始める。

今日はここまで! というわけ寝ます。また明日。










423:2007/12/12(水) 13:44:27.91 ID:
あのな、会社内では正義は必ず勝つという方程式は成り立たないものなのだよ。
うちの会社だってさ、社長がさ……(´;ω;`)ウッ






461:2007/12/12(水) 22:59:17.25 ID:
木村くんが上原さんを庇う理由、果たしてそれはどんなものなのか。
藤田さんと同じように、何か過去に起因するものがあるのだろうか。
しかし、それにしてはやり方が少々過激だ。



「色々あるって?」
「うーん、まぁ確かに道徳的な部分もありますよ。でも、僕はもっと先のことを見据えてるんです」



先の事? 先の事を考えるなら、リーダーとはあまり反発しない方が良いように思える。
味方にもならないが、敵にもならない。中立的な立場が一番安定しているはずだ。
打算的な考えになってしまうが、あの人とは極力関わらない。これに限るはず。
先の事を考えているとは、とてもじゃないが見えない。



「先の事って?」
「まぁマ男さんだから話しますけど」



しかし木村くんのことだ。これまでも俺の度肝を何度も引っこ抜いてきたのだ。
今回も、何か俺の手の届かない範囲で物事を考えているのかもしれん。







478:2007/12/12(水) 23:09:45.73 ID:
「やっぱり、誰だって出世していくわけじゃないですか」



一般的には、だが。この会社の話だったら、そんな事は正直わからん・・・。




「僕だって今はまだ一番下だけど、いずれ藤田さんを追い越して、リーダーになるんですよ」



この小僧、またもや大言を



「そうなった時、一番使いやすそうな人って上原さんだと思いませんか?」





あ、開いた口が塞がらん。
まさかそんな理由で上原さんを助けてたのか?
俺はともかく(眼中になさそうだが)藤田さんを追い越せるとマジで思ってるのか?
しかも、それはリーダーになるという前提の元での話だろう。

類まれなる大物なのか、ただのバカなのか?

どちらにしろ、またもや俺は度肝を抜かれた。
この子の考えている事は、俺の一歩も二歩も先に進んでいる。




「逆に誰が一番使いにくいかって言うと、間違いなくリーダーでしょ」




全く現実味がない・・・とまでは言わないが、君がそれを考えるのはまだ早い。
リーダーという仕事は、君が思っているほど楽じゃないんだぞ・・・。










482:2007/12/12(水) 23:12:28.11 ID:
木村…新入りがリーダーを狙うとは、少なくとも5年はいてから戯け!






494:2007/12/12(水) 23:20:58.89 ID:
「だから、今のうちに手を打っておくんですよ。自分の立場が危ういと思った時には、もう遅いww」



笑えないから。君の話は度が過ぎている。
しかし、この子は本当に印象が変わりすぎだ。
よく聞く話で『初対面では全然喋らなかったのに、仲良くなったら良く喋る人だった』というのがあるが
彼はこんなレベルの話ではない。

よくこんな子の教育係が務まったものだ。我ながら感心する。



「それに上原さんって優しいですよ。
 どんなに忙しくても、間違った所は丁寧にコメントまでつけてくれますから」



あの吃音からは想像もできん。



「でも木村くん、リーダーとは大きな目標を持ったね・・・」



目標、という単語で抑えにいってみる。



「目標じゃないですよ。通過点です」



こいつ[切腹]だろう。



「でも、やっぱ大変だと思うよ・・・リーダーは・・・」



俺も経験した。いや、4割程度だが。それでも俺は必死だった。
今でもそれは変わらないだろう。




「大変なのは当たり前ですよ。まぁ、とにかく上原さんは味方にしておいて損はなさそうですから」




この子と話していると、俺が小物に見えてくるな。








496:2007/12/12(水) 23:22:27.02 ID:
[切腹]wwwwwwwwww







505:2007/12/12(水) 23:26:48.21 ID:
木村こえええぇぇぇぇぇ










512:2007/12/12(水) 23:31:40.98 ID:
こうして明らかにされた上原さん防衛の理由。
木村くんは、上辺からは想像も出来ない野心を秘めていた。しかも、実現すると信じて疑っていないから凄い。色んな意味で。
そういえば最近、藤田さんと木村くんの話をしていなかったな。
機会があれば話をしてみたいが。


そんなある日の事だ。





「き、き、き、む、く、き」




上原さんが、何と自らコンタクトを取ってきた。
相手はなんと木村くんだ。何だ、何が起こった。



「ちょwwwwwwww何これwwwwwwwwww」




井出が爆笑する。




「上原さんじゃないですかww どうしたんですか?」




ちなみにリーダーは外に出ていて天敵が居ない。




「明日は天変地異だ! 太陽系が吹き飛ぶ!!」






黙れ、落ち着け。





「こ、こ、こ、これ、れ、こ」




木村くんに何かを渡そうとしている。なんだ?








514:2007/12/12(水) 23:32:50.95 ID:
井出自重wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww








527:2007/12/12(水) 23:43:24.26 ID:
「あ、くれるんですか?」


爽やかな笑顔で対応する木村くん。
何だ、何を貰った。井出じゃないが、物凄く気になる。



「ちょwwwwww木村くんwwwwww何貰ったの!?」



顔を物凄く近づける井出。たぶん木村くんの頬に鼻息当たってる。




「なんだこれ」




俺もついでに覗き込む。
何かの瓶のようだ。しかし、何なのかまでは分からない。




「ちょwwwwwwww木村くんwwwwwwwwww」



井出が爆笑しだした。何だ、何なんだ。




「ソルマック胃腸液wwwwww本人が一番危ないだろってwwwwwwww」



ていうか、それ二日酔いとかの薬だろう、確か。




「い、い、い」
「ぶわははwwwwwwwwww胃腸液wwwwwwwwwwwwwwww」



笑いすぎだ、落ち着け。



「ありがとうございます、上原さんww」
「あ、あ、あ」




シュール過ぎて何とも言えんこの光景。








532:2007/12/12(水) 23:45:17.02 ID:
上原さん、優しいなww







552:2007/12/12(水) 23:58:55.63 ID:
何を思ってソルマックを渡したのだ、上原さん。
未だに俺はその理由が分かりません。
木村くんはそんな疑問を抱く雰囲気すら無く、爽やかな笑顔で受け取っていた。
本当に上原さんを抱きこむつもりなのか。
というか、すでに抱き込みは成功しているのではないか。
上原さんは今まで、俺はともかく、藤田さんにもあんな素振りは見せなかった。

木村くんが初だと言っていいだろう。

しかし何故に胃腸液なのだ。




「上原さんwwwwwwww栄養ドリンクあげればいいじゃんwwwwww机に散らばってるwwwwwwww」




とりあえずお前は落ち着け。上原さんの栄養ドリンクは生命線だ。




「これ、お酒飲む時に使わせて貰いますねww」
「あ、はは、は」




上原さんが満足そうな表情で自分の席に戻っていく。
木村くんは木村くんで、早速ソルマックを机の隅に放置だ。




「胃腸液wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」



こいつは放置でいい。




どうも何かがおかしい。
会社の人間関係バランスが、一気に変動しつつあるぞ。








565:2007/12/13(木) 00:12:44.11 ID:
木村くんが来てから、人間関係図がくっきりと区分けされつつある。
今までは派閥のようなものなど無かったのだ。
いや、あったとしてもそれは見えていなかった。


所が今はどうだ・・・。


リーダー党
リーダー・井出(上原)

藤田党
藤田・俺

木村党
木村・上原



くっきりと区分けされつつある。
もっとも、今までも区分けはされてはいたが、藤田党もリーダー党の傘下的な扱いだったのだ。
所が、木村くんがやってきて、新たな勢力がやってきた。

そうなると、傘下ではなく、中立という事になる。

つまりは三大勢力だ。
しかし、良くも悪くもこの会社には、周囲に影響を与える人物が多い。
そしてそのような人物は、トップを目指し、妥協を許さない。木村くんとリーダーの争いは激化する可能性がある。

だが、木村くんは会話の運びがリーダー好みなのだ。
怒られる事も多いが、気に入られる事も多い。


果たしてどうなるのだ・・・。



こうして上原さんは、絶対的な味方を一人手に入れることができた。
いや、正確には木村くんが上原さんを手に入れたのか・・・。
野心の底を見せない木村くん。横暴の極みのリーダー。平成の孔明の藤田。
この多大な影響力を持つ3人の中で、果たして誰がトップに君臨するのか・・・。





