はだしのゲン:泉佐野市長「差別的表現見ぬふりできない」

毎日新聞 2014年03月20日 15時16分(最終更新 03月20日 16時48分)

 「はだしのゲン」を小中学校の図書室から撤去させていた大阪府泉佐野市。千代松大耕(ひろやす)・泉佐野市長は計測機器メーカー社員や市議などを経て、2011年4月、自民の推薦で市長に初当選した。入学式や卒業式で教職員に国歌斉唱を義務付ける条例を大阪府や大阪市に続いて制定。府が12年に行った学力テストについて、府教委の方針に反して学校別結果を公表したり、市の命名権の売却先を公募するなどし、議論を巻き起こしてきた。

 「はだしのゲン」の撤去・回収については20日、市長と中藤辰洋教育長がそれぞれ記者会見し、経緯を説明した。市長は「今の時代、差別的表現を見て見ぬふりはできない。目についたものから対応を考える必要がある」と述べた。さらに、「市民の指摘で実際に読み、人権担当の部署にも意見を聞いた。その結果、不適切な表現について、子供たちにきちんと指導をする必要があると考えた」と説明。松江市の事例も承知したうえで判断したといい、「批判は起きるかもしれないが、見逃していいとは思えない」と話した。「作品中に出てくる天皇制や反戦についての主張を問題視しているわけではない」としている。

 市教委は回収した本を段ボール3箱に入れ、カバーをかけて倉庫に保管。「子供たちの人気も高く頻繁に読まれている作品」(市立校長会)だけに、ぼろぼろになったものも多い。教育長は「教育委員にも集まって見てもらう必要があり、たくさんの部数があった方が良いと考えた。一律に回収ということは迷いもあったが、今は望ましくなかったと思う」と釈明した。【山田泰正、松井聡】

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