ネット上の仮想通貨ビットコインをめぐる騒動が続く。その仕組みを考えついたとされる謎の男性「サトシ・ナカモト」を米誌がみつけたと報じた。名指しされた本人はかかわりを否定した。真相はいかに▼どういうお金なのか、古い頭では依然のみ込めていない。そういえば、お金であってお金でないものが他にもあったと思い出した。地域通貨である。こちらはまだわかりやすい。範囲の限られた「顔の見える市場」で使われる決済手段だ▼00年前後に各地でうまれ、ブームの観があった。ものとの交換というよりは、助け合いなどの場面でやりとりし、人と人を結びつける役割が期待された。一時の活況はないが、いまもあちこちで健在である▼鉄腕アトムが描かれた紙幣「アトム通貨」の単位は馬力だ。1馬力が1円。10年前に早稲田大近くの商店街で始まった。例えば自分の箸を持参すると100馬力もらえる飲食店あり、途上国産の豆を買うと10馬力もらえるコーヒー店あり▼街の清掃に参加すると50馬力進呈といった催しもある。キャラクターの知名度が高く、コレクションの対象にもなる。その人気に、札幌から沖縄まで続々と支部ができた。今年度の流通量は全国で2千万馬力という。かなりの規模だ▼岩手県宮古市では震災後に「リアス」という通貨ができた。支援したいという全国の人々に購入してもらい、被災者に贈る。それが地元で買い物に使われ、生かされる。どちらにも仮想でない現実のぬくもりがある。