続きは、本編の第五部・最終章『もう俺は限界かもしれない』後編にて。












573:2007/12/13(木) 00:15:52.06 ID:
竹中はすでに木村によって粛清されてるよwwwwww







578:2007/12/13(木) 00:17:51.11 ID:
いかん、眠い。
金曜まで続かせる予定だったが、意外と早く終わってしまったな。
というか、本編に関係ないとか言ったけど、なんだかんだで繋げてしまったわ。まぁ、別に良いか。
前編で書ききれなかった部分を書いたと思えば。

あと竹中くんはリーダー党です。井出さんとセットという意識が強くて忘れてました。ごめんね、竹中くん。
というわけでおやすみ! 続きは週末。






583:2007/12/13(木) 00:19:41.77 ID:
これぞ平成の孔明、藤田が考え出した

「天下三分の計」である









718:2007/12/14(金) 22:39:40.99 ID:
ちょwwwwwwwwブライト艦長wwwwwwww






730:2007/12/14(金) 22:47:09.26 ID:
木村くんから飯の誘いなんて珍しいな。



「あぁ、いいよ」



しかし、何の話をするのだろうか? 
仕事では特に問題無さそうだし、人間関係の事だろうか?
いや、もう最近の彼は藤田さん以外は歯牙にもかけてない様子だが。




「お、おは、お、おおおお、は」
「あ、上原さん! おはようございます!」



木村くんが笑顔で挨拶する。
上原さんはそれを見て、軽い足取りになった。



「おはよう」



同時にリーダーがやってきた。上原さんがビクリとなる。



「おい、上原ぁ!!」



また始まった。




「おまえ、挨拶ぐらいしろよ、なぁ? なめてんの?」
「リーダー、井出さんが呼んでますよ」



早速絡むリーダーに、木村くんが仕掛けた。




「あ? なんだ井出」
「なんだかんだと言われたら、答えてあげるが世の情け! 呼んでないすよ、リーダー」
「なんだよ。あーあ、今日も仕事だよ、めんどくせー」







734:2007/12/14(金) 22:49:24.48 ID:
なんか木村が中心になりつつあるなww








738:2007/12/14(金) 22:58:03.97 ID:
リーダーのぼやきには目もくれず、俺は仕事モードに入っていた。
俺も3年目となり、中堅に差しかかろうとしているのだ。
しかし、すぐ後ろには木村くんがくっ付いている。

追い抜かれる、とは限らないが、やはり後輩に抜かれるというのは、先輩からしてみればイヤなものだ。
その昔、俺が廃人となった時、藤田さんは俺を原石と言ってくれた。
今は少しでも光が出てきただろうか。


「マ男くん、ちょっと良いかな」


おっと、藤田さんだ。


「今日、お昼空いてる?」



う・・・実は木村くんと約束があるのですが・・・。



「ちょっとお昼は・・・」
「ん? そうか。じゃあ、また次の機会にしようか」
「はい、どうも申し訳ありません」
「気にしないで良いよ」



そして仕事再開。




「おい、マ男、藤田」
「はい」



同時にする返事をする俺と藤田さん。



「お前らにちょっと話がある。応接室に来い」




む・・・。何か今日は話が多いな。









740:2007/12/14(金) 22:59:17.04 ID:
なんだなんだなんだなんだ気になるwwwwwwwwww








746:2007/12/14(金) 23:12:53.15 ID:
木村「計画どおりっ」








751:2007/12/14(金) 23:17:41.13 ID:
「最近、特に仕事がキツくてな。俺一人じゃめんどくさくてかなわん。
 木村にちと荷物を担がせようと思ってな」




ダメだこいつ・・・。目先のことしか頭に無いぞ・・・。



「それだったら、マ男くんに任せれば良いと思いますけどね。すでに前任の経験がありますし」



リーダーが、はぁ? みたいな顔をしている。



「コイツはリーダー向いてねぇよ。人の上に立つような人間じゃねぇ」



中卒だから、という言葉が見え隠れしている。



「そうですかね。私は、今の開発室の中じゃ一番向いていると思いますが」



な、何を言ってるんですか。
俺なんかがリーダーに向いてるわけないでしょ・・・。
てか、一番向いてるのはあなたですよ、藤田さん!



「あぁ?」
「もちろん、リーダーを除いて、ですよ」



ナイス自己フォローだ。



「俺は当たり前だ」
「ですが、木村くんですか。私はあまり賛成はできませんが・・・」



む、そうなのか。それは少し意外だな。



「おい、マ男。おまえ、木村の教育係りしてただろ。お前はどうなんだ」



どうなんだって言っても・・・。




「私は藤田さんが一番向いてると思いますよ」




俺の中にはこれしか無いのだ。









754:2007/12/14(金) 23:25:36.78 ID:
いよいよリーダーやらない理由明かしが迫ってきたな





756:2007/12/14(金) 23:27:20.68 ID:
「あぁ!?」


しまった。



「い、いえ、もちろんリーダーを除いての話ですよ」
「だろうが」




あ、危ない。
藤田さんが先にこれを使っていなかったら、絶対面倒なことになっていたぞ。




「うーん、私はリーダーには向いてないよ」



謙遜しているのか。



「私は、人に表立って指示するのは得意じゃないからね。
 まぁそれを抜きにしたとしても、私がリーダーになると色々と弊害が出てくると思うよ」
「マ男、お前ちゃんと考えて物言ってんのか? 藤田は一番仕事が出来るだろうが」



それはもちろん分かっているが。




「そんな奴が外に出たりなんやかんやしてみろ、そのシワ寄せはどうすんだよ」



う、うーむ。なるほど、そういう考え方も出来るのか・・・。確かに・・・。
でも、それなら木村くんだって一緒じゃないのか?



「木村くんには主にどういった仕事をさせるつもりなんです?」
「外出るのは俺がやるから、基本的に管理だ。
 まぁ、最初のうちは外にも連れて行くつもりだが」




管理だったら、藤田さんの方が良いんじゃないのか・・・。




「どうですかね・・・。私はまださせない方が良いかと思いますが」
「まぁ見とけよ。俺が手足のように使ってやるからww」




そして出て行くリーダー。結局、俺たちは何のために呼ばれたのだ。







758:2007/12/14(金) 23:28:07.10 ID:
リーダー死亡フラグたっとる






759:2007/12/14(金) 23:29:08.70 ID:
流石リーダークオリティwwwwwwww






772:2007/12/14(金) 23:38:44.84 ID:
「藤田さん、どうなんですかね・・・。木村くんにやらせると言うのは・・・」
「危ないだろうね。彼の上昇志向は凄いだろう」



知っていたのか。




「えぇ・・・。以前、二人で話をしましたけど、リーダーになるのを目標としてるみたいです」
「取って代わられるかもしれないな」



その通りだ。そして、そうなると俺たちはそれに適応せざるを得ない。
リーダーと木村くんでは性格が違いすぎる。
彼がリーダーになったら、どうなるかは分からないが、あまり良い結果になるとは思えない。




「木村くんの最近の調子はどうなの?」
「どうというか、不調を今まで見たことがありません。精神的にも強いと思います」
「凄い子だな。普通、1年目か2年目で挫折の一つや二つは経験するものなんだけど」




大器。それを思わせる。




「リーダー、木村くんを使うでしょうね」
「だろうね。まぁあの人は権力ごとに関しては敏感だから、危ないと思ったらすぐに何らかの対策は取りそうだけど」




だけど、木村くんはそれを上回る潜在能力を秘めている。




「今日、実は昼に木村くんとご飯食べる約束なんですが」
「うん」
「この件について話をしてみた方が良いですかね」
「誘ったのはどっち?」
「木村くんです」
「なら、先に彼に喋らせてみると良い。
 彼から話があるってことは、出世とかそこらへんの話だと私は思うから」




了解しました。
そして昼休み。








804:2007/12/15(土) 00:00:51.64 ID:
木村くんはやる気だ。そして、それしか見えていない。
今の立場で満足するなど、これっぽちも思っていないだろう。

確かに今の立場で収まる器ではないと思うが・・・。

しかし、素直に賛成が出来ない。
木村くんは確かに仕事も出来るし、今まで与えた課題は全てこなしてきた。
だが、まだ辛酸をなめていない。挫折を経験していない。

これが俺の中で引っかかる。



「それに、マ男さんも分かってるじゃないですか。
 今まで僕は失敗してないし、これからもしませんよ」



凄い自信だ。しかし、その自信を裏付ける実力があるのも確かだ。
どうするべきか。リーダーの話をするべきか。

すれば、確実にここで一気に調子付くだろう。
仮にしなければどうなるか。
リーダーから直接、話を聞くことになる。そうなると、俺はもう口を挟めない。
ここで話した所で、俺の忠告を聞くとはとても思えないが、木村くんの行動は結果的には変わらないのだ。


よし、今言う。



「実はさっき応接室で、リーダーと話をしたんだけど」
「あぁ、藤田さんと三人でのやつです?」
「そう。で、その時にリーダーが木村くんを補佐にしたいって言い出して」


「・・・へぇ」








瞬間、彼は悪魔の笑みを浮かべていた。








809:2007/12/15(土) 00:03:21.74 ID:
悪魔の笑みwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww










822:2007/12/15(土) 00:10:41.71 ID:
・・・まずったか?



