結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2014年3月4日 Vol.101
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。 いかがお過ごしですか?
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結城は現在「数学ガールの秘密ノート」シリーズ第三作目の書籍、
『数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数』
http://www.hyuki.com/girl/note3.html
を誠意執筆中です。今週の末くらいに初校が出てきて、 四月末くらいまでには刊行されると思います。 どうぞご期待ください!
これまでたくさん本を書いてきましたが、 新しい本が出版される前というのはいつもどきどきします。
今回のテーマは「三角関数」です。 三角関数というと、微分・積分と同様に苦手に思っている方が多い分野。 サイン・コサインが出てくると、急に顔を曇らせてしまう方もいるでしょう。
『数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数』では「丸い三角関数」という サブタイトルにあるように、円と三角関数の深い関係についてやさしく学びます。 本書を通して多くの方が三角関数への苦手意識がなくなってくれたらいいな、 とそのように思います。
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その『数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数』の執筆が進んだので、 カバーイラストデザインの打ち合わせを行います。 表紙をどんなデザインにしようかという打ち合わせです。 「数学ガール」シリーズを作ってきたいつものメンバーですから、 もう手慣れたもので、打ち合わせは短時間で終了。
でも、短時間で終了したからといって決して手を抜いているわけではありません。
デザイナーさんが前もってサンプル案をいくつか用意してくださっていたことで、 スムーズに話が進みました。 当然ながら、そのようなたたき台があると打ち合わせ時間が有効に使えます。
思い返してみますと、このデザイン打ち合わせに関して、 デザイナーさんはもちろんのこと、編集者も、 私もそれぞれに資料を準備してきていました。
その場で「えーと」と考えることも必要ですが、 前もって言いたいことをまとめておけば時間の無駄はありません。 誰も「前もって資料をご準備ください」なんて言わないけれど、 状況をよくわかっている人たちなので、準備万端です。 まあ短時間で終わるわけですね。
しかもその「資料」は全員が一、二枚の紙にまとめており、 ながなが書いている人は誰もいません。 プロフェッショナルな方々との仕事は短時間で効率良く進みますね。 無駄な時間を使うことなく、品質優先で、さくさく話が進みます。
このような方々と仕事ができるのはほんとうにうれしいことです。 感謝、感謝。
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書籍の執筆・校正が大詰めを迎えてくると、 たくさんのTODO(トゥードゥー:やるべき作業項目)がやってきます。 結城はこのTODOをローマ字読みして「トドちゃん」と呼ぶのが好きです。
「TODOを処理する」のではなく「トドちゃんを海に帰す」という具合。 このように呼ぶことで、TODOに対する「作業しなくちゃ」という感覚を 少しでも和らげようというのです。
以前(2005年)に「トドちゃんのアスキーアート(AA)が欲しいなあ」と日記に書いていたら、 読者の方が描いてくださいました。それを修正したものをときどき使います。
◆トドちゃんのAA
http://www.hyuki.com/d/200512.html#i20051213105853
ε( v ゜ω゜) < TODO 78頭
こんな感じです(メールだとうまく表示されないかも……)。
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先週は寒い冬が一休みしてぽかぽかした天気が続きました。 確か「日差しが温かい冬の日」のことを「小春日和」というなあと思い出して、 ツイッターで、
小春日和に薄手のコート
とつぶやきました。 すると、複数人から「小春日和は初冬に使う表現ですよ」と 教えていただきました。おお、そうなんですね。
しかし、理解しても気持ちがついてこなかったので、
初冬だったら小春日和とでも表現したくなる天気に薄手のコート (^^)
としつこくツイートしてしまいました。 正しい用法はさておき、「小春日和」ってすてきな言葉だと思います。
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先日からこの結城メルマガでも何回か書いていますが、 「マガジン航」というサイトで、結城の短期集中連載「私と有料メルマガ」が始まりました。 現在は「第一回 皮算用編」が公開されています。
◆短期集中連載「私と有料メルマガ」第一回 皮算用編
http://www.dotbook.jp/magazine-k/on_my_paid_email_magazine_01/
この記事の冒頭でも触れていますが、結城はこの短期集中連載で、
・「結城メルマガ」を通して、私がいかに多くのはげましを読者からもらっているか
・「結城メルマガ」が、自分の仕事全体にどれだけよい影響を及ぼしているか
を書きたいと思っています。お読みいただければ感謝です。
また以下にはこの連載記事を執筆するにあたっての結城の考えを書きました。
◆ライター必見!結城浩の「私と有料メルマガ」連載記事
http://togetter.com/li/635379
「結城メルマガの読者」というのは、何を隠そう「あなた」のことです。 いつもありがとうございます!
