EXCITEMENT03 七瀬 薫(視点変更ダイジェスト版)
登場人物紹介③
NAME/七瀬 薫
RACE/人間族(未来人)
JOB/火の魔術師
SIZE/B84W60H82
EQUIP
両手/紅竜骨の大杖〔B-〕
頭/魔術師のヘアピン〔C+〕
胴/北海道立鳴海高等学校の制服〔A+〕
腰/北海道立鳴海高等学校のスカート〔A+〕
足/セベックスのローファー〔A+〕
アクセサリー①/小熊のアクセサリー
アクセサリー②/なし
アクセサリー③/なし
EX
西暦2205年から転移して来た現役女子高生。
友人は同性よりも異性の方が多いらしく、その事で他人から勘違いされる事もしばしば。
「さて、と……」
自宅のパソコンの前に座る。
画面の前に手を翳すと入力用のキーボードが出現する。
「久しぶりだからやり方覚えているかしら……」
自宅に送られてきた一枚の葉書。
差出元は《クリプトゼグノ社》。
キーボードに暗証番号を入力する。
そして浮き出た画面から《BLAZE DANCER ONLINE》のロゴを選択する。
一人の女性剣士がモンスターに斬りかかっているようなロゴ。
運営から5年経った今もなお、人気のVRMMO。
「玲人と俊介も来ているのかしら……」
ログイン画面に入り、以前のデータをアップロードする。
シーズン2以来になる《BDO》。
こうやって運営元から『100万ID突破記念』のお知らせが届かなかったら、ずっと放置したままだったかも知れない。
私は目を閉じる。
そして背もたれに大きく身体を預ける。
大丈夫。
今日は母は帰りが遅くなると言っていた。
いつも勉強ばかりでストレスが溜まっているから、今日くらいは弾けたってばちは当たらないだろう。
「あ……」
意識が落ちて行く。
0と1の螺旋状の鎖が幾重にも私のアバターを取り囲んで行く。
そして私はゲームの世界へと誘われて行く。
これが現実世界との『最後の別れ』となることも知らずに――。
◇
「ん……」
辺りのざわつきにより意識を戻す。
ここは、平原?
運営からのお知らせでは、今度の舞台は《グランドヴェルグ》という剣と魔法の仮想世界だと書いてあったが――。
「うわ……。やっぱめっちゃ人がいる……」
ざっと見回しても数十万人はくだらないだろう。
シーズン2の時に見知った顔もちらほらと見受けられる。
「あれ? なんか、空が――」
しばらく辺りを見回していると、急に空が暗くなり――。
――そして稲妻と共に、巨大なフードを被った人物が出現した。
◇
ざわつく会場。
皆一心に上空を眺めている。
そして巨大な人物はこう言った。
『100万人のプレイヤーの皆様。本日はここ《グランドヴェルグ》にお集まり頂き、真に有難う御座います。2200年からスタート致しましたこの異世界VRMMO企画ですが、真に残念ながら今回で最後となりました』
男とも女ともつかない声。
いや、それよりも――。
「何よ……。『今回で最後』って……」
わざわざお知らせを寄こしてここに人を集めて。
それなのに『今回で最後』?
一体何を言っているんだろう。
恐らくあれは『運営』の言葉なのだろうが……。
『そこで100万人突破を記念致しまして、この異世界VRMMO企画の最大のショーを開催したく、皆様をここ《グランドヴェルグ》にお招きした次第で御座います』
最大のショー?
何よ、それ。
意味が分からない。
『そのショーとはつまり――』
運営の声色が変わる。
『――殺し合い、です』
◇
「はぁ……」
私は頬杖をつきながらその場にしゃがみ込む。
「何が『殺し合い』よ……。馬鹿馬鹿しい……」
運営が去った後も、一瞬騒ぎが起きた程度で、また100万の群集はたむろし始めている。
誰も信じるはずが無い。
どうせ新しいシーズンが始まった事による余興に過ぎないのだろう。
「どうしようかな……。あれ、そういえば私……」
空間をタップしウインドウを開く。
やはりそうだ。
シーズン2の時に手に入れた『紅竜骨の大杖』を装備したままになっている。
あまりにも大きくて使い辛い大杖。
もう少し小さめで、片手でも持てるくらいの杖が欲しいと思っていたのだ。
「確かまだ……《盗むカード》が残っていたはず……」
ウインドウを更に操作し、アイテム欄を開く。
大丈夫。
これだけの群集ならば、《盗む》を使用したって私だとは気付かれないはず。
「ええと、『一番近くにある、一番威力の高い杖』、と……」
カードが宙に浮く。
そして光と共に砕け散り、現れたのは――。
「……へ?」
出現したのは真っ黒い弓だった。
どうして弓?
あれ、いま『杖』って念じたわよね私……。
目の前の弓に手を伸ばす。
触れた瞬間、脳裏に一人の女性が写り込んだ。
憂いを含んだ表情?
それとも猟奇的な表情?
誰だろう、あの女性――。
そして眩いほどの閃光が平原を照らし出した。
◇
突如現れた黒弓が閃光と共に黒杖へと変化。
しかも喋る杖。
だがその『声』は私にしか聞こえない。
『……おい少女』
しかし私は彼の『声』には反応しない。
先程の閃光で黒杖へと変化した際に大声で叫んでしまい、周りから変な目で見られているのだ。
しかも今は玲人や俊介とも合流している。
彼らにまで白い目で見られたくはない。
「……」
『おいったら、聞こえているんだろう?』
尚もしつこい黒杖男。
名前を『魔杖ゾルディ』とか言うらしいが、とんだ厄介者を引き当ててしまった様だ。
なんと言えば良いのか。
いちいち私の癇に障る声、とでも言うのか。
言い方?
良く分からないが、とにかくムカムカする『声』――。
『だからさっきから俺の話を無視すんなって。頼むからあそこの森に向かってくれよ。俺の大事な人がそこで気絶してんだよ。何回言わせるんだよ』
ゾルディが先程から話している『大事な人』。
ここ《グランドヴェルグ》に生息している《エルフ族》と呼ばれるNPCの事だ。
あの運営のデスゲーム開催宣言のすぐ後、そのエルフの少女は数名のユーザーに襲われたらしい。
よくある『狩り』だ、と思う。
リアルな仮想世界で己の欲望を満たす為の『狩り』――。
「(だーかーらー、知らないって言ってんのよ! 何で私がそのエルフの女の子? その子を助けなきゃならないのよ! 私だっていきなり『ログアウト不能でーす』って言われて混乱してるんだから!)」
『そんな事、俺が知るか! お前がそのカードとやらを使って俺をリリーから引き離したんだろうが! 責任取れよ!』
「(なんで私が責任取んなきゃなんないのよ! てかあんた一体何なのよ! ただの杖の癖してさっきからペラペラペラペラと! どうして私の頭の中にだけ声が聞こえて来るのよ!)」
『話を逸らすなアホ! これだから今時の若い奴ぁ……』
「(何よ!)」
『何だよ!』
先程から延々とこれを繰り返している。
どうしてこんな訳の分からない杖を召喚してしまったのだろう……。
◇
あの100万の群集が集められた平原、《ラグザット平原》を抜け、《ブレインバウンド》という街に到着した私達。
玲人と修介はリアルの世界でも何度か会った事がある信頼出来る人物達だ。
久しぶりに《BDO》を始めた私でも、快くパーティに引き入れてくれたし。
『なあ、薫』
「……」
『……無視ですか』
「……ふんっ」
この街に到着するまでに大喧嘩した私達。
『私達』というのは、勿論――。
『おい、薫。もうちょっと鞄のヒモを緩めてくれないか。息苦しくて窒息しそう』
「……」
せっかく召喚させた魔杖ではあるが、正直気持ち悪くて装備なんて真っ平ごめんだ。
なので私は背に背負ったリュックに乱暴に突っ込んだままにしている。
そしてその日は《ブレインバウンド》の街で宿を取る事にする。
◇
部屋に入るや否や、私はゾルディをベッドへと放り投げる。
『扱いに気を付けろよ、このビッチ』
さっそく喧嘩腰の彼。
ホントいちいちムカつく……。
昼間、完全無視だった私に一方的に事情を話してきた彼。
私が何故か3人目の主人だとか。
元々は人間で、しかも過去の日本からこの世界に飛ばされてきたとか。
恐らくはそういう『設定』なのだろう。
いわば『ユニーク武器』か何かなのだろうが。
一応彼の話に合わせておく事にする。
もしかしたら私を騙しているのかも知れないし。
この時の私はまだ、安易にそんな事を考えていた訳で――。
◇
「マジだ……。いつの間に《復活》が……」
「くそっ! 本格的に『デスゲーム』の開始って訳かよ! 運営の野朗……!」
次の日の朝、玲人修介に相談した私。
このVRMMOのシステムの1つである《復活》という項目の消失。
そしてその理由――。
「理由、か……。確か運営元の企業って、親会社がアメリカの《ゼイグリス社》じゃ無かったか?」
玲人が鬱陶しそうに髪をかき上げながらも言う。
「ああ。確か軍事技術の提供で有名なとこだったよな。アメリカ軍でもこのVRMMOと同じ技術が導入されて、軍事演習に役立てていたらしいからな」
修介も後に続く。
「じゃあ何? その《ゼイグリス社》が子会社に命令して、一般に普及させたVRMMOで殺し合いのサンプルデータでも集めようって事なの? 何よそれ……。戦争の下準備みたいな事――」
ここまで言ってハッと口を噤む。
恐らくはビンゴだ。
100万にの群集による大規模なサンプルデータの回収……。
そしてこんな状況なのに、彼は私に話し掛ける。
『なあ、薫。一つお前に言っていなかった事があってな』