「私と藤田さんは意見を求められたんだけど、まぁどちらとも言えずって事に」



嘘をついてしまった。というか、つかざるを得なかった。
彼の気迫に圧されてしまったのだ。




「どちらとも言えずってことは、少なくとも賛成はしてないってことですよね」



というか、賛成していない。
今の君では、まだまだ心配事が多い。実力だけでは務まらないのだ。




「まぁ別に良いですけど。力があると妬まれるのは常ですから」



何を言ってるんだ・・・。




「そうですか、僕がリーダー補佐ですか。藤田さんは社員のままですよね」



肩書きで争っているわけじゃないんだよ、木村くん・・・。
早く抑えないと、マジに暴走して大変なことになってしまうぞ。




「でも木村くん、すぐにリーダーになろうって考えるより、まずは経験を積んで」
「リーダー経験のないマ男さんから何を言われても、僕は何も感じませんよ。
 僕は、僕の考えがありますから。それに、経験ならリーダーから教われば良いじゃないですか」




コイツ、調子に乗りすぎだ。
人から教わって経験になるなら、今頃人類は大進化を遂げているだろう。
自らが経験しないと分からない部分だって多いんだ。




「そうか、やっとリーダーか」



リーダー補佐な。まだ気が早い。



「いつ話が来ますかね」
「分からないね。昼からじゃないかな」
「そうですか、楽しみだな」




口元を緩めながら、木村くんは呟いていた。






868:2007/12/15(土) 00:27:19.01 ID:
木村はムッツリスケベタイプ








869:2007/12/15(土) 00:28:03.01 ID:
「お前、リーダーに興味あるか?」



この開発室から、誰かが消える。間違いない。




「あります」




目が笑っていない。そして、気力が顔から溢れ出ている。
なんという後輩だ。俺の手の中に居たのが信じられん。




「俺の仕事を手伝って欲しいんだがな」
「ホントですか。ぜひやらせてください、僕で良ければ、好きなように使ってください」




普通なら、謙虚で好感の持てるであろうこのセリフも、彼の口から発せられた瞬間に、悪魔の囁きとなってしまう。
リーダーは気付いていないのか。この異様な空気に。あの異様な笑顔に。
お前は自分の立場が非常に危うい所まで来ているんだぞ、気付け。





「おぉ、そうかそうかww よし、次のプロジェクトでお前は俺の補佐しろww」
「はい!」




終了、詰み。おつかれです。



この開発室から、一人の人物が消えようとしていた。









889:2007/12/15(土) 00:32:27.44 ID:
てか木村くんこのままでは行き詰るの目に見えてるぞ。
作業がいくら出来ても「上司」にはなれん・・・。








901:2007/12/15(土) 00:36:03.48 ID:
こうして、木村くんはリーダー補佐となった。
それが決まってからというもの、木村くんはさらに力を発揮し
スケジュールを1日進みで仕事をこなすようになってしまった。
一体、どこまで伸びるのか。限界は無いのか。

恐ろしい後輩を持ってしまった俺だが、それ以上に次のプロジェクトが心配だ・・・。




そしてついにやってきた。
次のプロジェクト・・・という触れ込みだったが、2つか3つこなした後だ。



夏真っ盛りも過ぎ去り、残暑が厳しいそんなある日の出来事だ。





「以上が今回のプロジェクトの説明だ」




今回のプロジェクトは、今までの中でもかなりの規模を誇る内容だった。
いや、正確には規模ではなく、納期の方だ。
説明だけしか聞いてないため、よくは知らないが製造が平均で2日に一つというペースだ・・・。

しかもランクA~Sと来てる。



この時点ですでにデスマフラグが立ってるぞ・・・。







915:2007/12/15(土) 00:48:12.70 ID:
そしてまさかの会社倒産!?








916:2007/12/15(土) 00:48:16.41 ID:
「まぁ見りゃ分かると思うが、はっきり言って今回は厳しい。史上初かもな」



おいおい・・・。
スケジュールを見てみる。とりあえず自分のだ。
うんたら作成画面(1~4)、こうたら自動変更(OL/バッチ)・・・
これキツくないか? 
いや、元々キツいけど、どう見たって泊り込みしないとこなせる内容じゃないぞ。




「今回、上原さんのスケジュールあめぇwwwwwwwwww」




井出が吹き出した。他人の心配じゃなくて、自分の心配をした方が良い。
お前はマジに死亡フラグが立ってる。




「あ、あ、あああ」
「俺はもっと引けって言ったんだがな。木村に何か考えがあるそーだ」




不満そうなリーダーだが、逆に木村くんはそれを押し通したのか。




「ちなみに、製造は二日単位がほとんどだが、修正や見直しで1週間ぐらい空きを取ってる。
 それも一応考慮に入れておけよ」




後々に修正が入る可能性が高いということだ。
デスマになる要因を全て含んでいるぞ・・・。なんということだ。




「何か質問ある奴」
「良いですかね」



藤田さんだ。








917:2007/12/15(土) 00:49:21.72 ID:
藤田さんキター





934:2007/12/15(土) 00:56:35.52 ID:
「このスケジュール、無理がありすぎて成功の見込みが
 感じられないのですが、その辺についてはどうなんですか?
 何も考えなしでこの仕事を請けるというのは、少し理解できないんですが」
「出来ると思ったから、仕事を請けたんですよ」


木村くんが言い返す。藤田さんがキッと見返した。



「根拠は?」
「僕の判断です」
「答えになっていない。このスケジュールでは無理がありすぎる」
「おい、藤田。請けたもんはしょうがねーだろうが。文句抜かすな」



そういう意味で言ってるのではない。
木村くんは、今後間違いなくリーダーとなり、立場を確立するはずだ。
そうなった場合、今のようなスケジュールを許してしまうと、みんなが潰れてしまう。
先を見越しての藤田さんの発言なのだ。

目先のことだけで判断をしていない。





「今回はしょうがないでしょう。ですが、今後もこれが続くようなら、辞める人も出てきますよ」




井出や竹中のことだ。






「だったら、その人はそれまでだったって事ですよ」




なんだコイツは。まるで話にならないぞ。






939:2007/12/15(土) 00:58:26.46 ID:
そういって木村はこの会社を潰す気か






19:2007/12/15(土) 01:11:19.92 ID:
藤田さんが小さくため息をついた。
話にならない。自分が絶対。それ以外は眼中に無い。木村くんは完全独裁者タイプだ。



「木村くん、君がこの開発室の戦力をどう分析しているのかは知らないが
 みんながみんな、君と同じように出来ると思ったら大間違いだ。
 人には人それぞれの適正、ペースがある。それに沿って物事を考えないとダメだろう」
「僕だけが契約の話を進めたのではありません、リーダーも一緒です」




ここで責任転嫁か。さすがに俺もイライラしてきた。
リーダーは沈黙している。気圧されているのか、あのリーダーが。



「今、私が話してるのは君だ。リーダーじゃない。君が答えなさい。
 このスケジュール、私は無理ではない。だが、それでも厳しいよ。
 それなのに、私の後輩であるマ男くんにも同じように引いてるだろう。
 ちゃんとリーダーから戦力分析を聞いたのか?」



藤田さんが語気を荒げた。場の空気が一瞬にして凍りつく。



「だったら、今すぐこの契約を捨てろと?」
「そういう意味ではない。この仕事はもうこなすしかないだろう。
 契約を結んでしまった以上、裏切ることは許されない。
 私が言ってるのは今後だ。君の事だ、この先も補佐に回るつもりなんだろう」



そしてリーダーになる。
藤田さんはこの部分を飲み込んだようだ。
現リーダーが居るのだ。面倒な事になると踏んだのだろう。



「今のスケジュールを許してしまえば、今後もそれを許すことになる。だからこうやって忠告している」
「このスケジュールをこなせないなら、その人は必要無いですよ。
 出来る人だけを残す。無駄を省く。そうすれば、より良い態勢が作れるじゃないですか」






何を言っているんだ・・・。

こいつはやばい。やば過ぎる。






藤田さん、頼む・・・! もうあなたしか居ない!










