1、はじめに・・事件発生から1ヶ月
こんにちは。月刊精神分析編集部Aです。今月もまたお会い出来ましたね。^^
今月の月刊精神分析のテーマは「京都 祇園 自動車暴走事故」です。
平成24年04月12日、事件の一報を知った時、テレビから流れてくる映像をみた私は「あぁ、秋葉原無差別連続殺人事件のようだ」と思いました。普段は大勢の人が行き交う繁華街。事件の成り行きを見守る群衆と野次馬。警察車両と救急車。必死で重傷者の救命を試みる医療チーム。事件の加害者がナイフを振り回したわけではありませんが、現場の様子は、何もかもあの事件とそっくりです。
報道の一報は以下の通り--------------
祇園で歩行者に車突っ込む、5人が心肺停止
読売新聞 4月12日(木)13時42分配信
12日午後01時過ぎ、京都市東山区大和大路通四条の交差点で、信号待ちをしていた歩行者の間に、乗用車が突っ込んだ。
同市消防局によると、この事故で歩行者ら少なくとも7人が病院に運ばれたが、5人が心肺停止の状態。7人は男性2人、女性が5人という。
現場は、京阪祇園四条駅の東側の四条通沿い。京都有数の繁華街の一角で、近くには劇場「南座」がある。
目撃者の話によると、車がバスと衝突後、信号待ちをしていた観光客風の歩行者らを次々となぎ倒し、さらに走って道路わきの電柱に衝突、大破したという。
現場では倒れた人が多数おり、救急隊員らが心臓マッサージをするなどして、救助に当たっている。
最終更新:4月12日(木)13時47分
以上--------------
この時点でも、大きな事故だと言う事は認識できていたのですが、続けて報じられた藤崎晋吾(ふじさきしんご)容疑者の写真は今風の草食系男子のそれで、まさかこんな人が大事件を起こすなんて・・・と事件に違和感を覚えました。これも秋葉原無差別殺傷事件の時とそっくりです。事故後も薬物中毒者であったとか、素行に問題があったと言う話はでてきません。周囲に与えている印象もよく「近所の優しいお兄ちゃん」とか「ちゃんと接客のできる人」や「愛嬌のある挨拶をしてくれる子」と言う評価が聴こえてくる。普通に社会生活を送っている人が突然、何人もの人の命を奪う事件の加害者になってしまう事が昨今の自動車関連の事故の特徴の様な気がする。
月刊 精神分析 2009年09月号 秋葉原無差別殺傷事件 加藤智大
この記事を執筆している5月12日インターネット上に下記の記事が掲載されました。
以下引用-------
原因究明なお難航 祇園暴走事故1ヵ月
京都新聞 5月12日(土)10時19分配信
京都市東山区の祇園で軽ワゴン車が歩行者らをはねて7人が死亡、12人が重軽傷を負った事故は12日、発生から1カ月を迎える。京都府警は二十数人の目撃証言や防犯カメラの解析から速度や経路といった走行状況をほぼ特定した。だが、運転していた会社員藤崎晋吾容疑者(30)は死亡しており、暴走原因の究明は難航している。新たに判明した事実を基に現場を三つの区間に分け、事故を追った。
◆走行状況◆
第1現場 4月12日午後1時すぎ、容疑者の車は大和大路通で前方のタクシーを追い上げるように走行していた。タクシーの記録装置の解析から追突時の時速は約40キロ。近くで目撃した警備員中島和良さん(52)によると、軽ワゴン車は左に寄せて止まったタクシーをすり抜けた後、ゆっくり約25メートル進んでから急に加速した。中島さんは「急にエンジン音が大きくなった」と証言する。追突後に間を置いてアクセルを踏み込んだ可能性がある。
第2現場 大和大路四条交差点付近に設置された防犯カメラには40~50人が南北にある横断歩道を渡る様子が写っていた。容疑者は時速約50キロで赤信号を無視して突っ込み、南側で10人、北側で4人を死傷させた。突入時にクラクションを聞いたと証言する人もいたが、音の違いから別の車の可能性が高い。府警はクラクションを鳴らさずに交差点に入ったとの見方を強める。
第3現場 ドライブレコーダーを搭載したタクシーの映像や複数の目撃証言から、交差点―電柱激突の約190メートルに、走行の障害になる約10台の路肩駐車や走行車両があった。容疑者は幅4~8メートルの道を4台の車に接触しただけで走り抜けた。府警は電柱激突時の時速を70キロ前後と特定した。
◆事故原因◆
府警は暴走の原因を▽てんかんなど持病の影響▽パニックの影響▽タクシー追突後の故意の逃走―に絞り込んだ。さらに、これらが複合した原因も想定している。府警や家族によると、容疑者は2003年11月、オートバイの単独事故を起こし、脳挫傷を負った。今年に入り意識を失ったり、てんかんのような硬直が出た。家族や病院は再三、運転厳禁を忠告していた。
