第6回国際アニメ祭ファントシュ ( Fantoche ) が、9月11日から16日まで開催された。国際部門のハイリスク賞 ( 最優秀賞 ) とホットタレント賞 ( 準優勝 ) および、ワールド・ワイド・ヒット部門の観客賞 ( 優秀賞 ) はいずれもロシアのアニメが受賞した。
スイスの保養地バーデン ( Baden ) で開催されたアニメ祭ファントシュには、6日間で約2万5000人のアニメファンが訪れた。
国際部門とワールド・ワイド・ヒット部門の2つのコンペでは18カ国から選ばれた66本が競い合った。国際部門には日本から前回も参加した高橋慶氏が「A MAZE ( アメーズ ) 」を出品したが、惜しくも受賞を逃した。高橋氏は「次回もぜひ選出され、バーデンへ行きたい」と東京から電話でコメントを寄せた。
あらゆるアニメを紹介
アニメ文化はますます拡大している。作品選出担当のドゥシャ・キストラーさんは「2つのコンペに送られてきた作品は、51カ国から826本もありました。最高記録です。コンピュータにより製作時間が短縮されたことも、アニメの大量生産につながっているのでしょう。また、ビデオゲームから携帯用のアニメまで、クリエーターの仕事は多方面にわたってきました」とそのブームの背景を説明する。
しかし、キストラーさんはいまのアニメの質が向上したとは認めているわけではない。ただ「膨大な作品の中から、フェスティバルを訪れたアニメファンが、今のアニメの全容を知ることができるような選考です」と、観客にその質などを判断して欲しいと語る。
今回7本上映された長編アニメのうち、3本は日本製だった。特に注目を集めたのは、日本では上映されていない「MIDORI」 ( 日本名「少女椿」原田浩プロデュース兼監督、丸尾末広原作 ) だ。過激なアニメとして紹介されたこともスイス人の興味を呼んだようだ。上映後、観客は原田浩氏に多くの質問を投げかけた。「過激と紹介されることは、かまいません。それで観てくれるのなら」と原田氏は語る。「訴えたいことは愛と平和。外見で人を判断しないといった差別についてです。しかし、それを前面に出したら教育的になってしまう」とも言う。「日本では25カ所ぐらいカットすれば上映可能だが、現在多方面の圧力があり、自主規制している」という。
スイス勢
スイスではやっと、潤沢な資金を背景に「Max & Co. 」( サミュエルとフレデリック・ギヨーム兄弟製作 ) といったアニメが製作されるようになり、公開前から話題になっている。一方、今年のファントシュで紹介されたスイス製アニメは、前回のフェスティバルに引き続き、個人の製作者による少ない予算で作られた短編に限られた。
今回上映された24本は、手描きやコンピュータ・グラフィックによる作品が中心で、「Max & Co.」のように人形を使ったものは少なかった。実際に俳優が演技をした映像にコンピュータで手を加えた「Snatch & Kittie」 ( ニコラス・シュタイナー製作 ) や「City Wasp」 ( シュテファン・ヴィキ、ステーィブン・トート共同制作 ) などは、従来の映画とアニメの垣根が段々と低くなっていることを思わせる作品だ。
今年のファントシュに訪れたアニメファンは、前回より25%増えおよそ2万5000人に上った。次回は2009年、9月上旬に開催を予定している。
swissinfo、佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) バーデンにて