22:2007/12/15(土) 01:13:29.01 ID:
会社経営考えるなら社長にでもなれって話だわな









58:2007/12/15(土) 01:21:39.39 ID:
藤田さんが目を見開いた。怒っている。
だが、感情だけで攻めようとはしていない。理性を保っているようだ。
一方の俺は、正直言ってキレる寸前だ。



「君は勘違いしている。人は物じゃないんだぞ。
 君は何様のつもりかは知らないが、君は一人の社員だ。
 経験年数も2年と、まだ一番浅い。
 確かに君は実力もあるし、課題は全てこなす所か、早く終わらせている。
 だが、今この場に居る人間は全員、私たちの仲間なんだぞ。
 それを必要無いなどと切り捨てるのが許されると思ってるのか」
「藤田さんの言いたいことが分からないんですが。
 僕は無駄を省くと言ったんですよ。出来ない人が必要なんですか?」



ふざけるのも大概にしろよ、木村。



「君の中での認識は、出来る・出来ないの二通りしかないのか? 人には適正がある。
 一人でやる仕事、外に出向く仕事、物を教える仕事
 それぞれを見極めて、使いこなすのが上の人間の役目だろう」
「その前に、不必要なものを取り除く必要があると僕は言ってるんですよ」








「木村、いい加減にしろよ!」



俺は叫んでいた。












89:2007/12/15(土) 01:27:14.54 ID:
どうかみなさん
時々でいいから
竹中の事を思い出してください









101:2007/12/15(土) 01:29:33.97 ID:
「マ男くんがキレたぞー! 社長だー! 逃げろー!」


井出がわめく。俺はオールスルーで木村の顔を睨みつけた。



「なんですか、マ男さん」
「なんですかじゃないだろう。今のお前がリーダーなんて出来るわけがない」
「あなたに言われたくないですね。三年も勤めてずっと下っ端なんでしょ」



歯を食いしばる。今までの人生で、ここまで頭に来たことがあるか。
いや、ない。




「下っ端だから、意見しちゃいけないのか」



思うように考えていることが言葉に出ない。木村のあの冷静な顔を見ろ。


何こいつキレてんの? バカじゃねww 


というのが読み取れる。落ち着け、俺。





「木村くん、マ男くんはリーダーの経験があるよ」




藤田さんだ。



「しかも補佐じゃない。リーダーという肩書きを持ったことがある」




木村の顔が、歪んでいく。







112:2007/12/15(土) 01:30:48.23 ID:
やっぱり藤田さんになら抱かれてもいい








120:2007/12/15(土) 01:31:19.50 ID:
ずっとマ男のターン!






161:2007/12/15(土) 01:39:32.15 ID:
「藤田さんじゃなかったんですか」
「私はリーダーの経験などない。これからもするつもりはない」
「マ男さんがリーダー経験者だったんですか」
「はっきり言う。『君なんかより』マ男くんの方がずっとリーダーに向いている」




俺は興奮しすぎて、何か泣きそうになっていた。
なんでだろうね。




「君は自分の視点でしか物事を考えられないだろう。
 マ男くんはそうじゃない。きっと過去に辛い経験をしたのだろう。
 挫折も味わってきたに違いない。
 それらが糧となって、人を思いやって、穏便に物事を進ませていく力を持ってる。
 所が君はどうだ? 
 こんな無茶なスケジュールを引いて、くだらない自論を展開して。物事を広く見た方が良い」



俺は唇を震わせて、二人のやり取りを聞いていることしか出来なかった。
木村くんがチラチラと俺を見てくる。



「でも、僕の方が」
「君の方が確かに持ってる力は上だろう。だが、それだけだ。それだけしかない。
 君はまだ学んでないことが多すぎる。
 このリーダー補佐の立場で、色んなことを学ばないと、まだまだ上には立てないよ」




木村くんが黙り込んだ。




藤田さん、あなたは本当に・・・本当に凄い人だ・・・。










169:2007/12/15(土) 01:40:57.23 ID:
とりあえず藤田さんに尻を捧げる権利の予約しときますね







241:2007/12/15(土) 01:50:59.10 ID:
「国会のようだ」



井出が呟いた。しかし空気は変わらない。



「悲しいけどこれ・・・」



竹中が呟くが、最後まで言えなかったようだ。まだまだ修行が足りていない。



「そうですか、マ男さんがリーダー経験者でしたか」



・・・。




「二週間で、リーダーでしたか」



木村くんは、呪文のように繰り返していた。
よほどショックだったのか。やはり、俺は相当見下されていたらしい。



「語気を荒げてしまってすまないね。今の君には、これぐらい言わないと聞き入れないだろうから」
「・・・」



木村くんが不快そうな表情を浮かべる。



「私もまだまだ子供のようだ。感情を抑える事ができなかったよ。
 まぁ、もう今回のスケジュールは仕方がない。みんなで力を合わせてやり遂げようか」
「お、おう。そうだぞ、おまえら。思いやりと穏便さでやってくんだぞ!」
「リーダーが言うと説得力ねぇwwwwww」
「おい井出」
「あ、はい」
「お前ちょっと残れ」
「そんなぁ」




笑いに包まれる室内。
だが、木村くんだけは笑っていなかった。









256:2007/12/15(土) 01:52:40.99 ID:
これマ男刺されるんじゃね







264:2007/12/15(土) 01:53:37.89 ID:
リーダーが場を取り繕うとか以前では信じられんなwwwwww







303:2007/12/15(土) 02:00:20.61 ID:
そしてプロジェクトが始まった。
俺と木村くんの仲はすっかり冷え込んでしまい、あれからは一言も喋っていなかった。
しかし、今はそんな事はどうでもいいのだ(よくないが
とにかく今回はスケジュールが厳しい。
はっきり言って、休憩時間など使っていると即響くというような状況なのだ。




「僕の方ができるんだ」



時折、木村くんの独り言が聞こえてくる。
ちなみに、スケジュールは木村くんが一番厳しい。実力面での話だが。
しかしそれでも、彼はオンスケだった。
やはり言うだけの実力は備えているのだ。だが、足りないものが多い。
プロジェクトに入る前、俺が危惧していたことが今回、見事に的中した。
早めにでもいいから、藤田さんに相談しておくべきだったか・・・。
そんなこんなで、俺は必死に仕事をこなしていた。


このプロジェクトはホントにキツくて、人間関係の軋轢に加え
肉体疲労が重なり、結構マジでやばいことになっていた。


週2~3は会社に泊まり込みだ。上原さんに至っては








 












「・・・・すぴー」

寝ていた。











311:2007/12/15(土) 02:01:28.33 ID:
上原さんかわいいwwwwwwwwww













329:2007/12/15(土) 02:03:44.59 ID:
ここで木村と上原の精神チェンジwwwwww







346:2007/12/15(土) 02:07:35.62 ID:
「おい、上原」


リーダーも疲労の極みなのか、言葉に力が無い。



「すぅー・・・・すぅー・・・」
「おい」



リーダーの顔が歪んでいく。



「上原さん、起きてください」



木村くんだ。
その瞬間、ハッとしてマウスをカチカチとクリックしまくる。キーボードも打ちまくる。




遅いですから、上原さん。



「寝んじゃねーよ、ボケが」



リーダーはもう相手にもしたくないのだろう。
その気持ちはよくわかる。
はっきり言って、他人に関与したくない。極限状態に達しようとしていた。

俺は俺で、連日寝てないせいで、ブラインドタッチが全く出来なくなったり
動悸が起きたりと身体的な障害も現れ始めていた。







そして木村くんとの軋轢。そろそろ限界だぞ・・・。





そんな時、事件は起きた。









372:2007/12/15(土) 02:11:35.82 ID:
職場ってさ・・・仕事変わっても続けられるけど人間変わったら辞める事あるよね
それぐらい人間関係って大事だと思う








383:2007/12/15(土) 02:12:48.92 ID:
もし藤田さんが過労でダウンとかなら大事件だな






379:2007/12/15(土) 02:12:38.38 ID:
俺はもうとにかく睡眠を貪りたかった。
3時間で良い。睡眠を取りたい。
この時、俺は飯も食わず、仕事に没頭していた。
本当に限界だった。過労死を頭に思い浮かべたものだ。


そんな時だ。
バイブ、携帯が鳴っている。
なんだ・・・このクソ忙しい時に・・・。


外に出て、電話に出てみた。
なんだこの番号は。登録されてないじゃないか。




「マ男さんですか?」


聞き覚えのない声だ。



「お父様のお名前は、○○でよろしいですか?」
「えぇ・・・」



なんだよ・・・。







「今、○○病院におりますので、至急来てもらえますか」





え?