京都新聞の取材に応じた容疑者の父親は事故直前の4月2日ごろ、父親に注意された容疑者が足を突っ張らせる硬直を起こしたとし、「タクシー事故を機にアクセルを踏み続ける硬直を起こしたかもしれない」と話した。
府警は▽タクシー追突後の急な加速▽事故発覚による家族からの非難▽免許更新時や勤務先の会社に持病のてんかんを不申告―などから、容疑者が故意に逃走した可能性があるとみる。
府警によると、軽ワゴン車は第1~3の現場で一貫して前方の車を避けて走行しており、府警は容疑者がハンドル操作をしていたとほぼ断定した。
これらの状況は容疑者が意識を保って逃走していたことをうかがわせるが、一方で不可解な点も残る。約360メートルをノーブレーキで加速しながら運転し、電柱激突の直前もブレーキ操作は確認されなかった。府警幹部は「故意なら危険を感じてブレーキを踏む。単なる逃走では説明できない」と語る。
最終更新:5月12日(土)10時19分
以上引用-------
今号の月刊精神分析は、「京都祇園自動車暴走事故」を、精神分析的視点から論じてみたいと思います。
なお、感想はlacan.fukuoka@gmail.comまでお願いします。
本サイトの監修は、ラカン精神科学研究所殿とシニフィアン研究所殿にお願いしました。
平成24年06月30日 月刊精神分析 編集部A
2、登場人物プロフィール
惟能創理(いのうそうり)
日本初のインテグレーター(精神分析家)
編集部Aのスーパーバイザー 。
1951(S.26)年 埼玉県熊谷市に生まれる
1992(H.04)年 大沢精神科学研究所設立
1992(H.04)年 道越羅漢(みちおらかん)となのる
2008(H.20)年 LAKAN精神科学研究所に名称を改める
2008(H.20)年 惟能創理(いのうそうり)に改名する
著書紹介:
月刊精神分析 2009年01月号 運命は名前で決まる
月刊精神分析 2010年01月号 心的遺伝子論 産み分け法。
迎意愛(むかいあい)
精神分析家。シニフィアン研究所(埼玉県上尾市)主宰。1954年和歌山県生まれ
連絡先:signifiant1@gmail.com
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安朋一実(やすともかずみ)
精神分析家。ラカン精神科学研究所(滋賀県大津市)主宰。1958(S.33)年4月22日生まれ。
出身:滋賀県大津市。二女の母。
神戸親和女子大学児童教育学科(兵庫県神戸市)卒業。
会社勤務の後、結婚し専業主婦になる。
二女の子育てに悩み惟能創理先生の精神分析治療を受ける。
インテグレーター(精神分析家)養成講座を受講の後、独立開業。
現在、新進気鋭の分析家として、引きこもり不登校の子供を持つ母親を全力で支援している。
同研究所は「京都府ひきこもり支援情報ポータルサイト」の支援団体として登録。
メルマガ発行:子育てメールマガジン 育児法 引きこもり 家庭内暴力 非行 不登校
連絡先:lacan.msl@gmail.com
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編集部A(へんしゅうぶえー)
月刊精神分析(げっかんせいしんぶんせき)編集部員。
ラカン精神科学研究所福岡支所
1963(S.38)年3月12日生まれ
出身:福岡県福岡市。
コンピューター会社のシステムエンジニア。食品工場の生産管理業務に従事。
飲食店の経営、飲食店の営業職、旅客運送乗務員を経た後、月刊精神分析編集部。
宗教色の強い家庭に生まれ育つ。
二十代の頃、原因不明の疾病に苦しむが転地療法にて完治した経験から、心の作用に興味を持つ。
ひょんな切っ掛けから「精神分析」の世界を知り、約三年半色々な書籍を読み漁る。
現在「月刊精神分析」の編集に関わりながら、惟能創理先生のセラピーとインテグレーター養成講座を受けている。
性格分析:自己分析、コンピューターのSE(システムエンジニア)をしてきただけあって、緻密な作業ができるA型(血液型)人間である。自分の部屋はちらかっていても許されるのだが、漫画本の1巻から・・はきちんと順番通り並んでいないと気が済まない。物事は手順を考えて、1から順番に進めていく。よって「適当にやってみて駄目でした」という事は出来ない人で、やるからには成果が出ないとかっこ悪いと感じ、失敗を恐れるタイプである。
