原爆症:何が救済か? 国新基準のあり方問う大阪地裁判決

毎日新聞 2014年03月21日 03時00分

 機械的に要件を当てはめるのではなく、疑いがあれば積極救済するよう裁判所が求めた。新基準で却下された被爆者を原爆症と認めた大阪地裁判決は、認定審査のあり方が依然として不十分だと、国に重い課題を突き付けたといえる。

 原爆症の認定を巡っては、国と被爆者の対立がずっと続いている。被爆者側が理不尽な要求をしているのではない。これまでの集団訴訟でことごとく負けながら、かたくなな姿勢を国が改めないからだ。

 国は認定の基準を繰り返し見直してきたが、被爆者の救済につながるものだったとは言えない。今回の判決を含めて司法が求めているのは、被爆との関連が疑わしいケースは、積極的に認定することだ。

 国は導入したばかりの新しい基準で認定範囲を広げたと主張している。しかし、機械的な審査を続けている限り、どんな要件を設けても、原爆で健康被害を受けた人を救済することはできない。

 被爆者は高齢化が進み、残された時間は少ない。国は被爆者援護法の精神に立ち返り、審査のあり方を抜本的に見直し、被爆者との争いに終止符を打つべきだ。【内田幸一】

 ◇人体への放射線の影響に詳しい村田三郎・阪南中央病院(大阪府松原市)副院長の話

 被爆者の実態に即した判決で、新基準の要件緩和が不十分だと実質的に認めたと言え、評価できる。国が認定のあり方を根本的に改めなければ、これからも裁判が延々と繰り返されるだけだ。国の姿勢が問われている。

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