386:2007/12/15(土) 02:13:12.16 ID:
ウアアアアアアアアアアアア







396:2007/12/15(土) 02:13:39.84 ID:
まじかよ…







402:2007/12/15(土) 02:14:04.37 ID:
ちょっとまて・・・
その流れの心の準備が・・・・







428:2007/12/15(土) 02:19:04.78 ID:
「はぁ?」



何言ってんのこの人・・・。俺は頭がぼーっとしていたので、幻聴かと思った。



「今日、救急車で搬送されました。お話すべきことがあるので、来て頂きたいのですが」
「何をおっしゃっているのかわかりません」




本当にコイツ何言ってんだ。
父ちゃんは1週間前、元気だったぞ。
最近、食欲がないせいか、痩せてたけど。




「ですから、救急車で搬送され」



説明を聞く俺。だが、全く理解できてない。しかし、大変だということは分かる。
記憶が前後する。父ちゃんに何かあったのか・・・。救急車・・・。
このキーワードだけは理解できていた。その時、眠気が吹き飛んでいた。



「○○病院ですか」
「そうです、至急来てください」




仕事がある。
いや、そんなことどうでもいい。俺にはもう父ちゃんしか居ないんだ。
肉親は父ちゃんだけなんだ。
俺は貧乏だったが、タクシーを拾い、病院へと向かった。








436:2007/12/15(土) 02:20:49.98 ID:
うおおおおおおおおおおおおお

父ちゃん生きててくれ!!!








458:2007/12/15(土) 02:24:08.44 ID:
病室に早足で駆け込む。
父ちゃんが、力無い姿で横たわっていた。
そんなバカな。なんで。



「マ男さんですか」



担当医らしき人が話しかけてきた。
俺はネクタイもずれ、髪の毛もボサボサで情けない格好だった。




「重大な話があります。こちらへ」



訳がわからん。
なんだよ、重大な話って。コイツバカじゃないのか。



「単刀直入に申し上げます。お父様は胃がんです」




終わった。

全てが終わった。



なんだよ、何が起きたんだよ。

俺が何をした? 俺そんな悪いことしたか?







本当に、本当に全てが終わった。









469:2007/12/15(土) 02:25:54.17 ID:
親父さん黙ってたのか…






471:2007/12/15(土) 02:25:58.49 ID:
胃ガンか…
きついなぁ…






499:2007/12/15(土) 02:30:36.41 ID:
「今朝、近所の方が回覧を届けに来た際、お父様が腹痛を」



何言ってんだ? 俺なんでこんなとこ居るんだ? 仕事あるだろう。
凄い厳しいスケジュールなんだぞ。こんな所に居たらダメじゃないか。




「手術するかどうか、告知するかどうか、親族であるあなたの」




俺、ここ最近全然、家に帰ってないや。
父ちゃん、寂しがってるだろうな。俺、仕事がんばってるよ。全然辛くないよ。




「つきましては、ここの紙面にサインが必要で」





なんでだよ・・・。

なんで、俺はこんな辛い目に遭わないといけないんだよ・・・。

俺、頑張ってるじゃないか・・・。親孝行させてくれよ・・・。

なんでだよ、何で俺から何もかも奪うんだ。


まだ俺親孝行してないよ。







俺は壊れていた。













533:2007/12/15(土) 02:40:28.65 ID:
医者の話が全て終わった時、俺は一人でぼーっとしていた。
仕事による肉体疲労、人間関係からくるストレス・・・そして、父ちゃんの胃がんで精神崩壊。
俺は、あらゆる意味で終わろうとしていた。
すると、携帯が鳴った。リーダーだろうな。すぐ切ろう。
一人になりたいんだ。




「マ男くんか?」



藤田さんだ。



「何かあったのか?」




俺はこれを聞いた瞬間、全てが吹っ切れたかのごとく、泣いていた。




「父ちゃんが・・・父ちゃんが・・・」




ここから先は言葉が出ない。
しばらく経って、藤田さんが話し始めた。



「・・・分かった。リーダーには、私から話をしておこう。今は、気持ちを落ち着かせなさい」
「はい・・・ありがとうございます・・・」




電話を切った。








537:2007/12/15(土) 02:41:52.79 ID:
なんというタイミング
やはり藤田神は神






539:2007/12/15(土) 02:42:35.35 ID:
この電話がリーダーからだったら、たまったもんじゃなかったろうな…







564:2007/12/15(土) 02:50:38.62 ID:
結論から言おう。
父ちゃんは手術をして、胃の一部を切除した。
自覚症状が薄いらしく、早期発見が難しいという話だったが、手術は成功した。
俺はこの間、会社に行きながらもお見舞いに来たりしていた。
父ちゃんと会話が出来るようになった頃の話だ。



「人間、何が起こるかわからんなぁ」
「うん・・・」
「マ男、会社楽しいか?」




楽しくないなんて言えるわけがない




「楽しいよ。社会に出て良かった」
「そうか、ワシも嬉しいよ。社会には色んな人間が居るだろう」
「うん、本当にそう思う。その中で、藤田さんって人が居てさ」



俺は今まで、会社の話はほとんどしなかった。
表面だけを話して、頑張ってるよ、楽しんでるよってことだけを伝えていただけだった。



「凄い人だなぁ、その藤田さんってのは。
 きっとその人は、人生の中でも一度会えるか会えないかぐらいの人だよ」
「うん、出会いって大事だよね。別れもさ」
「そうだなぁ・・・。お前も母さんが死んでから変わったもんな」




俺はまだ頑張らないとダメだ。



こんな所で弱音を吐いちゃダメだ。















570:2007/12/15(土) 02:53:15.88 ID:
父ちゃあああああああああああああ!!!!!!









575:2007/12/15(土) 02:54:17.92 ID:
俺、泣いて良いよね・・








589:2007/12/15(土) 03:00:07.31 ID:
俺の親父はもう他界したが、仕事の話とかもっとしておけばよかったと思った








590:2007/12/15(土) 03:00:10.87 ID:
「マ男、会社に行かなくていいのか?」
「父ちゃんが心配だよ」
「バカだなぁ、お前は。ワシはな、お前が一人前になってくれさえすれば、それだけで親孝行になるんだよ。
 お前はワシの心配なんかせんでいい。
 出世して、嫁さん貰って、子供作ってくれさえすればワシはそれだけで幸せなんだよ」




俺は泣きそうだったが、黙って頷いた。
親は偉大だ。偉大すぎる。いつまで経っても、手の届かない所に居る。
どうやったら、自分よりも子供の心配が出来るんだ。本当に尊敬する。



「仕事、大変だろうけど頑張れよ。辛かったら、やめて良いからな」



辛い。正直、もう俺は限界に近い。
だけど、まだ頑張らないとダメなんだ。



「うん」



病院を出て、会社に向かう俺。
何のために、俺は働いてるんだろう・・・。
父ちゃんをないがしろにしてまで、何で俺は働いてるんだろう・・・。
働いて働いて働いて・・・働き続けて、その先に何がある・・・。
だけど、まだ・・・まだ頑張らないとダメなんだ。
俺はまだ頑張れるんだ。