連絡先:lacan.fukuoka@gmail.com
3、事故と「てんかん」
以前の月刊精神分析で、栃木県鹿沼市で発生した鹿沼クレーン事故を取り上げた事がある。
月刊 精神分析 2011年11月号 「事故と精神分析3」 6、その後の鹿沼クレーン事故
鹿沼クレーン事故の加害者、柴田将人被告が「てんかん持ち」であった事や、事故当日、加害者がてんかんの症状を抑える薬を飲み忘れていた事が世間で大きく取り上げられた事件で、事故の被害者として死亡したのが児童6人という事もあり、記憶に残る事故(惨事)であった。
京都 祇園 自動車暴走事故 の加害者、藤崎晋吾容疑者も10年前のバイク事故が起因するてんかん症状を有していたとの報道があった。
またしても、てんかん持ちによる悲惨な事故発生か?とマスコミは大きく取り上げ、危機感を持った社団法人 日本てんかん協会は、「京都市内で発生した交通死亡事故」に関する声明文を発表するに至った。
月刊 精神分析では、無意識と事故の関係を何回か取り上げてきた。鹿沼クレーン事故に関しては以下の既刊で取り上げているので目を通して欲しい。
月刊 精神分析 2011年04月号 「ひきこもって20年」 11、クレーン車事故と無意識
<てんかん>について
「てんかん」についてここで説明する事は差し控えます(興味のある方はリンク先のウィキペディアを参照)。が、私の所感を述べますと、私が所謂てんかん持ちの人と接した事は殆ど無いのですが、過去1度だけてんかんの発作を起こした人を見た事があります。
今から、十年以上前。英会話スクールに通っていた時の事、6~7名のグループレッスン中の事でした。普段通りのレッスンが進んでいた時、突然、女子高校生が床に倒れこみ「唸り声」をあげはじめました。先生と受講生達は一瞬呆気にとられたものの、誰かが「てんかんの発作」と口にし、女子高校生の口にハンカチを咥えさせた様な記憶が残っています。
その女子高校生は普通の真面目な受講生だという認識を持っていたので、当時の私は「てんかんとは普通の人が突然倒れこんで唸り声をあげるような病気」なんだと言う認識を持ったのでした。後日、保護者の方が英会話教室に「ご迷惑をお掛けしました」と挨拶にこられたそうで、その後、当人も何もなかった様にレッスンを続けていました。
確かに、あぁ言った発作が自動車を運転中にでてしまった場合、車はどこに進んでいくのかわかりませんから、重大事故につながる恐れ・・そう、あくまで「恐れ」は感じます。
が、果たして今回の事件の様な「狭い一方通行の道を、猛スピードで前車をかすめながら走る」事が「てんかんの発作」によるものとは到底思えません。
一部、アクセルペダルを踏む右足が痙攣で硬直してしまったのでは?と言う憶測が流れていますが、仮にアクセルがフルスロットルになったら、逆に60から70km/h程度の速度で350mも走行できないと思います。
よって、これは私の憶測ですが、もし藤崎晋吾容疑者が商品の配達中にてんかんの発作を起こしたとしても、それは最初の前を走行中のタクシーへの追突時におこったのではないかと思います。
事故後1ヶ月が経過した現在も、京都府警で捜査中であるが、未だ「事故とてんかんとの関係」は不明・・・なのである。
4、衝突動画(後続車搭載ドライブレコーダー)
5、位置関係(大まかマップ)
より大きな地図で 京都 祇園 自動車暴走 事故マップ を表示
京都祇園で大きな自動車事故ときいて、Googleマップで位置を確認してみた。事故現場は京都の繁華街「河原町」から西へ。有名な四条通りを八坂神社を目指して移動。鴨川を渡り、右手に南座をみながら更に歩く。すると、東西に伸びる四条通りと南北に走る大和大路通が交わる交差点にさしかかる。加害者の乗った軽自動車は、南から北へこの交差点を突っ切ったのである。マップを見てもらえば一目瞭然。河原町には大手の百貨店タカシマヤや河原町オーパと言った商業施設がある。こんな場所でまさかの大事故が起こった。
6、位置関係(詳細マップ)
より大きな地図で 京都 祇園 自動車暴走 事故マップ を表示
大まかマップを少しだけ拡大したのがこの地図である。「勤務先」「軽ワゴン駐車場所」「バレ祇園防犯カメラ撮影位置」「最初の追突事故地点」「交差点」「電信柱衝突時ドライブレコーダーの視点」「最後に衝突した電信柱」に青いポイントをおいてみた。事故を起こした軽自動車は、約350mを南から北へ猛スピードで上がっていった。
7、事故のまとめ
