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2014-03-18 STAP細胞事件 罪は償わなければならない

 STAP細胞事件 罪は償わなければならない

 先日私は、小保方博士に対する、人権侵害を含めた過度なバッシングはやめるべきだと書きました(STAP細胞論文撤回へ〜事実と過度な個人攻撃は分けるべき)。このため、小保方博士を擁護するのか、という批判もいただきました。

 懸念していたとおり、週刊誌や2ちゃんねるなどで、小保方博士の身辺が暴かれバッシングされています。一部は熾烈を極めています。

 私の周囲からも「あれだけのことをしたら叩かれて当然」という声を聞きます。「叩く」が行為に対する批判ならいいと思います。けれど、家族は関係ないだろう、プライバシーをあばくのは明らかに行き過ぎだと思うのです。

 連続殺人犯などと同格に論じられているのは、どう考えてもおかしいと思います。

 さすがに最近の新聞などの報道は、理研早稲田大学に対する批判に向かっているようですが…

 そうこうしているうちに、STAP細胞が存在していたら、小保方博士に罪はないのではないか、という意見が広がっています。

 確かに、あの論文は多くの研究者インスピレーションを与えました。何らかの新しい現象をとらえているのかもしれません。虚偽のデータであっても、そういう現象を提唱したという部分は認めろ、という声が出ています。

 もしかして、私の意見とこうした意見が同じなのではないかと思う人がいるかもしれません。確かに過剰なバッシングを批判しているという点は似ています。

 けれど、こうした意見は私の意見とは異なります。今回の問題は論文の真偽ではありません。

 私は人権侵害を含む熾烈なバッシングは許されないと思いますが、小保方博士の犯した論文データの盗用、剽窃は許されないと思っています。

 たとえSTAP細胞が存在しており、それがきっかけで新しい再生医療手法が開発されたとしても、ルール違反を犯した小保方博士の罪は許されません。小保方博士には何らかのペナルティが与えられるべきなのです。そこを混同してはいけません。


 科学研究は相互に信用するというルールで成り立っています。データは正しい、もらった細胞は正しいという前提で共同研究が行われ、査読が行われています。書いた論文は誰かに引用され、次の研究に使われます。

 そこに悪意のある人がいて、虚偽のデータを発表したらどうなるか。

 虚偽の論文に基づいて研究が行われます。いずれ虚偽と分かり、あるいは価値がないと捨て置かれていくでしょう。しかし、虚偽の論文に基づいて行われた研究が無駄になります。時間とコストと、そしてその研究に関わった研究者の人生が無駄になります。

 虚偽の論文研究者としてのポストを手に入れたとしたら、本来ならばそのポストに就いて活躍出来たかもしれない研究者の人生を大きく狂わせます。

 友人がこんな例を出していました。虚偽の論文にもとづいて、研究テーマを与えられた大学院生ポスドクが、なかなか再現ができないことを「オマエのせいだ」と言われ時間を浪費してしまう…

 科学研究はプロセスを重視します。そうでないと、創作物、フィクションと変わりません。プロセスをふまない研究は認められません。虚偽はあってはならないのです。

 だからと言って、読む論文、もらった細胞、その他資料をすべて疑ってかかって研究を行ったら、時間がかかって仕方ありません。

 だから、虚偽の論文が出されたと発覚したら、関わったものを厳しく罰する必要があるのです。そうでないと、モラルハザードが起きます。結果オーライで捏造しても許されるなら、都合の良いデータどこからかもってきちゃえ、イラナイバンドけしちゃえ、といったことが横行してしまいます。

 やっていることが正しければ、ルール違反が許される、ということになれば、なんでもありになってしまいます。

 ウソをついた者は罰せられなければなりません。


 ただ、どんな罰、ペナルティを課すべきかは、ルールにもとづいて、恣意的にならないように決めるべきです。小保方博士が目立ったから厳しいペナルティ、目立たなかったら軽いペナルティでは、これもモラルハザードにつながるように思います。また、論文の共著者に対しても、関与の度合いを調査した上、ペナルティを課すべきです。「小保方切り」で終わらせてはいけません。

 文部科学省では、以下のように定めています(研究活動の不正行為への対応のガイドラインについて)。

〔競争的資金の打ち切り

○ 不正行為があったと認定された研究に係る競争的資金や既に配分されているその他の競争的資金の打ち切り

〔競争的資金申請の不採択〕

○ 不正行為が認定された時点で研究代表者として申請されている競争的資金については採択しない。また、研究分担者又は研究補助者として申請されているものについては、当人を除外しなければ採択しない。