591:2007/12/15(土) 03:00:15.26 ID:
やっぱり親孝行というのはできるときにやらないとしみじみ感じた。

俺も社会出たらできるかぎりは親孝行したいものだわ。


勇にはこれから素敵なことがおこりますように・・・







595:2007/12/15(土) 03:01:10.45 ID:
ガチで涙出てきた







602:2007/12/15(土) 03:06:22.73 ID:
会社に到着した俺。
元々厳しいスケジュールに加え、父ちゃんの件による精神的苦痛、お見舞いの件による時間の消費・・・。
いくつもの要因が重なり、俺のスケジュールはひどいことになっていた。
どうしようもない。はっきり言って、誰がどうあがいた所で、一人で消化するのは不可能だった。


「おい、マ男」


リーダーだ。



「スケジュールがマズイことになってるぞ。何とかできるのか?」



藤田さんから事情を聞いたのだろう。
いつもより、ずっと言い方が柔らかかった。



「・・・わかりません」




俺はスケジュールの事より、これから先をどうするかを考えていた。
すなわち、退職するか続けるかだ。
まだ俺は頑張れる。それはあった。

だけど、それ以上に、父ちゃんと一緒に居る時間の方が大事だと思えたのだ。

・・・平成の孔明に、藤田さんに相談しよう・・・。








615:2007/12/15(土) 03:12:09.12 ID:
「すいません、藤田さん」
「うん?」
「少しよろしいでしょうか」



藤田さんのスケジュールも当然厳しい。
今思えば、よくこんな行動が取れたものだ。




「あぁ、いいよ。応接室にいこうか?」
「はい、お願いします」



それでも、快く引き受けてくれた藤田さん。




「このまま働き続けることに、疑問を持ちました・・・」



事情を説明する俺。
それに真剣に耳を傾け、難しい顔をする藤田さん。



「難しい問題だね」
「・・・」



あなたの指示が欲しい。俺は自分で行動する力を失っていた。



「ごめん、マ男くん・・・。今の私では、今の君には何も言えない・・・」



・・・え?



「これは、君自身が考えるべき問題だ。私は君の神じゃない。君の運命は、君が決めなさい」




そんな。
藤田さんは、始めて俺を突き放した。








618:2007/12/15(土) 03:13:17.86 ID:
当時の勇にはつらい言葉だけど、藤田さんの言っていることは正論だなぁ~






620:2007/12/15(土) 03:13:42.44 ID:
まあ…そりゃそうだよな








631:2007/12/15(土) 03:18:03.35 ID:
藤田さんが部屋を出ていく。
待って、待ってくれ。自分で考えることができないから、あなたを頼ったんじゃないか。
それなのに、それなのに何でだ。

俺は利己的にしか物事を考えることができなくなっていた。

スケジュールから逃げたいという気持ち、俺の責任じゃないという現実逃避。
全てが絡み合い、俺は苦しんでいた。



「失礼します」



誰だ。俺は絶句した。



「マ男さん、大丈夫ですか」



木村くんだった。なんで君が来るんだ。



「マ男さん、会社やめるんですか?」



・・・。






「僕から逃げるんですね、マ男さん」







ケンカ売りに来ただけか、こいつは・・・。










638:2007/12/15(土) 03:19:14.84 ID:
きwwwwwwむwwwwwwらwwwwwwwwwwww
焚きつけて元気付けようとしてる、と解釈できなくも無いがwwwwwwww
しかし無いわwwwwwwwwwwwwwwwwwwww






653:2007/12/15(土) 03:21:21.93 ID:
木村空気読めないとかそういう次元じゃないわwwwwwwww







660:2007/12/15(土) 03:24:04.90 ID:
「僕の実力が怖いんだ」



好きに言ってくれ。今、俺は君のことなど頭に無い。



「ずっと前、僕言いましたよね。いずれリーダーになるって、出世するって」



言ったな。あの時は、君の野心に驚いたよ。




「あの時のマ男さんの顔、今でも覚えてますよ。何言ってんだコイツって顔でしたよね
 僕の周りはみんなそうです。僕の言うことに、いちいち驚く。
 僕は当たり前の事しか言ってないのに」




そうか。もう俺は君に呆れたよ。



「だけど、マ男さんは、僕よりも先にリーダーになっていた。実力は僕より下なのに」



失礼な奴だな。そうかもしれないが、それは言うべき所じゃないだろう。



「なのに会社やめるんですか? 
 力は無い。だけど、僕より先に出世した経験があるのに。
 そんなの勿体無いですよ」
「・・・そうかな」
「マ男さん、今のスケジュールでしたら大丈夫ですよ。僕が引き取って、今なんとかやってます」







え?








672:2007/12/15(土) 03:25:43.57 ID:
あれ?

いまちょっと木村にときめいたぞ?






675:2007/12/15(土) 03:26:19.04 ID:
木村べジータ化ktkr








679:2007/12/15(土) 03:26:58.20 ID:
あれ?

・・・いやまて、これは仲間にするための罠だ。







696:2007/12/15(土) 03:30:42.11 ID:
なんだって?
「意味がよくわからない」
「マ男さんの仕事を、僕がやってあげてるんですよ」
「何で木村くんが」
「藤田さんが、この開発室の人間は仲間って言ったじゃないですか。仲間なら、助けるのが普通でしょ」




何言ってるんだ? よく意味がわからない。木村くんだろう、君は。




「まぁ、あと上原さんも空いてたので、あの人にもやって貰ってますけどね。
 あ、もちろん藤田さんもですよ。他の人は戦力にならないので、何もしてないですが」




藤田さん、突き放すだけ突き放しておいて、何をやってるんだ・・・。




「だから、今回のスケジュールは気にしなくて良いです。
 僕は僕で、ワンランク上の仕事にあり付けましたし。
 あとは、マ男さんが立ち上がるだけです」







そう言って、応接室を出て行く木村くん。




なんという大器か。






716:2007/12/15(土) 03:33:53.29 ID:
こんな後輩のいる会社は嫌だな・・・






717:2007/12/15(土) 03:33:55.19 ID:
おおちゃんと成長してたか!
木村くんもだがあのとき説いた藤田さんにGJと言いたい







719:2007/12/15(土) 03:34:39.96 ID:
なんというか
総じて藤田さんが神すぎるwwwwww






730:2007/12/15(土) 03:38:01.76 ID:
俺はこんな所で何やってるんだ。
確かに精神的なダメージは大きい。
だが、今抱えている仕事をこなすまでは辞めることなど許されない。
俺の代わりに、多くの人が体を、精神を、時間をすり減らして動いてくれてるんだ。
当の本人であるこの俺が、何をやってるんだ。
俺は妙に焦り、早速仕事に戻った。




「おーおかえり、マ男くんww 長いトイレだったなww ケツふいた?ww」



井出だ。いつもはムカつくけど、今回はありがとう。



「おい、マ男、無理するなよ。お見舞い行けよ」



大丈夫です。このプロジェクトだけは絶対に仕上げてみせる。
藤田さんを見る。軽く頷いた。俺はそれを笑顔で返す。



「マ男さん、早く仕事やってくださいよ。僕だって暇じゃないんですよ」



わかってる、ありがとう、木村くん。




俺は、またもや人との出会いに助けられていた。

まだ俺は頑張れる。

こんなに素晴らしい人たちに囲まれてるじゃないか。



このプロジェクトだけは、絶対に何としてもやり遂げてやる。









743:2007/12/15(土) 03:40:05.50 ID:
>>「マ男さん、早く仕事やってくださいよ。僕だって暇じゃないんですよ」


黙れべジータ









736:2007/12/15(土) 03:39:14.96 ID:
>「おい、マ男、無理するなよ。お見舞い行けよ」


えっ、これ、リーダー!?








744:2007/12/15(土) 03:40:07.74 ID:
皆が一体になった!
一方そのころ上原は・・・


上原「スピー」







746:2007/12/15(土) 03:40:18.07 ID:
・・・なんかそんなにブラックにも思えなくなってきてる俺







751:2007/12/15(土) 03:41:06.10 ID:
大変だ、リーダーがリーダーらしいこと言ってるぞ!







