ベビーシッターが、預かった子どもの死体遺棄容疑で逮捕された事件。ネットを通じた託児の広がりがあぶり出したのは、仕事と子育ての両立に悪戦苦闘する親たちの姿だ。

 社会はどう応えるのか。公的な支援策の改善、職場の理解など多面的な対応が必要だ。

 緊急の場合の公的な託児は今でもある。「一時預かり」、宿泊を伴う「ショートステイ」、夜間に預かる「トワイライトステイ」といった事業を市区町村が行っている。

 ただ、利用実績は低い。一人親世帯を対象に「公的制度等の利用状況」を聞いた厚生労働省の調査では、母子世帯のショートステイの利用経験者は1・2%だけ。未利用者の54・6%が制度を知らなかった。

 制度を周知させる努力は必要だが、もし本当に頼れる制度なら親の間で口コミで評判になっているはずだ。病気の子どもは対象外だったり、年齢制限があったり、預ける場所が遠かったりと、使い勝手の悪さがネックになっている。

 厚労省によると、母子家庭の母自身の平均年収は223万円。お金も時間も余裕がない中で、託児ニーズは切実である。

 公的な制度の改善に時間がかかる現状を考えれば、ネットで仲介されるサービスを制限するだけでは解決にはなるまい。まず託児業者に対する安全確保のガイドラインや情報開示の仕組みづくりを進めるべきだ。

 さらに、必要性の高い病児保育を含め、金額的に利用しやすく、質も向上させるには、公費の投入が必要になる。

 だが、財源は十分か。15年度のスタートを目指している新しい子育て支援制度は、検討中の充実策をすべて実施する場合、年間約1・1兆円が必要となるが、消費増税で確保されるのは7千億円だけだ。

 自民、公明、民主3党は一昨年6月、子育ての財源確保をめぐって、「政府は最大限努力する」とうたった。どう賄うか、早く議論を深めて欲しい。

 子育てには、個々の職場での理解と支援も大切だ。05年の改正育児・介護休業法により、就学前の子どもが病気やけがをした際、非正社員を含めて、看護休暇が1年間に5日とれる制度が導入されている。

 実際にとれるかどうかは職場の雰囲気が影響する。上司や同僚の冷たい視線を浴びながら休んだり、早退したりするのはつらい。子育て支援は、自分が直接かかわっていなくても、職場や地域での助け合いを通じ、誰もが貢献できる。