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自分がコンピュータの画面で見ている画像(スクリーンショット)を 切り出して誰かと共有したい。そういうときに使う Gyazo (ギャゾウ)というサービスがあります。
◆Gyazo
https://gyazo.com/ja
起動すると、マウスカーソルが画面の範囲を切り出すモードに変わり、 範囲を決定すると即座にサーバに送信され、そのURLが返される。 あとはそのURLをTwitterでツイートしたり、ブログに貼り付けたり、 メールで送れば共有完了。とても手軽で便利なサービスです。
実はこのGyazoのサーバもクライアントもオープンソースとして公開されています。 ですから、自分専用のGyazoを作って利用することも、 プログラミングの経験がある人ならばそれほど難しくありません。
執筆の気分転換に(といいつつ二時間くらい掛けてしまいましたが)、 自分用のGyazoを作ってみました。いきなりサーバに送るのではなく、 いったん編集ソフトを経由して送るように修正をしています。
◆スクリーンショットの瞬間共有サービスGyazoを自サイトに設置
http://note.textfile.org/20140226/gyazo/
こういうときには自分でプログラムを書けるというのが とってもありがたいし、楽しいですね。
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さて、そろそろ結城メルマガを始めましょう。
今回は「フロー・ライティング」をお送りします。 文章を書くためのメモの作り方についてのヒントです。
「文章を書く心がけ」のコーナーは「原稿ファイルのバージョン管理」について。
Q&Aのコーナーでは「いかにして問題をとくか」について。
そして、通算100号のプレゼント企画のご連絡です。
それではどうぞお読みください!
目次
- はじめに
- フロー・ライティング - 前もってメモを書く
- Octopressでブログを始める
- 原稿ファイルのバージョン管理 - 文章を書く心がけ
- Q&A - 『いかにして問題を解くか』との出会いについて
- 通算100号記念サイン本プレゼント企画について
- 次回予告
フロー・ライティング - 前もってメモを書く
「フロー・ライティング」のコーナーです。 このコーナーでは、結城がメルマガ上で書いている新しい本 『フロー・ライティング』の草稿を公開しています。
書き物に集中するとき、多くの書き手は 「フロー状態」と呼ぶ無我夢中の状態に入ります。 一定時間、自分の執筆に没入し、 それが過ぎるとハッと我に返り、非常に強い満足感を得ます。 結城は、このことについての本を書こうとしています。
今回は、フロー状態に入る前のお話、 ちょっと地味目の「メモ」についてです。
お手数ですが、以下のURLからPDFをダウンロードしてお読みください。
◆フロー・ライティング - 前もってメモを書く
http://www.hyuki.com/mm/pdf/2014-03-04_flow7759.pdf
ご意見、ご感想などお待ちしています!
なお、過去に配送した「フロー・ライティング」のタイトルとVolについては 以下のサイトにまとめてあります。必要に応じてご参照ください。
◆書籍『フロー・ライティング』 / 夢中になって書く。
http://www.hyuki.com/flow-writing/
Octopressでブログを始める
ここしばらく「今風のブログを始めたいな」という気持ちを持っていました。
結城のメインのブログ(Web日記)は「結城浩の日記」で、 ここ十数年同じフォーマットで運営しています。
◆結城浩の日記
http://www.hyuki.com/d/
これはこれでずっと継続するつもりなのですが、 もうすこし「今風の」ものも試したいとずっと思っています。
「今風」の定義はむずかしいですが、 特に気になっているのは「レスポンシブデザイン」です。 つまりスマートフォンで見てもタブレットで見てもPCで見ても、 最適なデザインで表示されるようなブログにしたい。
たとえば、Tumblr(タンブラー)はずっと毎日の予定を記録するのに使っています。
◆結城浩のタンブラー
http://hyuki.tumblr.com
Tumblrはブログを書くにはとてもいいプラットホームなんですが、 プログラミング関連の内容を書くのはちょっとつらいものがあります。 というのは、コマンドやプログラムのソースコードなど、 「書いたものをそのまま表示する」(verbatimな文字列表示)を書くのが 容易ではないからです。
プログラミング関連の情報を書くときには、 結城はずっと「結城浩のはてなダイアリー」を使っていました。
◆結城浩のはてなダイアリー
http://d.hatena.ne.jp/hyuki/
技術的な内容を書くときにいいなと思ったのは、Qiita(キータ)というサービスです。 ここは技術者向けのソーシャルな活動を中心としているので、 コードをはじめとする技術的な内容を書く環境が整っています。 Kobitoという執筆用のアプリもあり、さらに、Qiitaに参加しているのが技術者ですから、 読者がたくさんいるというのも大きなメリットです。
◆Qiita - プログラミング知識を共有しよう。
http://qiita.com/hyuki
世界中のプログラマが集う場所としてはGitHub(ギットハブ)が有名です。 ここは、バージョン管理ツールgitを使って オープンソースなソフトウェアをホスティングするサイトです。 コードを共有する専門のサイトですから、 コード公開にはもってこいの場所です。
◆GitHub
http://github.com
大きなプロジェクトをホスティングすることもできますが、 「自分はそんなに大がかりなプログラミングを行うわけじゃない」 という人はGitHubの中にあるgist(ギスト)というページが便利です。 これを使えば、小さいコードやコマンドの説明、設定ファイルなどをさくっと公開できます。
◆Gists
http://gist.github.com
当然ながら、技術者向けサイトのデザインや使い勝手は自分にとてもしっくり来ます。
技術者向けということを離れれば、Vol.099でもご紹介した WordPress(ワードプレス)もいいですね。 現在、普通のビジネス用のサイトやブログを作るならいいプラットホームだと思います。
◆WordPress(ソフト配布)
http://ja.wordpress.org
◆WordPress(ホスティング)
http://wordpress.com
技術者向けのブログツールとして、 Octopress(オクトプレス)というソフトもあります。
◆Octopress
http://octopress.org/
これはオープンソースのソフトウェアで、 自分で書いたブログ用のファイルをHTMLに変換してくれるものです。 この手のソフトはたくさんあるのですが、Octopressは単に変換するだけではなく、 ブログを作るためのテンプレートが一式用意されているのがいい点です。
また、Octopressを使うのは技術者なので、 技術者がほしがるプラグインが多数開発されているのも魅力です。
結城は先日一日Octopressをいじって、さくらVPS上にブログを設置してみました。 以下がそのサイトです。
◆note.textfile.org (結城浩のブログ)
http://note.textfile.org/
このサイトは、 結城が持っている textfile.org というドメインのサブドメインで運用しています。
WebサーバはさくらインターネットのVPS上で動いています。
結城は自分の手元にあるMacBook Air上でブログのエントリを書き、 Octopressを使ってHTMLを作成します。
MacBook AirとさくらVPSとはDropboxというクラウドサービスで同期させていますから、 MacBook Air上でHTMLを作成して少し経つとWebページとして閲覧できるようになります。
一日いじった様子は以下のエントリに書きました。
◆Tumblr, WordPress, GitHub Pages, Octopress, Jekyllを使った一日
http://note.textfile.org/20140219/diary/
ソフトウェアは実際に自分の手を動かして試すと理解が進みます。 ブログ上の情報を見るときも、自分の現在の問題を解決するためにはどうするか という視点で見るから作業効率がよくなります。
そして、ある段階までたどりつくと、 「うん、ここまでのところは自分は理解したんだな」と自信がつきます。 その証拠にソフトウェアが動いているからです。
プログラミング技術やソフトウェアは自学がしやすい分野ですよね。
原稿ファイルのバージョン管理 - 文章を書く心がけ
今回の「文章を書く心がけ」は「原稿ファイルのバージョン管理」についてお話しします。
先日こんなことを書きました。
結城の執筆ではバージョン管理システム使うほどじゃないので、
単にzipするだけでバージョン管理ソフトは使ってない。
こんなことを書いたばかりでなんですけれど、 最近バージョン管理ツールを使うようになりました。
それは先ほどのコーナーでお話ししたOctopressをいじりはじめた影響もあります。 プログラムをいじるとどうしてもバージョン管理ツールが必要になります。
・この機能がうまく動かないので修正
・新しい機能をちょっと追加する
・この修正はやっぱりやめよう
というときにバージョン管理ツールがなかったら たいへんな時間をロスすることになるからです。
原稿ファイルの差分表示
複数人でプログラムを修正するときには バージョン管理ツールは必須ですが、 一人で原稿を書いている場合には、 バージョン管理ツールは必須とまではいえません。
しかし、原稿を書くのが一人だとしても、 バージョン管理ツールが効いてくる局面があります。 それは、
・ある時点と現在との「原稿ファイルの差分」を見たくなるとき
です。 たとえば先日結城は『数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数』の原稿を 編集部に送りました。LaTeXのファイルや図版ファイルです。 編集部ではこのファイルを元に初校を作ります。
編集部の方でその作業をしている間も、結城の方では修正を行います。 読んでいてまちがいを見つけたり、 レビューアさんからの指摘事項を反映したりするからです。
そうするとどうしても、
・編集部に送った時点と現在との「原稿ファイルの差分」
が生じてしまいます。 初校の修正を行うときにはこの「原稿ファイルの差分」を 編集部側に反映する必要があります。
そんなとき、バージョン管理ツール(特にその「差分表示」機能)が便利です。
具体的には、編集部に送った時点と現在との間で、
・違いがあるファイルはどれか
・ファイルの違いはどこか
・そもそも送っていないファイルはどれか
などをビジュアルに見ることができるのです。 たとえば、以下のような感じになります(画像ちょっと大きめです)。
結城はgitを使っていますが、そのGUIフロントエンドとしてSourceTreeを使っています。
◆SourceTree
http://www.sourcetreeapp.com
ここまでは「原稿ファイルをバージョン管理ソフトで管理すると差分がわかって便利」というお話しでした。
クラウドで原稿ファイルを管理
gitでバージョン管理するときの「場所」をリポジトリといいます。 gitではローカルなマシン上にリポジトリを置くだけではなく、 リモートサーバ上でのリポジトリと連動させることもできます。
リモートリポジトリを使うということは、 クラウドで原稿ファイルを管理していることになり、 原稿のバックアップの観点から大変便利になります。 手元で使っているマシンがいきなり壊れたとしても、 クラウド上には原稿ファイルが(過去の履歴とともに)完全に残っているわけですから。
無料でGitHubを使うと、リポジトリは公開になります。 オープンソースソフトウェアなら問題ないのですが、 そのままでは原稿ファイルを管理するのには向きません。
しかし、BitBucketというサービスでは、 無料でプライベートリポジトリを持つことができます。 ユーザが5人まで無料のようです。
まとめ
先日は「自分の執筆にバージョン管理ソフトはいらない」とうそぶいていましたが、 今回は一転してバージョン管理の話題でした。
たとえ一人で原稿を書いている場合であっても、
・原稿ファイルの差分表示
・クラウドで原稿ファイルを管理
に興味がある場合には、試してみてはいかがでしょうか。
Q&A - 『いかにして問題を解くか』との出会いについて
Q&Aのコーナーです。 このコーナーでは結城メルマガの読者さんからの質問にお答えしています。
一部文章を省略・修正している部分がありますがご了承ください。
質問
G・ポリヤの『いかにして問題を解くか』について書かせていただきます。
この本は『数学ガール』第1巻の参考文献として一番に上げられており、 きっと特別な思いをお持ちなのだろうなと思います。 「秘密ノート」の方では書名も出てきましたね。 また、「僕」が自室で問題を解いているシーンの描写も、 この本に大きく影響されているように思えます。僕が一番好きなシーンです。
僕自身とこの本の関わりですが、父の書斎に昔から置いてあり、 小さい頃手に取ったことがありました。 ですが、訳が悪いせいかかなり読みにくく感じ、あきらめてしまいました。