769:2007/12/15(土) 03:44:12.43 ID:
ここから限界点まで転げ落ちます







775:2007/12/15(土) 03:45:27.24 ID:
10月末。





「おい、今日が納期だぞ、お前ら」
「やったるwwwwwwww俺やったるwwwwwwww」




みんなで協力し合い、プロジェクトを進めていく。
父ちゃん、お見舞いに行けなくてごめん。
だけど、俺は自分でやるって決めた事は、最後までやりたいんだ。
いつもいつも挫折して、すぐに諦めるバカ息子だけど、これだけはやりたいんだ。





「キムちゃーん、これ無理だよーやってー」



後輩にたかる井出。



「めんどくさい人だな。なんでこんなのが出来ないんですか」




井出を押しのけ、作業を進める木村くん。
すると
キュピーンという音が鳴った。




「この感じ・・・ニュータイプか!?」
「シャア!」
「竹中さんと井出さん、遊ばないで仕事してください。もう助けませんよ」
「す、すいません」




そして

午前4時42分(確か




プロジェクト完遂!!(まだ続くよ













786:2007/12/15(土) 03:48:25.51 ID:
みんながいい人に見えてくる不思議さ








793:2007/12/15(土) 03:49:49.59 ID:
デスマフラグが立たず、上原イジメさえなけりゃいい会社だな






799:2007/12/15(土) 03:51:46.37 ID:
やった、ついにやった!

史上最強のデスマを打ち倒した!!

俺たちは狂喜乱舞のごとく喜んでいた。


みんながみんな、協力し合い、始めて成功したのだ。

それぞれがそれぞれの個性、適正を活かし、全てを完了させたのだ。

俺たちは感無量だった。




「やっぱ出来るじゃないか、僕の言った通りだ」

「木村、お前凄い奴だな」

「言われなくてもわかってますよ」




生意気な口を叩いているが、その顔は達成感で満ち溢れていた。

みんな、本当に良く頑張った。これ以上無いほどにだ。









だが・・・

11月12日(スレを立てる12日前)

事件は起きる。








807:2007/12/15(土) 03:52:38.54 ID:
いよいよか・・・









824:2007/12/15(土) 03:56:14.88 ID:
「おい、お前ら緊急会議だ」




む・・・。今日は月曜だぞ。いつも会議は火曜なのだが・・・。



「えー・・・」



リーダーが言葉を詰まらせた。



「すまんすまん、遅れたよ」



社長がやってきた。いつもなら社長は会議に同席しない。
何か本当に重大なことが起きたのか。
まさか、倒産か?
あれだけ頑張ったのにか・・・?




「君達に、話さないといけないことがあるんだ」



なんだ・・・。せっかく職にあり付けたのに、退職だなんて勘弁だぞ・・・。








「来月、藤田くんはこの会社を辞めることになった」


今なんていったこのおっさん











838:2007/12/15(土) 03:57:24.03 ID:
>>824
なななななななななななんだtってえええええええええ






839:2007/12/15(土) 03:57:31.05 ID:
そりゃ限界かもしれない








844:2007/12/15(土) 03:57:51.76 ID:
あああああああああああああ
だめ、絶対







849:2007/12/15(土) 03:58:23.15 ID:
孔明が…消える…だと…?!







852:2007/12/15(土) 03:58:27.08 ID:
藤田さんがやめる・・そりゃ\(^o^)/オワタ






864:2007/12/15(土) 04:00:17.69 ID:
だからあんなにマ男を育てようとしてたのか






868:2007/12/15(土) 04:01:50.40 ID:
ハァ?

何? 何て言った?



「伝えるのが遅れてすまない。半年前ほどから、すでに決まっていたのだが」
「ちょっと待ってください!」



俺は声をあげていた。



「藤田さんがなんですって!?」
「マ男くん・・・」
「藤田さんが、藤田さんが何だって聞いてるんですよ!」
「・・・辞めるんだよ、マ男くん」



何を言ってるんだ。何を言ってるんだ。何を言ってる、このおっさん。
本当に何言ってんだ。



「藤田さん、辞めるんですか!?」



俺は藤田さんに言った。必死の形相だったと思う。



「・・・あぁ」






そんなバカな。何を言ってるんだ、この人たちは。

理解できない、わからない。

何が起きてるんだ。今、この場で何を話してるんだ。

俺は気が動転していた。






 





「藤田さん、僕から逃げるんですか!」









906:2007/12/15(土) 04:08:57.78 ID:
木村くんが叫んだ。

「僕が怖いんだ! 今から追い抜かれるから、だから逃げるんですか!」
「・・・」




何も言わず、じっと木村くんを見つめる藤田さん。
何を言ってるんだ・・・。何だよ・・・何で・・・。




「木村、落ち着け」



リーダーがたしなめる。
その手を振り払い、木村くんが身を乗り出した。





「僕が怖いんだ」
「・・・」



口を開かない藤田さん。
なんで何も言わないんだ・・・。
何か言ってくれ・・・。
逃げない、最後まで君と張り合うつもりだ、って。
木村くんを最後まで抑えるんだって。





「じゃあ僕の勝ちだ。やっぱり藤田さんも、僕には勝てないんだ。僕が一番仕事ができるんだ」




声に力が無い。本心じゃない、誰が聞いても分かる。



「木村・・・!」



リーダーが語気を強める。




 





「フンッ」

「木村ぁ!! 座れぇ!! 社長が話できねぇだろうがっ!!」





 




戦慄が走る。













912:2007/12/15(土) 04:10:12.44 ID:
リーダーに惚れた










928:2007/12/15(土) 04:12:26.06 ID:
最近リーダーがまともに見えてきた






955:2007/12/15(土) 04:19:40.22 ID:
室内が静まり返り、社長が口を開いた。


「何故早めに話さなかったのか。これは、藤田くんの希望でね。
 退職することもまだ未決定ではあったんだが今回のプロジェクトを完遂できた時に正式に決定しようと。
 そういう話になってたんだよ」




聞いてない。そんな事、俺は聞いてない。




「あとは、藤田くんから・・・」



藤田さんが静かに頷く。



「急なお話、本当に申し訳ありません。一身上の都合により、退社せざるを得なくなりました。
 この会社で、私は多くのことを学びました。最後の1ヶ月、短い間ですが」



藤田さんは、何故か俺の目だけ見ようとしない。なんでだ。何でですか。



「悔いの無いよう、最後までやり切ろうと思います」








俺は耐え切れずに泣いてしまった。

だけど、誰も突っ込まなかった。

みんな同じ気持ちなんだろうか。



俺の中で神で孔明で、人生で最も尊敬できる人で・・・


藤田さんが、会社をやめる・・・。




こんなひどい現実、あっていいのかよ・・・








59:2007/12/15(土) 04:34:19.10 ID:
『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界もしれない』





スレタイの意味・・・

それは、木村くんの下克上でも、父ちゃんの病気でもない。

藤田さんが、会社を去る・・・。まさにこれこそが限界だったのだ。







 






11月23日(スレ立て前日)

「マ男くん・・・今日、お昼いいかな・・・」
「・・・はい」



例の退職宣言以来、開発室内は生気が抜けたかのようになっていた。
俺はそれ所の話ではない。
父ちゃんの病気、藤田さんの退職。俺を支えていたものたちが、一気に消え去ろうとしているのだ。
限界だ。限界が襲ってきている。

そして、昼休みがやってきた。




「すまないね、マ男くん」



・・・。



「君にはもっと早く言うべきだったのだが・・・」



いくらでも、いくらでも言う機会はあったじゃないですか。




「春を・・・覚えているかい」
「えぇ・・・」
「あの時、君に話そうとは思ってたんだがね・・・」




木村くんと話をしたあの日だ。リーダー補佐の話をしたあの日。




「タイミングが掴めなくて、今のような状態になってしまったよ。本当にすまない」




もう済んだ事です。何をやっても、もう全てが遅いです。





「・・・君には本当の事を話そう」





本当のこと・・・?











61:2007/12/15(土) 04:35:01.45 ID:
ほんとうのこと・・・








82:2007/12/15(土) 04:41:30.88 ID:
「以前、君が精神的に参った時、私の過去を話したよね」
「えぇ・・・」
「内容は覚えてる?」



当然だ。彼女が死に、NEETになってしまった藤田さんだったが、彼女の両親からの手紙を機に働きだす。
これは今でも俺の糧となっている。誰が忘れるものか。




「今回の退職は、それに絡んでいてね」





なんだと?




「結論から言うと、ヘッドハンティングだよ。俗に言う引き抜きだ・・・。
 だけどね、私は引き抜きなんかには動じなかった。ただの引き抜きならね」




ただの・・・何かあるのか・・・




「派遣社員の中西さんが居ただろう」
「えぇ」
「彼女は、今○○に勤めていてね」





中西さんが、あの人が手を回したのか?