<亡くなった方々 8名(含:加害者)>
藤崎晋吾(30)=京都市西京区桂朝日町(運転手:加害者)
奥村昌彦(40)=京都市右京区西京極西衣手町
平山節子(69)=大阪府守口市
岸本真砂子(68)=大阪府豊中市
小池賢次(77)=千葉県八千代市
澤西桃代(62)=京都市東山区新宮川町通松原下ル
鴨下孝子(62)=埼玉県蕨市
伊勢由希子(58)=大阪府豊中市
<負傷された方々 11名>
橋本長次(75)=東大阪市
池田則子(33)=兵庫県尼崎市
米田喬(29)=京都市東山区
真鍋節子(75)=兵庫県尼崎市
長谷川明恵(68)=名古屋市北区
河村悦子(79)=京都市左京区
河村菊蔵(84)=京都市左京区
橋本志津子(74)=東大阪市
チャン・エヴァ(57)=オーストラリア国籍
田中美夢(67)=大阪府守口市
鴨下扶味江(64)=埼玉県戸田市
<容疑者について>
藤崎晋吾(30)
京都市西京区桂朝日町在住。
家族は両親と姉。
立命館中学校
立命館高等学校
立命館大学文学部卒業
<車種>
軽ワゴン車(ホンダ・バモスホビオ)
<会社>
藍香房(あいこうぼう)。
祇園で伝統的な技法で藍染めを行っている。
藍染め製品販売会社
京都市東山区四条通花見小路下ル
営業時間 10~22時
TEL:075-533-3110
京阪電気鉄道祇園四条駅6番出口→徒歩4分
<てんかんについて>
10年前、バイクを運転中に事故を起こして以降、年1回程度、意識を失うことがあり、数年前にてんかんとの診断を受け、最近は毎月通院していた。
<事故の経緯>
藤崎晋吾はスーツ姿で、仕事で配達のため車を運転していた。現場から約170メートル南の大和大路通でタクシーに追突。タクシーの運転手は西尾進一さん(63)。西尾進一さんの「待て、こら」という制止を聞かず、バックし、タクシーの横をすり抜け急加速し、北進。そのまま猛スピードで四条通の交差点に入り、赤信号を無視して、南側と北側の2か所の横断歩道を渡っていた歩行者を次々にはね飛ばした。そのまま北進し、同じ方向に走っていたタクシーの右後部にぶつかり、自転車を巻き込んで現場から約180メートル北側の電柱に突っ込んで大破、停止。
・3月に運転免許を更新したが、てんかんの持病については申告していなかった
・姉「会社にはてんかんの持病があると告げた。今の会社を辞めて、次の会社を探そうということになっていた。」
・病院院長「病院は車を乗ることは禁止しますとはっきり申し上げていた」
・母「本人が、会社にてんかんのことを伝えたと聞いている」
・勤務先の社長(70)「てんかんを持っていた?知らなかった」
・姉「弟が会社にどの程度説明したかは不明。会社には『運転できない旨を母に一筆書いてもらって』と返答されたよう」
・藤崎晋吾は「昼間に症状は出ない」と話した可能性がある。
ちなみに時事通信の記事によれば「事故を起こしても会社に責任はない」という誓約書を書くよう言われたと1週間ほど前に家族に打ち明けたらしい。
<てんかん患者と免許について>
てんかん患者の運転免許取得は、14年施行の改正道路交通法で可能となった。5年以内に発作がなく、「今後、発作が起きる恐れがない」と医師が診断していることなどが条件となる。一方で、てんかんであることを申告しなくても罰則はない。
8、事故の詳細
ネット上から集めた情報をもとに、藤崎晋吾容疑者の生い立ちや環境、事件当日の彼の行動、心理状態を想像し、多分、こうだったのでないか?という憶測も含めて説明してみました。
(左:軽ワゴンのホンダ・バモスホビオ。右の事故後の車両と比べてみると衝撃がいかに凄まじかったかが窺い知れる。)彼の名は藤崎晋吾(ふじさきしんご)。30歳。
インターネット上での彼の評判は「礼儀正しい」「おとなしい」「近所の優しいお兄さん」趣味は読書・・等と、今風の草食系男子的な声が聴こえてくる。
立命館中学校、立命館高等学校、そして立命館大学文学部に入学、卒業。草食系だけど、活発な面もあり、在学中、姉とコンビを組んで、「姉弟ナイト」というコンビ名でお笑いの世界に挑戦した事もある(NSC大阪校25期生として在籍:吉本興業の養成所で「吉本総合芸能学院」のこと。NSCとは「New Star Creation」のそれぞれの単語の頭文字をとっている)。
バイクに乗っている時期もありました。でも、21歳の時事故(に遭って)を起こして、一時意識不明の重体に・・(脳挫傷)。
彼は、この事故がきっかけで、白目をむく、口から泡をふく、数分意識を無くす等のてんかん症状にみまわれる様になる。
「てんかん」と診断した京都九条病院の先生からは車の運転は禁止されていたし、今年に入って、発作が起こる度に家族から「仕事で運転中に発作が起こったら危ない」と転職を勧められていた。でも、・・・
彼の家族は両親と姉(京都市西京区)。
ここ3日間、心配した家族からは「転職するか、今の会社で車を運転しなくても勤務を続けられないか」と選択を迫られた。
確かに仕事中に発作が出ると困るから、毎日気をつけて、抗てんかん薬を服用している。
彼の職場は、藍香房(京都市東山区)。藍香房(あいこうぼう)は花見小路通にある藍染め製品のお店。もう勤務して5年目になる。仕事は接客や取引先への商品の配送。
平成24年04月12日。今日も、8時45分頃出社。昼から配達にいく予定。
13時頃、いつもの様にスーツ姿の彼は店を出た。花見小路通を下って、建仁寺脇の地下駐車場に駐車してある軽ワゴン(ホンダ・バモスホビオ )に乗り込む。団栗(どんぐり)通を西に走って、大和大路通に入って北進する。
季節は桜も満開。風情のある京都祇園を走るのは気持ちがいい。
ちょうどこの時期は近くの祇園甲部歌舞練場で「都をどり」が公演中で街は華やいでいる。
そう、ここまでは、何気ない日常の筈だった。
軽ワゴンは配達に適した作りになっており、少しアクセルを開けただけで力強く加速する。
ここ数日、家族から言われる様に、もし「てんかんの発作」が運転中に出たらどんな事故になるかわからないし、やはり別の仕事を探さないといけないのか?でも、このご時世だし、そんなに簡単に次の仕事がみつかるだろうか?やはり不安になって考えてしまう・・。追突事故の直前、タクシーの後ろを走る軽ワゴン車。バレ祇園の防犯カメラに映っていた。Googleマップのストリートビューででカメラの位置まで確認できる)「ドーン」と言う音で我にかえった・・・「あっしまった!」前を走るタクシーに追突してしまった。
(*午後1時7分、時速21キロで走行中のタクシーに軽ワゴン車が追突。ブレーキを踏んでいたが、衝撃でタクシーの時速は29キロに跳ね上がった。)
(ここが追突事故現場。狭い一方通行の道で、道の両端には自動販売機、ワンルームマンション、小さな商店が立ち並んでいる。)
事故原因は自分でも「考え事をしていた為」か「軽いてんかんの発作が出た為」かわからない。
ブレーキを踏まなければいけないのに、焦って、逆にアクセルを踏んでしまった。追突されて更に軽ワゴン車に強引に押し出されるタクシーの後部はミシミシと音を立てて凹んでいく。リアブレーキランプはその辺に砕けて弾けた。
「あぁ」彼の頭の中は真っ白。藍香房の仕事仲間の顔、家族の顔、京都九条病院のドクターの顔が浮かんでは消える。
「すんまっせん。ごめんさい。」
タクシーの運転手がすぐ出てきて『待てコラー』って怒った瞬間、両手がブルブル震えて、怖くなった。
逃げた。
バックして、追突したタクシーを避け、狭い一方通行の大和大路通を猛スピードで逃げた。
逃げた。
すぐ目の前は四条通りと交わる交差点。信号は「赤」。信号待ちの車両を避けて右側を走った。交差点に進入しかかっていた京都市バスを「逆『く』の時」の進路でかわした。誰が鳴らしたのか遠くでクラクションが鳴っている。その間にも、道路脇にいた人、道路を横断し始めた歩行者を何人も引きずりはね飛ばした。
(Googleストリートビューの撮影時間が早朝だった為か観光客がいない。これが、昼頃ともなれば沢山の人出で賑わう。写真前方を横切っているのが四条通り)
「あぁなんて事だ。終わった。」
白河のふちには満開の桜が・・そして桜の花びらが散っている。
暴走ワゴン車は、右側に停車していた保冷車と、左側に停車していたタクシーに接触しながらも、その間をすり抜ける。(*Youtubeで公開された電信柱に激突する動画は、このタクシーに設置されていたドライブレコーダーが記録していたもの)
(ちょうど、この位置に停車していたタクシーから撮影されたのが、衝突動画である。)
更に、白河の橋(やまとばし)の右手から桜をみていた人(2名)を奇跡的にかすめ、自転車に乗っていた人を巻き添えにして、道路右側の電信柱に衝突、大破した。(橋の奥の川沿いの道が白河南通りで、桜並木が美しい。Googleストリートビューが撮影されたのが2009年11月なので残念ながら冬桜しか確認できない。)
エアバックは開いたものの、軽ワゴン車は衝撃でフロントガラスどころか屋根までお辞儀をしている。
(ストリートジビューをよく見るとわかるが加害者の軽ワゴンが衝突した電信柱のすぐ手前に街灯の柱がある。正確には軽ワゴン車は街灯と電柱のセットにぶつかった事になる。衝突動画を見返してみると、確かに折れ曲がる街灯が確認できる。)
(*衝突音は「ガッシャーン」と言うすざましいもので、偶然、白河沿い(白河南通り)を花見でビデオ撮影していた人が記録していた映像と音声がYoutubeで公開されています。只ならぬ衝撃音をきき、不安そうに事故現場方向に視線を注ぐ人達の曇った表情がリアル。)
搬送先の病院で藤崎晋吾容疑者の死亡が確認され、13日司法解剖された。死因は失血死。彼の血液から「抗てんかん薬」の成分が検出された。
事件後の周辺の様子のレポートをみつけました。→京都祇園自動車暴走事故現場訪問ドキュメント.pdf
9、衝突音動画、白河沿い(白河南通り)を花見で偶然ビデオ撮影
0:52この交差点を画面の右から左へ軽ワゴンは走り抜けた。
衝突した街灯と電信柱は画面の左手にある。
1:48「ガッシャーン」と言う衝突音が聞こえる。
「なんやろ?」と言う感じで事故現場方面を振り向く、不安そうな観光客の曇った顔が印象的。
Googleマップで検証してみると、事故現場と撮影者の距離は約50m程。
10、精神分析視点から事件をみてみる
前章までで、事件のあらまし、詳細は理解していただけと思います。
賠償問題は残るものの、容疑者死亡のまま送検され事故事件としては決着してしまう目算が大きいのですが、仮に藤崎晋吾容疑者が生き残っていたとしても、きっとこう言うでしょう「覚えていません」「タクシーに追突してからの記憶がないんです」と。これは、てんかんの発作が出ていても、出ていなくてもです。秋葉原無差別殺傷事件の加藤智大もこう言ったし、栃木建鹿沼市クレーン事故の柴田将人容疑者も「人をはねたかどうかは覚えていない」と言っていた。
と言う事は、彼らは意識的な行為としてではなく「無意識的行為」として、通り魔行為や交通事故を起こしたのではないか?・・とみるのが精神分析(心理学)の解釈です。
まず、第1の事故について、前者を走っている「タクシーへの追突」追突は、一体感を求めた結果ではないでしょうか?タクシー運転手が年配の男性であり、なおさら、藤崎容疑者と父との関係はどうだったのか興味が涌いてきます。
また、世間の彼の評判は概ね「優しい」とか「おとなしい」と言ったものでした。この辺が曲者で、自分の感情を表に出さない、出せない性格の人の方が、より多くの無意識:コンプレックス(複合観念体)に苛まれる傾向があると思うのですが、藤崎容疑者の場合、どんなコンプレックスを有していたのでしょうか?
最後に衝突したものが「電信柱」であった件。心理学の世界では、突起物を男根になぞらえ「ファルス」と捉えます。男性性の象徴です。電信柱の様に聳え立つものは明らかに男性性の象徴で、藤崎容疑者が最後に突進していった先が電柱(男性性を象徴するもの)であった事も、なにかしら藤崎容疑者と男性性との関わりあいに興味と関心を持たせるところです。
去勢された藤崎容疑者が最後に求め、突進したのはファルス(男性性の象徴)だったのでしょうか?
残念な事に、藤崎容疑者は死亡していますので、彼自身の語りによる「彼の生い立ち」や、「家族関係」から、彼のコンプレックスを分析する事は不可能な状況であります。
しかしながら、彼の性格や、追突したタクシーのトライバーが年配の男性であった事、最後に衝突したのが男性性を象徴するファルス(電信柱)であった事を考えると、特に父子関係に何らかの問題があったのではないか?と読み解くことができます。
12、おわりに
今月の月刊精神分析は「京都 祇園 自動車暴走事故」をテーマとして取り上げました。秋葉原無差別連続殺傷事件に似ている事件で、ネット上からできるだけ資料を集めて構成・編集しました。
もし、藤崎容疑者が自分の無意識を語ったならどんな事柄がでてくるのか?大変興味深いのですが、彼が死亡していますのでそれは叶わない事です。
この様な悲惨な事件事故が起きるたびに、現代社会で生きている事自体に「大きなリスクを抱えている事」を認識し、メンタルヘルスにも気を配るのが当たり前の世の中になれば・・と思うのですが、世の大勢は物質や金銭が優先される状況であり、なかなか難しいものを感じます。
この事故がおきた後に「関越道深夜高速バス事故」やこれも京都ですが「亀山自動車暴走事故」など悲惨な事故が立て続けに発生しました。
読者の皆さんも心の健康管理に取り組まれることをオススメします。
それでは、また来月もお会いしましょう。