〔不正行為に係る競争的資金の返還〕

○ 不正行為があったと認定された研究に配分された研究費の一部又は全部の返還を求める。

○ 返還額は、不正行為の悪質性や研究計画全体に与える影響等を考慮して定められるものとする。

〔競争的資金の申請制限

○ 文部科学省所管のすべての競争的資金の申請を制限制限期間は、不正行為の重大性等に応じて委員会が定める。

・不正行為に関与したと認定された著者等 認定された年度の翌年度以降2年から10年

・不正行為に関与したとまでは認定されないものの不正行為があったと認定された研究に係る論文等の内容について責任を負う者として認定された著者 同じく1年から3年

 これはあくまで文科省の処分であり、理研がどういう処分を課すかが問われています。また、科学コミュニティがどういう対応をするかも問われています。いずれにせよ、まずはどのようなことをしたのかが第三者によって厳しく調査されるべきでしょう。証拠保全を行わなかったため、捏造の証拠が失われているかもしれません。理研の対応の遅さが悔やまれます。


 以上、あれこれ書きましたが、これはあくまでNature論文に対するもので、博士号の問題はまた別に、そしてやはり厳しく対応すべきです。


 ただ、繰り返しになりますが、人権侵害を含む熾烈な個人攻撃は許されません。いまや社会現象になっており、もう手がつけられない状態ではありますが、言い続けたいと思います。

 そして、ペナルティを受けた後の人生まで潰されるべきではありません。違う分野でいちからやり直せばいいのです。



 移り気な人々は、そのうち次の「ネタ」を見つけてこの問題から離れていくでしょう。ネットで炎上しても、ネットをオフにすればいい。空は青く、雲は白い。もうすぐ春です。

キャサリンキャサリン 2014/03/19 17:43 人権侵害はたしかにいかんとは思うのですが、では、女子力とかピンクの壁とかで過剰演出したことで女性研究者や理研の信用を損なった代償を小保方晴子は払わなくていいのでしょうか。
私はああいう演出をした以上、プライベートの追求や金銭的な詮索を受けることは仕方ないと思います。それがイヤだったら、地味な学会発表やマイナー誌への投稿を経た通常の学術発表の手続きを踏んで、最初から淡々と研究成果を発表すれば良いのです。本当に画期的な成果であれば、社会の注目は必ず追い付いてくるはずではありませんか。山中教授はそうやって研究成果を世に問うたし、野依理事長だって逆に無名の研究者だってみんなそうやっています。

今、自分に不都合な報道がされて「人権侵害だからやめてください」というのは、少し虫がよすぎると思います。彼女は女子力というカードを先に切りました。レートが上がるのは、当然です。

とくめいとくめい 2014/03/19 18:13 私は研究者ですが、著者の意見に全面的に賛同します。
大多数の人も同じ意見なのではないでしょうか。
ただ、あまりに酷い不正だったのでバッシングしたくなる気持ちも解らなくはないのですが…。

キャサリンさんは小保方氏を芸能人か何かと勘違いされているようです。
壁の色を変えたり割烹着を着たぐらいのことの代償が、人権侵害されるほどのバッシングとは、どのような理屈なのかさっぱり解りません。
彼女がすべきだったことは、地味に淡々とすることではなく、不正しないこと、それだけです。
理研や女性研究者の信用が損なわれたのは、不正が行われたからであり、壁の色の所為じゃありません。
自分の腹が浅い理由を、小賢しい屁理屈で正当化しようとするのはおやめなさい。

あ 2014/03/19 18:37 研究者が自分の研究に盛るのは仕方ないでしょう。
無意識にせよ、データの解釈を自分の仮説に都合よくバイアスかけない研究とかありえないですし。

そして幼体の中に未分化な万能細胞の元がたくさんあるということだけでも偉大な研究だし、
本当に酸やストレスで細胞の強制リセット、初期化が行われてるなら掛け値なしにノーベル賞。

もっと安定的な再現性獲得してから発表しろよとは思いますが。

科学的に手堅く嘘のないが大した意味のない凡百の研究とは違い生命の神秘に直結する小保方さんの研究のがはるかに価値が高いのは動かないと思います。
倫理や能力どうこうは関係ない。
生命の神秘掘り出すことにつながるならその人が偉くて後はゴミです。
そして今回は神秘につながる可能性は高い。後はどうでもいい。

ぱぱぱぱ 2014/03/19 18:59 同意です。目には目を、歯には歯を。研究内容の問題はその範疇でのみ批判され責任を負うべきであって、人格攻撃人権侵害はあってはならないことです。むしろ女子力だ割烹着だリケジョだと高く持ち上げておいて、手のひらを返すどころか一気に谷底までたたき落とす日本のマスコミの姿勢がネットで増幅されている感が。

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