「もう分かると思うが、あの人の推薦で引き抜きが来たんだよ。
 だけど、私はそんなものじゃ動かない」





一体、一体、何が藤田さんを動かしたっていうんだ。








85:2007/12/15(土) 04:42:48.73 ID:
な ん と い う つ な が り







89:2007/12/15(土) 04:43:07.41 ID:
中西・・・あんたって人はどこまでも!!






92:2007/12/15(土) 04:43:28.78 ID:
あの雌豚wwwwwwwwwwwwww







103:2007/12/15(土) 04:44:39.26 ID:
間男の中西の書き方がやたら冷たかったのも
これが原因か…







115:2007/12/15(土) 04:47:06.85 ID:
「じゃあ何が私を動かしたのか」

沈黙。

「・・・中西さんの勤めている会社が、私の元彼女の勤めていた会社なんだよ」

俺は時間が止まった。

「運命というのは本当にあるのかもしれない。私は中西さんに過去を話してないし、君も話してないだろう」

時間が動かない。なんだこれ・・・。






「私は居ても立ってもいられなくなった。そして、社長に事情を話し」

藤田さん、あなたは本当に神に選ばれた人じゃないのか。

「正直に言おう。この退職は、私のわがままだ」






120:2007/12/15(土) 04:48:15.73 ID:
恐ろしいフラグだな・・・







123:2007/12/15(土) 04:48:40.89 ID:
孔明も運命の悪戯には逆らえなかったか…







125:2007/12/15(土) 04:49:12.62 ID:
彼女の職場を救おうってことか…ここはもう平気そうだし今がいい機会なんだろうな






155:2007/12/15(土) 04:58:40.24 ID:
ここから先は、何を話していたか覚えてない。
俺は呆気に取られて、はぁ? みたいな感じだった。




「すまないね。だけど、私も時期は見計らったつもりだ。
 君は立派に成長し、木村くんという私を超える逸材も入ってきた」




それは違う。俺はまだあなたが必要だし、木村くんはあなたには及ばない。




「マ男くん、君は私を尊敬してくれてると思う。3年間、共に過ごした中で私はそれを感じた。
 君の中で、私の存在はどれほど大きいだろうか。それは私にはわからない」




取り返しのつかないほど大きい、まだ俺には藤田さんが必要だ。




「だけど、私は思うよ。私の力が100あったとしよう。この100の力は、とても大きい。
 だけど、一つなんだよ。たった一つの100だ。
 それに対して20の力が5つあったら・・・それは、100を超えると思わないか?」





超えるわけがない。藤田さんという存在は、唯一無二なんだぞ。




「前回のプロジェクトは、まさにそれを体現化したものだった。
 私は思ったよ。これなら安心して去れると」




一呼吸置く藤田さん。






 









「私のあとは、君が継ぐんだ」

そんなバカな










189:2007/12/15(土) 05:06:26.90 ID:
「無理ですよ」

俺は言っていた。そうだ、無理だ。






出来るわけがないだろう。俺が、俺ごときがこんな立派な人のあとを継ぐ?
何こんな時にギャグをかましてるんだ。



「君なら出来るよ。君はもう私を超えている」



口から出まかせを言うな。
どこをどうひっくり返したら、そうなるんだ。





「そろそろ、会社に戻ろうか」




そう言って席を立つ藤田さん。待ってくれ

俺が藤田さんの後を継ぐ・・・?

何を言ってるんだ・・・。冗談も程ほどにしてくれ・・・。
俺なんかに務まるわけがないだろう・・・。

父ちゃんの病気、藤田さんの退職宣言、そして・・・後継者というプレッシャー。

限界だ。もう俺は限界だ。






11月24日 21:33:07:44

『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』スレッド作成。







ここから、全てが始まる。











196:2007/12/15(土) 05:07:31.64 ID:
>>189

そういう事だったのか…









201:2007/12/15(土) 05:08:14.05 ID:
これから・・・は・・・じま・・・る・・・のか?









234:2007/12/15(土) 05:15:41.44 ID:
何のためにスレッドを立てたのか。

確かに俺は限界だった。

このスレッドを立て、全てを書き終えた時、俺は退職しようと心に決めていた。



伸びても、伸びなくても、それは変わらない。

結果的にスレは物凄い勢いで伸び、パー速に移住するほどになってしまった。








そして、その中で俺への励まし、心配、叱咤。

色々なレスが俺に向けられて書き込まれた。





ブログのコメントは、続きを書いてくれ、という内容ばかりだった。





俺は今まで、誰からも必要とされない、居なくなっても誰も悲しまない

くだらない人間だと思ってたんだ。







だけど、このスレを立てた事で

俺はみんなから励まされて、心配されて、叱咤されて・・・










たった一人の力は確かに小さいかもしれない。

だけど、それが何十、何百となったら?

その小さな力が集まって、大きな一つの力となったら?






俺は奇跡を信じる気になったよ。








だって、スレッドタイトルが変わるんだもの。







『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』



『ブラック会社に勤めてるんだが、まだ俺は頑張れるかもしれない』

に。















237:2007/12/15(土) 05:16:21.80 ID:
なにこのうまい〆方wwwwwwwwwwwww










253:2007/12/15(土) 05:18:32.43 ID:
ここで勇がやめるっつったらすべてのニートが希望を失っていた。

どうかがんばってほしい














258:2007/12/15(土) 05:19:31.17 ID:
藤田さんはあんたを認めたんだ

自身を持って仕事を続けてくれ。たのむ








263:2007/12/15(土) 05:20:35.97 ID:
〆方上手すぎwwwwwwwwww

なんか凄い希望を持ててきた。




ニート脱出頑張ってみるよ。











288:2007/12/15(土) 05:30:18.72 ID:
このスレを見てくれてる人の中には、いろんな人が居るだろう。

学生、社会人、NEET、親、子、男性、女性・・・。

俺が想像も出来ない数の人が見てくれてると思う。

そう思ったら、力が湧いてくると思わないか。




俺はこのスレを立てたことによって、みんなに救われたよ。

本当にありがとう。




そして先週の金曜、藤田さんと交わしたやり取りを、ここに記そうと思う。





「マ男くん、君はもう私を超えているよ。

 君一人の力では、そうじゃないかもしれない。

 だけど、木村くんの信用は今では君が一番だし

 井出さんやリーダーも、君の事を影で認めている。

 私にしょっちゅう、言ってくるんだからww

 上原さんも、竹中くんも、みんな、君を頼りにしてるんだよ」






「私は、社長に言っておいた。

 君をリーダーにすれば、私を失う事なんて、石ころを捨てるのと同義だと。

 君は私が去っていく日、リーダーに任命されると思う。 

 君は悩むだろう。苦しむだろう。

 だけど、私を信じて受けてみて欲しい。

 そのために、私はリーダーになるのを断り

 3年間ずっと君を育ててきたのだから」






俺たちは、藤田さんという一つの大きな力を失った。






だけど、その代わりに俺たちは

結束という何物にも変えがたいものを手に入れたよ。







藤田さんは、今月末で去る。そして俺はリーダーに任命されるだろう。






もし、このスレを立てていなければ、俺は受けなかったかもしれない。

だけど、このスレを立てたからこそ、俺は受けることにした。






藤田さんの言葉の意味を、みんなが教えてくれたのだ。ありがとう。




そして最後に、ありがとう、2ちゃんねる。







第五部・最終章『もう俺は限界かもしれない』

及び

『ブラック会社に勤めてるんだが、まだ俺は頑張れるかもしれない』

















289:2007/12/15(土) 05:30:42.54 ID:
完結!!乙!!







330:2007/12/15(土) 05:34:29.66 ID:
おつかれ、マ男。こちらこそありがとう。

いろんなもの貰ったよ!









347:2007/12/15(土) 05:36:12.88 ID:


そして、ありがとう

俺もまだまだやれそうな気がしてきたwwww









383:2007/12/15(土) 05:49:38.59 ID:
マ男書き上げてくれてありがとう。お疲れ様!

生き様しかと見させてもらったぜ。







528:2007/12/15(土) 21:06:02.68 ID:
俺学生で、将来とか、夢とか、

正直どうしたらいいのかわからなかった







でもこのスレを読んで

大切なことが分かった気がしたんだ。







マ男 ありがとう








390:2007/12/15(土) 05:55:54.78 ID:
マ男ありがとう。

おれも寝て起きたらハロワ行こうっと。







元スレ: