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営業にFAXを使ったら何か罪になるのでしょうか?

Q.

 私の会社では、週1ペースで各企業にFAXによる営業活動をしています。

 ある日、FAXを送った会社から、「業務妨害罪」で訴える!と電話が来ました。

 1度FAXを送って「配信停止」を依頼してきた企業へは二度と送らないようにしています。営業目的でFAXを送ることは、たった一度でも罪になってしまうのでしょうか。

 また、先方は「無断で使われた用紙代とトナー代を勝手に消費されたことによる損害賠償を請求する」といっています。民事上でも責任を追及されてしまうのでしょうか。

(30代:男性)

A.

 相手企業にFAXを送る方法で営業活動をする行為は、社会通念上営業活動を行なうために相当な回数にとどまる限り、業務妨害罪233条後段、234条)にあたることはありません。

 御社では、配信停止を依頼してきた相手方には送らないようになさっているというのですから、何の問題もないと思われます。

 また、犯罪が成立するためには、その犯罪を行なう故意がなければなりません。本罪では、「相手方の営業を妨害してやろう」という故意が必要なのです。

 仮に、FAXの誤作動によって、ある会社に他の会社の分までが送信されてしたらどうでしょうか。

 この場合、客観的には、FAXの送信回数は社会通念上相当と思われる範囲を超えています。しかし、この行為は過失により実現されたにすぎず、故意が欠けています。

 したがって、たとえば過失傷害、過失致死のように、過失を特別に処罰する過失処罰規定がない限り、処罰されることはありません。本罪には、過失処罰規定はありませんので、万一、この事例のようなことになったとしても、刑事責任を問われることはありません。


 電話やFAXにより業務妨害罪が成立する例としては、たとえば3ヶ月の間に970回の無言電話を中華料理店にかけた行為(東京高等裁判所判決昭和48年8月7日)などがあります。ただ、これほど多数回ではなくても、電話やFAXを使えなくする目的で、ことさらに多忙な時間・時期を見計らって通信するような場合は、本罪に該当する可能性があります。


 「無断で使われた用紙代とトナー代を勝手に消費されたことによる損害賠償を請求する」とのことですが、ここまでくると、笑いさえ誘われるような気がします。

 こんな請求が認められるとすれば、電話、FAX,DM等による申し込みの誘引行為は一切できなくなり、商取引が成り立ちません。

 もし本当に、一枚の紙とトナー代のために訴えを提起して損害賠償を請求しようと考えているなら、およそ常軌を逸しているというべきです(あるいは、「趣味の世界」というべきでしょうか。)。

 相手にされないのが賢明と考えます。

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