「?」
『俺を装備しておけば、お前は、お前だけは、絶対に死ななくて済むんだぜ?』
◇
魔杖の能力。
HP吸収能。
つまりは彼を装備して敵を攻撃し続ければ、常に回復状態にいられるという事。
そして嘘か真か、彼を装備中はHPが1以下には減らない事があるらしい。
何かの《スキル》でそういう効果がある事は聞いたことがあった。
しかし何故か彼の声は裏返っている。
そう疑心暗鬼をしている最中、事件は起こった。
◇
「きゃあああああああ!!!!」
女性の叫び声が広場に木霊する。
声のした方角を振り向くと、そこには――。
『あれは……奴か!』
ゾルディの声と同時に傍らにいた修介が地面を蹴る。
見た事も無い全身黒タイツの男の前で倒れている玲人。
そしてその男は玲人に刀を振り上げ――。
「玲――」
――無慈悲に玲人に対し振り下ろしたのだった。
◇
「てめぇ……良くも玲人を!!」
咆哮し男に突進する修介。
「遅ぇよ、馬鹿が」
「な――」
修介に対し、横一文字に振るわれる刀。
「あああ……あああああ……!」
徐々にホノグラム化していく修介の身体。
男は猟奇的な笑い声を上げながら、刀を再度構え――。
――修介までも一刀両断したのだった。
◇
「玲人……修……介……」
何が起きているのか理解出来ない。
二人の身体が光と共に四散する。
《復活》はもう、選択出来ないというのに――。
「嫌……何で……? どうして……?」
男がこちらに気付く。
殺される。
でも足が恐怖で――。
でも――。
『逃げろ薫! 気付かれたぞ!』
ゾルディの叫び声が脳内に響き渡る。
でも、私は――。
「……ゾルディ。さっき言っていた事……信じるわよ」
『あ、おい薫!』
リュックから魔杖を取り出す。
そしてウインドウを操作し装備する。
震えた手つきで、足もガクガクで……。
でも、でも――!
「許さない……。絶対に……許さない……」
魔杖をぎゅっと握り呪文の様にそう呟く。
玲人も修介も大切な友人だったのだ。
恋心に芽生えたことなど無かったが、それでも数年の付き合いがあった大切な友人――。
それを虫けらの様に――。
◇
ゾルディの機転によりからくもリーダーを撃退に成功した私達。
そして私の心は徐々にゾルディに奪われて行く。
彼は事前に私に教えなかったのだ。
魔杖を振るい、敵を攻撃しHPを吸収すると『感じてしまう』という事を――。
こんなの反則だ。
玲人や修介が死んで悲しいのに。
なのにこの満たされた感じ――。
私って酷い女だ。
ホント、嫌になる。
◇
『いやー、マジで良い湯だなぁ。本当に温泉に入れるなんて思ってもみなかったぜ』
《ブレインバウンド》の街を離れ、私達は今温泉宿に宿泊している。
向かう先はゾルディの最初の『主人』がいる国――《ザールツレイム帝国》。
そこで事情を話し、匿ってもらう。
ゾルディは既にその主人と意思疎通を図ることは叶わないから、私が変わりに説明する。
『あー……天国だなここ……。しかも貸切状態だし……。俺、満足』
寝風呂に浸かり満足げな声をあげる彼。
私はそっと彼の横に座る。
「結構熱いわね……」
熱いのは湯の温度だけでは無い。
私の身体の芯も熱をもってしまっている。
「ねえ、ゾルディ……。そっちに行っても、良い……?」
『え?』
そう言った私はゾルディに密着するように寝風呂に横になる。
彼の逞しい魔杖――。
私の脳髄を痺れさせる彼の言葉――。
『お、おい……薫……』
彼に全てを捧げたい。
いま私の心はその気持ちでいっぱいだ。
そして、私達は――。
◇
無事《ザールツレイム帝国》へと到着した私達はさっそく宮廷に向かうことにした。
そして初めて出会ったゾルディの最初の『主人』。
背が高く、凛とした表情の傭兵長デメル・レインロード。
何一つ。
何一つ、私は彼女に勝っていない気がした。
一気に押し寄せる焦燥感。
しかし今は――。
「デメルさん、ですよね? 貴女――『魔剣ゾルディ』の事は、ご存知ですよね――」
◇
ゾルディを兵士に一旦預け、私はデメルと共に皇帝の元へと連れて行かれる。
しかし、この時の私は予想すらしていなかったのだ。
まさかこの国の皇女がゾルディの次の『主人』となり――。
そしてこの私を地下牢に幽閉することなど、これっぽっちも――。
EXCITEMENT03 最終ステータス
【Name】 魔杖ゾルディ 【Form】 両手杖 【Attribute】 火、陰
【Level】 9 【MAT】 580/840 【EXP】 15243/20000 【EXC】大興奮
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。