基準内被ばく:「原発作業、がんの原因」労基署、労災認定

毎日新聞 2014年03月20日 07時00分(最終更新 03月20日 09時28分)

取材に応じる元原発作業員の男性=神戸市中央区で2014年3月19日、宮武祐希撮影(一部画像を加工しています)
取材に応じる元原発作業員の男性=神戸市中央区で2014年3月19日、宮武祐希撮影(一部画像を加工しています)

 原発の検査に約27年従事し、悪性リンパ腫を発症した神戸市北区の男性(62)について、神戸西労働基準監督署が労災と認めたことがわかった。被ばく線量は労災認定の基準を超えていなかったが、労基署は医師の所見などを評価し、原発作業との因果関係を認めた。

 がんで労災認定された原発作業員はこれまで男性を含めて13人、悪性リンパ腫では男性が5人目とみられる。

 男性の代理人の弁護士らによると、男性は1983年4月、関西電力の3次下請けである神戸市内のメンテナンス会社に入社した。一線を退いた2010年6月までの約27年、関西電力の美浜、高浜、大飯(いずれも福井県)の各原発などを中心に定期検査の作業をしてきた。

 主な作業内容は、冷却のために原子炉内を循環させた汚染水が通過する1次系配管のバルブ交換などだった。しかし、11年7月の会社の健康診断で心臓に腫瘍が見つかり、その後、悪性リンパ腫と診断された。手術や化学療法でおおむね回復し、今は労災の休業補償を受けながら経過観察を続けている。

 男性の放射線管理手帳の記録では、10年6月までの累積被ばく線量は計168.41ミリシーベルトで、平均すると年約6ミリシーベルトだ。国が定める原発作業員の被ばく限度は5年で100ミリシーベルト、1年で50ミリシーベルト。これとは別に、08年にがんの労災認定基準を作り、悪性リンパ腫は年25ミリシーベルト以上とした。男性はいずれの基準も超えなかった。

 代理人の藤原精吾弁護士(兵庫県弁護士会)は「基準を超えなくても原発作業が危険であることを示した画期的な判断だ」としている。【五十嵐和大】

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