原爆症:国新基準却下の4人 大阪地裁が認定

毎日新聞 2014年03月20日 23時23分

 原爆症と認めなかった国の処分取り消しを求めた集団訴訟で、大阪地裁(田中健治裁判長)は20日、被爆者4人全員を原爆症と認め、国の処分を取り消した。国は今年1月、認定の範囲を広げたとする新たな基準を導入したが、4人は新基準でも却下されており、国の審査のあり方が再び問われそうだ。

 新基準で却下された被爆者を、原爆症と認めた司法判断は今回が初めて。

 4人は大阪、兵庫、奈良の各府県の男女(69〜85歳)。原爆投下時か数日以内に長崎市で被爆し、放射線の影響で肝がんや狭心症を患ったとして、2008年以降に原爆症の認定を申請した。しかし、国は旧基準に基づく審査で、放射線との因果関係や医療を受ける必要性を否定、却下した。

 判決はまず、旧基準の科学的合理性を認める一方、爆心地から1・5キロ以遠での被爆や内部被ばくの影響を過小評価している疑いが強いと指摘した。そして、原爆症かどうかの審査には、「被爆状況、被爆後の行動などの影響を十分検討するべきだ」と判断した。

 そのうえで、4人のうち3人は、原爆投下後に被爆地に入る入市などで相当程度被爆したと認定、それぞれの疾患との因果関係を認めた。医療を受ける必要がないとして却下された1人に関しても「病気の悪化が予想され、医療を受ける必要がある」と断定、4人全員を原爆症と結論付けた。

 一方、国家賠償請求は「国の却下は違法とまではいえない」として退けた。

 訴訟は昨年結審し、審理対象は旧基準だけに限られた。今年に入り、4人を除く他の原告3人は新基準で原爆症と認められた。

 旧基準は、集団訴訟で敗訴が続いた国が08年4月に見直したもの。その後、国は約3年かけて現在の新基準を作った。一部の疾病について要件から「放射線起因性」を外すなど、国は旧基準より認定の範囲を広げたとしているが、被爆者らは「範囲が広がったとはいえない」と批判している。

 厚生労働省原子爆弾被爆者援護対策室は「判決を詳細に検討し、関係省庁と協議したい」とコメントした。【内田幸一】

 ◇原爆症

 原爆被災による健康被害の総称。認定されると、月約13万5000円の医療特別手当が支給される。審査対象は被爆者健康手帳を持つ人。国は、爆心地から被爆地点までの距離など一定の要件を満たし、がん、白血病など3疾病にかかれば原則として認定、心筋梗塞(こうそく)など4疾病は積極的に認めるとするが、申請却下が相次ぐ。

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