高校3年生のときに、書店の洋書コーナーで原著の"How to solve it"に出会い、 英語の実力アップもかねてしばらく読んでいました。 本当に面白く、繰り返し学びたいと思える本でした。
そこで質問させていただきます。 結城先生は、いつ、どのようにしてこの本と出会ったのでしょうか。 そして、この本から一番学ばれたことは何でしょうか。
メルマガの中でお答えいただければ幸いです。 重ね重ね、結城先生、ありがとうございます。 これからも「理系にとって最強の萌え」を。
回答
ご質問ありがとうございます。 また結城への応援メッセージもありがとうございます。
ポリア(結城もよく「ポリヤ」と表記するのですが、 書籍の原作者名としては「ポリア」と表記されていますね)の 『いかにして問題をとくか』は私のとても好きな本です。
初めてこの本に出会ったのがいつかは覚えていません。 たぶん高校時代だったと思います。
当時「洋書にチャレンジする」のにハマっていた自分は、 翻訳書を読んでから"How to Solve It"を入手し、 読もうと努力していました。 そういう意味ではちょうどあなたと同じような体験をしていたことになりますね。
ただ、正直に言いますと、 私の当時の英語力ではそれほど読みこなせなかったですけれど。
結城は「問題解決をする」というものの考え方が好きです。 問題を解決することそのものも好きですが、 問題にどのようにアプローチして解決に至るのか、 そういう道筋をつけていくのが好きです。
「数学ガール」シリーズのキャラクタたちも私と同じように、 問題へのアプローチに関心があるようですね。 特に「僕」とテトラちゃんはその傾向が強いかもしれません。
世の中を生きていく上で「問題」から逃れることはできません。 学校を卒業してしまえばいわゆる試験やテストの問題からは 逃れるかもしれませんが、もっと大きな問題は次々にやってきます。
人生に関わる重要な問題ならまだしも、 「これ、私が解かなきゃいけないの?」という切ない思いを抱くこともあります。
そんなとき、「問題をどう解くのか」という、 一つメタなレベルに思考をシフトするのが好きです。 「問題そのものを解く」のではなく 「問題をどのように解くか」という問題を解くつもりになるのです。 そのシフトは私のお気に入りの思考法であり、 「解きたくもない問題をどのように解くか」という問いへの、 自分なりの解法でもあります。
ポリアの「いかにして問題をとくか」というのは、 数学の発見的解き方を解説した良書であると思います。 数学に限らず、問題にどう取り組むかも書かれていますね。
確かに訳文はこなれていないところもありますし、 本文の中には意味のよくわからないところもあります。 しかし、そのためにかえって再読するたびに発見があるのもほんとうです。 読み返して飽きることがありません。
私の書く「数学ガール」シリーズや「数学ガールの秘密ノート」シリーズでも、 「問題の解き方」……というか「問題への取り組み方」というのは大切なテーマの一つです。 そのテーマがあるおかげで、数学に対する興味がそれほどない読者にも知的興味を持って 楽しんでいただける本になっていると思います。
その意味でも、私の本の中にはポリアの『いかにして問題をとくか』が 強く息づいているといえます。
実は私の書く本は『いかにして問題をとくか』を実践している本と 言えるかもしれませんね。 ポリアの本の場合には、本を読んだ読者が問題を解くわけですが、 私の本の中では登場人物が問題を解いているのですから。
「この本から一番学んだこと」というのは一言でまとめることは難しいですが、 問題を「大きなかたまり」として見るのではなく、 「いくつかのステップ」に分けて見るということでしょうか。
そして大事なのは、問題は解いて終わりではないということ。 問題は一つ解いて終わりなのではない。 その問題を解くことが次の問題をよりよく解くための道しるべになってくれる。 だからこそ解いた後の「ふりかえり」が大事になる。
……そのようなことを『いかにして問題をとくか』から学んだように思います。
ご質問ありがとうございました!
通算100号記念サイン本プレゼント企画について
さて、この結城メルマガは今回でVol.101になります。 みなさんたくさんの応援をありがとうございます。
また先週のVol.100でご案内した結城のサイン本プレゼントへの たくさんのご応募ありがとうございました!
本日2014年3月4日(火)中に抽選を行い、 当選者にはご応募いただいたメールアドレスにご連絡いたします。 Webなどでの発表は行いません。
当選した方は、折り返し送付先住所をお知らせください。 ご住所の連絡をいただいてから、2014年3月26日(水)までに発送する予定です。
どうぞお待ちください。
次回予告
さて、今回の結城メルマガは以上です。 いかがでしたか?
ご感想・ご意見お待ちしています。ツイートもよろしくです!
来週は、
数学文章作法 推敲編
をお届けする予定です。
どうぞお楽しみに!
チャンネルに入会して、購読者になれば入会月以降の記事が読めます。
入会者特典:当月に発行された記事はチャンネル月額会員限定です。