平成24年06月30日 月刊精神分析 編集部A
感想のメールはlacan.fukuoka@gmail.comへお願いします。
13、追悼:奥村昌彦さん
京都祇園暴走:亡くなった奥村さん 長女が生まれたばかり
毎日新聞 2012年04月13日 00時12分(最終更新 04月13日 02時29分)
「子どもが生まれて喜んでいたのに、何でこんなことに」。亡くなった京都市右京区の介護福祉士、奥村昌彦さん(40)が搬送された京都第二赤十字病院(同市)には、今月7日に長女ひなたちゃんを出産したばかりの妻や両親、妹らが駆けつけ、遺体と対面した。
母順子さん(65)は目を真っ赤にしてハンカチを握りしめた。奥村さんは現場近くの介護施設に勤務。自転車で通りかかり、巻き込まれたらしい。
順子さんは午後2時ごろ、自宅のテレビで惨事を伝えるニュースを見ていた。そこへ病院から「先ほど事故があって、息子さんが巻き込まれた」と電話が入った。命が危ないと聞き、手と足の震えが止まらなかった。家族で病院に駆けつけると、全身の骨が砕けていると聞かされた。
奥村さんは昨年末に結婚。今月11日、妻は出産した病院から長女と一緒に自宅に戻り、家族3人の暮らしを始めたばかりだった。順子さんが同日昼、赤ちゃん用の布団を届けると、奥村さんは「お母さん、おおきに」と笑顔を見せた。
順子さんは「ほんまにええ子やったのに。痛かっただろう」と言葉を失った。妻は親族に両わきを支えられ、放心状態で病院を後にした。【藤顕一郎】
14、追悼:小池賢次さん
目の前で夫巻き添え 八千代の小池賢次さん 京都・祇園のひき逃げ事故
2012年04月13日 10:11
「桜がきれいだったね」。横断歩道の信号が青に変わり、夫婦で話し合いながら歩きはじめた瞬間、白っぽく見えた軽ワゴン車が後ろを猛スピードで通り抜けた。振り向くと一歩後ろにいた夫はあおむけに倒れていた。
事故で巻き添えになり死亡した八千代市の小池賢次さんの妻、チセさん(74)が搬送先の病院で涙ぐみながら取材に応じた。
チセさんによると、夫は3メートルほど離れた場所で倒れ、頭から大量の血を流していた。即死と直感した。チセさんは激しい動悸(どうき)がしてその場にへたり込んでしまった。近くの若い女性2人が「あきらめないでください」と声をかけながら、心臓マッサージをしていた。
救急車に同乗し、病院の処置室に入ったが、すぐ霊安室に案内された。約2時間一緒に過ごしたが、賢次さんの腕はとても冷たく、何も声を掛けられなかったという。
夫婦はよく全国各地を一緒に旅行していたといい、数日前から兵庫県姫路市や京都市内を観光し、12日午後に京都駅で土産を買って新幹線で帰る予定だった。
15、追悼:岸本真砂子さん、沢西桃代さん
無念の涙 犠牲の2人の通夜 祇園 暴走車事故
配信元:産経新聞
2012/04/14 23:02更新
京都・祇園の暴走車事故に巻き込まれて亡くなった大阪府豊中市蛍池西町、岸本真砂子さん(68)と京都市東山区、沢西桃代さん(62)の通夜が14日、それぞれ自宅近くの葬祭場で営まれ、大勢の友人らが冥福を祈った。
豊中市内であった岸本さんの通夜では、喪主で夫の貞己さん(69)が参列者一人ひとりに頭を下げた。着付け教室で知り合った同府池田市の会社員、高田真佐子さん(60)は「彼女が大好きだった京都で亡くなるなんて信じられない。これからが充実する人生だったはずなのに...」と無念そうに語った。
沢西さんの通夜は京都市南区で営まれた。参列者によると、会場には約100人が集まり、遺族は気丈に振る舞っていたという。
印刷会社社長、下野治夫(はるお)さん(61)は、沢西さんの勤務先に花を供えてから弔問。「遺影はいつもの明るい笑顔を浮かべた写真だった。あんな形で亡くなったことが悔しく、どこに怒りをぶつければいいのか」と話した。
16、追悼:鴨下孝子さん
喪失感深く癒えぬ心 祇園暴走事故1ヵ月
京都新聞 5月12日(土)15時29分配信
事故から1ヵ月。現場では犠牲者を悼み、花を手向ける人の姿がみられた(12日午前11時2分、京都市東山区大和大路通四条交差点角)
京都市東山区の祇園で軽ワゴン車が歩行者らをはね、7人が死亡、12人が重軽傷を負った事故は12日、発生から1カ月を迎えた。弔いの花がわずかに残る現場では早朝から読経が響き、道行く人々が惨劇の記憶を新たにした。遺族は事故の真相解明に望みをつなぐが、戻らない家族の残像に喪失感を深めている。
