移民は人口減少の切り札か 欧米では見直し機運高まる

2014.03.20


菅義偉官房長官【拡大】

 「政府が移民の大量受け入れを検討している」と報じられた。菅義偉官房長官は「政府として決定した事実はない」とする一方、経済財政諮問会議の下に「選択する未来委員会」を設置して人口減少などを議論し、2月24日の委員会で「有識者から外国人労働力活用拡大の選択肢が提起された」と説明した。

 移住とは長期にわたる居住であり、観光や旅行は含まれない。政府の移民の受け入れ検討は、人口減少を補うことが目的のようだ。ただ、単純労働者の移民を受け入れる場合、雇用への影響のみならず、文化摩擦、治安悪化への懸念も強い。

 世界では移民政策はどうなっているのだろうか。移民政策を国際比較するものとして「移民統合政策指標(MIPEX:Migrant Integration Policy Index)」がある。これは、英国の国際文化交流機関であるブリティッシュ・カウンシルが、EU(欧州連合)加盟国を中心とした33カ国の移民政策について、6つの政策分野(労働市場アクセス、家族呼び寄せ、長期滞在、政治参加、国籍取得、反差別)を数値化して、国際比較可能にしたものである。

 その2010年の調査によれば、数値が高い傾向があるのは北欧、西地中海、ベネルクス(ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)、カナダなどの諸国で、水準が低いのは、バルト海、東地中海、中欧諸国などである、ちなみに、日本は33カ国中29位と欧米諸国に比べて閉鎖的である。

 ただし、最近欧米では従来の移民政策を見直す動きが出ている。

 MIPEXで1位のスウェーデンは、紛争国からイスラム教徒の難民などを受け入れていることで有名な移民開放国だ。だが、現在の移民政策について、政策費用がかかるほか、高い失業率を招いていると批判する向きもある。移民受け入れに反対する意見は少数派ではあるが、移民排斥を掲げる極右のスウェーデン民主党の支持率を押し上げている。

 3位のカナダは、技能を持つ労働者を移民で補ってきた。カナダは投資することで長期滞在許可が得られる投資移民制度もあり、最近では多くの中国の富裕層が希望してきた。ところが、この移民受け入れの廃止・基準厳格化を打ち出している。

 また、14位の英国では、ビザの有効期限が切れた移民者をより厳しく取り締まる政策に転換した。労働あるいは就学目的で入国する者に対して厳しい措置を取っている。

 さらに24位のスイスは、これまでも比較的厳しい移民政策だったが、2月9日に行われた国民投票で、さらに移民の受け入れを制限するという提案が賛成50・3%、反対49・7%の僅差ながら承認されたという。

 移民の議論は、各国とも難しい状況になっているので、専門性や技術を持つ外国人労働者の受け入れ拡大を先行させるだろう。実際、震災復興などで建設業では人手不足なので、既成事実化しているところでもある。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

 

注目情報(PR)

産経デジタルサービス

産経アプリスタ

アプリやスマホの情報・レビューが満載。オススメアプリやiPhone・Androidの使いこなし術も楽しめます。

産経オンライン英会話

実践で使える英会話を習得!業界最高峰の講師がサポートします。毎日話せて月5000円《まずは無料体験へ》

サイクリスト

ツール・ド・フランスから自転車通勤、ロードバイク試乗記まで、サイクリングのあらゆる楽しみを届けます。

サンスポ予想王TV

競馬などギャンブルの予想情報を一手にまとめたサイト。充実のレース情報で、勝利馬券をゲットしましょう!