午前6時半すぎ、季節外れの肌寒さの中、歩行者14人が死傷した大和大路四条交差点で、すぐ近くで乾物屋を営む一浦眞智子さん(70)は手を合わせた。あの日以来、日課になった。
事故直後は花束を供えたり、拝んだりする人が絶えなかったが、日に日に弔いの姿は減った。横断歩道を赤信号で渡る歩行者も多い。「事故のことを忘れていくんやろね。もう二度とあんなことは起きてほしくない」
事故で亡くなった鴨下孝子さん(62)=埼玉県蕨市=の兄秀明さん(65)=同=はこの日朝、孝子さんが住んでいたマンションの電気やガスを解約する手続きをした。孝子さんに年格好の似た人の後ろ姿を見ると「孝子が帰ってきたのかな」と錯覚し、胸が詰まる。
事故を起こした容疑者が死亡し、怒りのやり場がない。「事故の原因を知りたい。でも、最終的には推測の域を出ないかもしれないと思うとむなしい」
笑顔の遺影に、京都市東山区の会社員澤西桂輔さん(32)は励ましの言葉を送っている。交差点南側で息絶えた母親の桃代さん(62)は定年まであと3年。ようやく自由な時間が持てるはずだった。「こんなことになるなんて本人が一番驚いているはず」。一人きりの家に声が響いた。
父親は20年前に亡くなり、祖母も既にいない。それでも、家族みんなの名前を記した表札を桃代さんは掲げ続けていた。今、玄関をくぐるたび目をそらしてしまう。「家族を、強く感じさせるものだから」。桂輔さんは声を落とした。
事故の後、容疑者の勤めた会社が契約する保険会社が事故の賠償についてあいさつに来たという。会社や容疑者の遺族と、いつか言葉を交わす時が来るかもしれない。「でも今は、そんな気持ちにはなれない」
17、追悼:伊勢由希子さん
最後のメールは京の桜「絶対に消さない」犠牲の伊勢さん15年来の友人
2012.4.19 09:04
京都・祇園の死傷事故で亡くなった大阪府豊中市の伊勢由希子さん(58)の友人、和泉早知子さん(57)は今月初旬、京都散策中の伊勢さんから桜の写真付きメールを受け取った。周囲への気配りを欠かさず、「さっちゃん」と優しく呼んでくれた声が今も耳に残る。事故から19日で1週間。「かけがえのない友人を忘れないよう、最後のメールは絶対に消さない」と誓っている。
和泉さんの高校時代の友人が、英会話サークル「ships」を立ち上げたのは15年前。友人の自宅を教室代わりに英語を学ぶ小さなサークルで、メンバー8人の中に伊勢さんがいた。
月に2回集まり講師を囲んだ。授業は約2時間半。その後のおしゃべりが楽しみだった。メンバーで京都を旅行したり、ランチに出かけたり...。店の予約や旅行の行程作りなど、伊勢さんはいつも「縁の下の力持ち」だった。
誕生日を迎えたメンバーには必ずプレゼントを贈ってくれた。和泉さんの誕生日は3月31日。「お誕生日おめでとう」と手書きのメモを添えて小さなハンカチをくれた。伊勢さんは「眼鏡ふきにも使えるのよ」とほほ笑んでいた。
《小さいですが、こんな感じでした》。伊勢さんから京都の桜の写真付きメールを受け取ったのは今月4日の夜。しばらくやりとりし、「また一緒に行こうね」とのメールを最後に返信を終えた。どこに行こうか...。あれこれと思い浮かべていたころ、事故の発生を知った。
「今はただ、『なんで』と思うだけ。腹立たしいよりも『どうして』としか思えない」
和泉さんらサークルのメンバー4人は18日、一緒に英語を学んだ友人の自宅に集まり、伊勢さんが座っていたいすに笑顔の写真と花を飾った。「このいすはずっと残しておこうね」。全員でそう決めた。
18、追悼:平山節子さん
「青になったよ」が最後の会話に 事故遭遇の友人
2012.4.16 22:51
「すぐ隣にいたのに守ってあげられなかった。悔しくてどうしようもない」
京都・祇園の車暴走事故で亡くなった大阪府守口市の平山節子さん(69)と一緒に京都を訪れ、事故で負傷した友人の田中美夢さん(67)=守口市=は16日、取材に応じ、突然の事故で友人を奪われた悲しみを語った。
田中さんは平山さんと30年以上の付き合い。毎年春には2人で京都を訪れた。「気さくで誰からも好かれる。花が好きで、60を過ぎてもどこかかわいらしさの残る人だった」と振り返る。
「青になったよ」。事故現場の交差点で声を掛けたのが最後の会話となった。突然「ゴー」という暴風のような音が聞こえ、地面にたたきつけられた。立ち上がり、はね飛ばされた平山さんを抱えた。「せっちゃん起きて」。何度も叫んだが、応答はなかった。
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